世をあげてのエコブームだ。地球レベルで環境を考え、行動することは今や当たり前となりつつある。極力ゴミを減らし、まだ使えるものはリサイクルに回す。しかしこのような活動には困難も多く、なかなかうまくいかないことが多い。特にリフォームや建て替え時のゴミのように大きなものとなると、回収自体も困難だし、再利用するのも難しい。しかしここに興味深い事例がある。ともすれば大量のゴミとなることも多い建築資材のリサイクルを専門としたニュービジネスだ。
「リフォーム」という言葉は一般に使われている。家屋が老朽化したり、子供が生まれたりすることで、住まいを改装したいというニーズは結構多いもの。ところが、いくつか悩みも出る。まず気になるのはその費用。工事費だけでなく、資材や設備のコストもあわせると結構な金額になる。また、工事に伴うゴミの処分にも困る。環境保護が叫ばれる今では、それらを処分するのも大変だ。業者に依頼すると高額になりがちだし、自分で勝手には捨てられず、何より手間もかかる。ところが、ニューヨークには都市部ならではの、リフォームに伴う問題を一気に解決してくれる手だてがあるのだ。それが今回ご紹介するビルド・イット・グリーン!NYC(以下B・I・G)である。
B・I・Gはその名のとおりニューヨーク市に拠点を置くNPO団体だ。同団体は建築資材全般のリサイクルを促進し、ゴミを減らすことで環境維持を目的に設立。同団体は、すでにニューヨーク市で環境に関連する様々な活動を行っていた別のNPO団体を基礎に発展し、いくつかの関連プログラムを経て2005年に発足した。
B・I・Gは、改装、または解体される住宅やオフィス、レストランやホテルなどから再使用が可能な資材を収集し、希望する人に販売するという事業を行っている。倉庫兼ショールームはマンハッタンの対岸、クイーンズ区にある。庫内には様々な建築資材が無数に納められている。柱や壁材、クローゼットやテーブル類、キッチン関連やバスタブ……。中にはレストランから回収されたと思われる大型の業務用冷蔵庫や、ゲームセンターで使用されたとおぼしきピンボールマシンなどもある。大手チェーンレストランの名前がそのまま残った看板などもあり、見て回るだけでも楽しい場所だ。
ニューヨークに限らず、アメリカでは家屋にもアンティークなものを求める層は少なくなく、家をリフォームする際、暖炉や煙突は古い物をそのまま使用するケースも多い。当然ながら新築であっても、好みで古い建材を求める層はいるものだし、何よりも新品を購入するより安価であることの魅力は大きい。子供が成長したので部屋を広げたいとか、バスルームだけ改装したい、それもできる限り自分でやりたいというD・I・Y派の人には人気なのだという。
また、このB・I・GがNPO団体であることから、そのコンセプトに賛同した企業や団体、行政や自治体、そして個人から多くの公的・私的な支援が寄せられている。もちろんニューヨーク市も含めた行政や官公庁の支援も得ており、各方面への積極的な活動を進めている。このような体制により、さらなる認知と協力を得られるようになったのである。
またB・I・Gは低所得者層向け住宅の改装サポートを行い、住宅環境を改善するとともに冬季の暖房費を節約してCO2排出を削減したり、公園の維持管理に太陽光発電を利用するなどの活動も積極的に行っている。
同団体の代表ジャスティン・グリーン氏は、「環境問題が深刻になったことで、この新事業に取り組みました。改装工事の際にそこから出たものが、次の資材となるのです。これこそ『リサイクル』ですね。しかし、まだ理想にはほど遠く、資金繰りも含め大変なことも多いですが、意義のある仕事にかかわるのは楽しいですよ」と、自らの活動に誇りを持っている。また同氏はこのB・I・G以外にも、同じくNPO団体として活動する住宅造成事業や、住宅ローン会社の運営にもかかわっており、多面的にニューヨークに住む人々の生活改善に貢献している。
もともと日本文化にも“物を大切にする精神”が息づいているし、リサイクルビジネスで成功を収めている企業も多い。とはいえ、大都市ニューヨークで活躍するB・I・Gにも起業に関するいろんなヒントがありそうだ。