起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

「贈り物」品質が決め手のそっくり人形
――QQ Mini Me

誰もが一度は目にしたことがある、頭でっかちのそっくり人形。通常、バブルヘッド(膨らんだ頭という意味)と呼ばれているが、米国ではタレントやスポーツ選手、大統領などの政治家まで様々な有名人にそっくりの人形をあらゆる場所で目にする。マンガ風で愛嬌のあるその姿は昔から人気があり、思わず「自分や友人のも作れたら楽しそう・・・・・・」と思えてしまう人形だ。そんな需要にこたえたのが、今回ご紹介するQQ Mini Meである。

08年9月スタート

QQ Mini Meで人形を作る過程だが、まず注文時に複数枚の顔写真とともに瞳の色や人種など細かい情報を一緒に送る。そして同社のデザイナーが写真や情報をもとに立体的な造形を起こして製作し、納品となる。注文から仕上がりまではおおむね3週間ほどで、高さ25cmほどの人形が手元に届く。お値段は凝ったものでなければ1体あたり75ドルくらいから。手軽な価格も相まって、イベントやテレビ番組の演出小物として、またお世話になった先生や上司へのプレゼント、結婚式の記念品などとして様々な需要があり、そのうえ欧州やアジアなど米国外からの注文も多いという。

QQ Mini Meのオフィスはマンハッタン中心部の6番街沿い、通称「ファッション・アベニュー」と呼ばれる地区にある。同社がスタートしたのは今年の9月。現在、ニューヨークのオフィスには12人が勤務しており、海外には工場やデザイナーなどの提携先がいくつもあるのだという。創業者のジョー・ミウ氏はこれまでにもいくつかの企業運営を手がけている経験豊富なビジネスパーソン。そんな氏が長らくアイデアを温め、ようやくスタートさせたのが、QQ Mini Meなのだという。

おもちゃではなくギフト

さて、起業までに時間がかかった理由とは何であろうか。同社のジェード・ジェン氏に話を聞いてみた。

「実は、似たような人形はアメリカをはじめ各国にありました。とはいえ、あまり似ていないとか、仕上げが雑だったりとか、長い間に色落ちをしたりひびが入ったりと、質がよくない。そこで、当社では材料の選定や製造工程、仕上げや塗料にこだわったのです。長い間変わらぬ品質を維持できる準備ができたことで、ようやくビジネスとしてスタートしました。また、デザインも重視しました。例えば日本人は日本人らしく、欧米人もそれらしく。先生や上司の場合は、少し真面目な感じで、タレントや女性の場合は明るい雰囲気で。結婚式の場合は華やかにと、体形や着るものまで含め細かい調整を行うことで、全体としてそっくりな人形に仕上がるのです」

さらにジェン氏は、品質へのこだわりを一言で語った。
「当社の製品はあくまで『贈り物(Gift)』。決して『おもちゃ(Toy)』ではないのです」

「そっくりの人形」という商品自体、“アイデア勝負のお手軽なニュービジネス”と想像してしまいがちだが、実はこのように細心の注意を払ったうえで、満を持しての起業であったことが、スタートして間もない同社が、すでに市場を切り開いていることの秘けつのようである。

「素材や製法が重要ですので、そのルートや方法は社外秘ですし、誰がデザインしているかも公表していません。質にこだわりつつ競争力ある価格を実現するために、世界中から協力者を集めていることも我々が苦心した点です。だからこそ、記念品やギフトとして市場を開拓できたのです。ニューヨークに拠点があるのも、世界中へネットワークを広げるには最適でした。目を見開いて、心も開いてビジネスができる街ですね」

QQ Mini Me のビジネスは目新しいわけではなく、ニッチながら既存の市場に打って出たことになる。しかし、「おもちゃではなくギフト」という徹底した品質のこだわりとターゲットの絞り込みにより、新たな市場を開拓したといえるだろう。

次回は2008年11月28日更新予定。お楽しみに!

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