起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

10ドルのネットショッピング
――何が届くかお楽しみ!?

今では誰もが当たり前に利用しているインターネット上でのショッピング。無数のショップによって様々な商品が販売されており、希望の商品を探し出すことができる。アマゾンをはじめとする大手は扱い商品数もバラエティーに富み、発送や決済を含めたサービスも充実。しかし、だからこそそれだけでは飽き足らなくなる層も生まれる。そこに新たなビジネスチャンスが生まれるのである。

今回ご紹介するニュービジネスは、あえて業種分けをするなら「オンラインショップ」。しかし大きく他社と違っているのは、購買者は自分で商品を選べない点だ。そう、SomethingStore.comで買い物をしても、いったい自分が何を買ったかは商品が届くまでわからないのである。

ネットでプレゼントは選べない!?

HP1

同社はマンハッタンの東に浮かぶロングアイランドの小さな街、アミティ・ビルというところに拠点を構えている。実はこの街、映画『ジョーズ』の舞台となった架空の港町「アミティ」のモデルとなった港町。そこで生まれたSomething Storeは、人を驚かせるという点ではまさにジョーズ並み。しかしこちらは人食い鮫の恐怖ではなく、楽しい笑いが一緒である。

最初に述べたように、今やオンラインショッピングはありとあらゆるニーズにこたえているようにも感じられる。ところが、ショッピングの楽しみとは目的の商品をより安く便利に購入することだけではない。例えば「ウィンドウショッピング」という言葉があるように、特に購入目的の商品がなくても、並べられた商品を見ているうちに購買意欲を刺激されたり、前から買いたいと考えていたものを急に思い出したりすることもあるだろう。プレゼントともなれば、何を贈るか迷っている間は、インターネットはあまり役に立ってはくれない。そこに新しいビジネスヒントを見いだした起業家がいた。

同社の創業者、サミ・ベイ氏は11年前にトルコからニューヨークにやってきた。以前はインターネット関連企業でマーケティングの仕事に従事し、昨年の11月にSomethingStore.comをつくり退職。今では自身のビジネスに集中しているという。
「友人にプレゼントを贈ろうと思って、逆に困っちゃったんだ」(ベイ氏。以下すべてベイ氏談)
「インターネットではどんなものでも売っている。だけど何を買えばいいのかは教えてくれないんだよね」
 確かにそのとおり。目的が最初にあってからアクセスをするのだから、予想外のことや思わぬ発見は起こらない。
「だったら、もうプレゼントは選ばなくていいようにすればいいんじゃないかと思ったんだ」

10ドルのお楽しみ

HP1

そこでベイ氏がスタートさせたのは「何が届くかわからない」オンラインショップ。販売価格は一律10ドル。中身にはおしゃれな置物や珍しいジーンズなど気の利いたものが多い。一方でデジタルカメラやiPod、時には25ドル分の商品券などといった明らかにおトクなものも混在している。ほとんどの人が商品に好意的なコメントを残しているのも理解できるラインアップだ。「安けりゃいいってもんじゃないから、仕入れにはとても苦労してるよ。卸屋さんなどから一生懸命探しているんだ」

ビジネスをスタートさせてほぼ半年。すでに1万人以上が同サイトを利用。オンラインを中心にPRをしてきたこともあり、今では世界中から注文がくる。

「日本のお客さんも多いし、日本から商品を仕入れることもあるよ」 何が届くかわからないことで、贈り物が届いた後にもう一度話題が盛り上がることから、様々な人へのプレゼントに活用するユーザーも増えてきているという。

「誰でも最初、起業する時は未経験者。だからどんなことでもはじめての経験だし、そう考えれば失敗してもおかしくはない。自分を信じて、自分のひらめきを信じて、とにかくやってみなきゃ」 ベイ氏はにこやかに語るが、移民の国アメリカといえども外国人が全く新しいビジネスを始めているのだからその苦労は想像に難くない。

「大変だよ。自分の会社だと何もかもしなくちゃならないしね。でも楽しんでるよ」

日本でいう「福袋」のWeb版のようなこのビジネス。仕入れの苦労は絶えないだろうが、ユーザーにとっては10ドルでわくわくできるのだから、今後ますます利用者が増えそうである。

次回は2008年06月27日更新予定。お楽しみに!

ページの先頭へ