起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

26歳デザイナーのユニークなブランド
――Mottainai NY, LLC

有名ブランドが立ち並び、小さなプライベートブランドやブティックでも素晴らしいセンスを見せるニューヨーク。この街発の世界的ブランドは多く、成功例も多いことは改めて述べるまでもない。現在でも、全米のみならず世界中から、新たな成功を夢見る若者たちがニューヨークを目指してやってくる。今回ご紹介するのは、新しいブランドを立ち上げた一人の若者。少々面白いのはブランド名だ。日本でも聞き覚えがあるその言葉には、彼の意志が込められており、またそれが敏感なニューヨーカーに受け入れられつつあるのだ。

ユニークなブランド名

カルバン・クラインなど多数の有名デザイナーを輩出したことでも有名な『ニューヨーク州立ファッション工科大学(通称F.I.T)』。カリフォルニア出身、若干26歳の新進デザイナー、ルーク・ミッケーンはこの大学の卒業生だ。多くのデザイナーたちは、自分の名前をブランド名に使うが、彼は、自身のブランドを「mottainai ny(もったいないNY)」と名づけた。

ミッケーン氏が起業の準備を始めたのは2006年。F.I.Tで学んでいるときから自分のブランドを立ち上げたいと考えており、その後2年を経た今年1月に実現。ブランド名になった「もったいない」は、以前、彼の友人である日本人芸術家に教わったという。その意味に共感し英訳を試みるも合うものが見つからず、結果、日本語のままブランド名にしたのだという。

「考え方がいいなって思ったんだ。だからブランド名にしたのさ。来るべき未来を示唆するような言葉だと思わないかい」(ミッケーン氏。以下全て同氏)
現在はブルックリンに拠点を置き、市内数カ所の工場で制作を進めているという。彼の作品の素材は8割ほどが日本からの輸入で、ブランド名以外でも日本との繋がりが強い。mottainaiはその精神としての意味が強く、彼の作品全体に行き渡る息づかいのようなものである。それが消費大国アメリカ発の新進ブランドというのも興味深い。

「衣料を作る立場から何か環境に良いことができないかって思ったのさ。今の世の中には無駄に捨てられているものがたくさんある。だからせめて良いものを大事にして無駄を減らせないかと考えたんだよ」

製品づくりへのこだわり

素材の7割以上はオーガニック、もしくはリサイクルのもの。縫製工場は技術の高いところを選び、無駄が出ないよう気をつけている。汚れを落とすための洗浄は、排水に影響を及ぼさない手法を選び、バッグの素材は本来捨てられる部位を上手く利用。タグやパッケージもリサイクル素材だ。また染料も害の少ない植物性にこだわり、長く着られることを考えてデザイン。無駄に捨てられることを避けることで、mottainaiの実現を目指している。このようなコンセプトが同社の個性を確立し、市場に受け入れられているのである。

「僕を含め三人でスタートしたんだ。出資者も見つかった。でも本当に大変だね。経営のことを考え、デザインのことを考え、お金のことを考え、従業員のことを考える。デザイナーとしての僕と、経営者としての僕は、せめぎ合っているよ。上手くバランスを取っているつもりだけど、よりよいものを目指すという点では一緒なんだよ」

つい先日も、高級デパートのバーグドルフ・グッドマンと契約ができたという。新進ブランドとしては快挙といえるだろう。そんな彼は、自身の仕事観についてこう述べる。

「仕事をする上で一番大切なのはコミュニケーション。スタッフにも取引先にも、そしてクライアントにもね。どんな仕事も、周りの人の手助けが必要なんだ。様々な人々の間を揺れ動いて(Swing)やっていく。その中で自分は成長するんだよ。」

mottainai nyも、そういう周囲の人々の手で育てられていくのだろう。
「大切なのは恐れないこと。そしてチャンスを逃さないためにいつでも準備していること。そのときが来たら掴まなきゃならないからね。」
日本との縁も深いこのブランド。そう遠くないうちに日本でも見かけることができるかもしれない。

次回は2008年9月19日更新予定。お楽しみに!

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