いかに素晴らしい商品やサービスを生みだしても、市場が存在しなければ成功もあり得ない。また優れたビジネスなら、わずかな兆しや一般の人では気づかない点に注目し、新たな市場を掘り起こしたり、創出することもある。今回ご紹介するのは、アメリカの「文化風習」に着目し成功した好事例。しかも人々をちょっと幸せにしてくれる、夢が溢れる起業だ。
日本でもすっかりおなじみのハロウィーンのパーティ。そもそもはカソリックの宗教行事だが、今では一大パーティデーとなりつつある。そんなハロウィーンのパーティといえば「仮装」。特にニューヨーク、ウエストビレッジの仮装行列は有名で、この日ばかりは子供から大人まで、街から住宅街までがハロウィーン一色になり、秋の風物詩の代表となっている。
9月も終わりに近づくと、街の様々なお店でハロウィーングッズが売られるようになる。凝った衣装を自分で作る人も少なくないが、やはり大半はお店に行って買いそろえるようだ。「今年はどんなグッズにしようか」とあれこれ選ぶのもまた楽しみの一つとなっている。
そんな中、こういった状況に注目し、新たなオンラインビジネス「Outrageous Ventures, Inc.」 が登場した。「Outrageous」とは、「言語道断」という意味だ。社名もユーモアにあふれているが、同社の設立は2001年、場所は米国東海岸北部のコネチカット州、ハートフォード。ニューイングランドと呼ばれ、古い歴史のあるエリアだ。カソリックも多く、また比較的裕福な層が多いことでも知られている。このような背景もあって、同社のビジネスは安定した成長を遂げることができたのであろう。現社長である、スティーブ・ワムポルド氏以下、起業にかかわった小人数で経営が続けられている。
現在、同社では、パーティグッズやジョークグッズを扱うウェブサイトを10種類並行して運営しているが、これまで同様のサービスがなかったこともあって人気を博している。例えば、パーティグッズ全般を扱う「Prank Place(冗談広場)」、おかしなプリントが施されたネクタイを扱う「Funny Ties(おかしなネクタイ)」、ゴルフ関連グッズの「Golf Gift Ets」など、それぞれバラエティに富んでいる。さらにアマゾンなど大手サイトと提携したり、今年には西海岸で同様のビジネスを行っていた「GagWorks.com」を買収するなど、経営は非常に好調だという。
「きめ細かい顧客サービスこそが我々の一番の強み」(同社広報、S・ハーティガン氏) かつてこの類のグッズ販売は、「しょせんはおもちゃの一環」ということに加え、「ハロウィーングッズは年に1度しか使わない」ということもあり、質も悪ければ消費者への対応も悪かったのだという。
「GagWorks.comの買収なども、顧客へのサービス向上の一環といえます。私たちは、自宅からオフィスまで、お客さまにずっと楽しい時間を過ごしてもらいたくて生まれてきた会社です。そしてどうすれば実現できるかをよく知っているのです」(同社社長、ワムポルド氏)
多くの都市でハロウィーンの時期には、空き店舗を利用して期間限定のグッズショップが出現する。それほど需要があるということだが、それでも地方に住む人々や、多忙でショッピングの時間がない人にとって、同社のビジネスはうってつけだった。また品ぞろえが膨大になればなるほど、オンラインショッピングの強みが生きてくる。古くからの文化背景に根ざしながら、しかしITのメリットも取り入れることで、ビジネスを成功させているのだ。
人々に「ユーモアと笑いを」というコンセプトで、多様なジョーク・グッズを扱う同社。どんなにビジネスの幅を広げても、根底にその理念や顧客主義が貫かれているからこそ、ユーザーにも受け入れられ続けるのだろう。