起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

失恋後、指輪はどうなる?
――男性の事情、女性の事情

仲の良い恋人同士が、いつしかつらい別れと至るケースも少なくない。そしてそれぞれのもとには相手からのプレゼントの数々。男性の手元には贈ることのできなかった婚約指輪が、そして女性の側には彼からの指輪やネックレスなどが残ることとなった。さて2人はこれらをどうするのか。男と女の違いはこういうところにも明確に表れるようである。

失恋の後に残るのは?

HP1

世界一の独身の街といわれるニューヨークには、残念ながら失恋してしまう人も多いことだろう。マンハッタンで働くジョシュア・オッパーマン氏もそんな一人だったという。結婚まで考えていたのにいきなりフラれてしまった彼は、その彼女を忘れるためにも、手元に残る婚約指輪を換金しようとした。彼いわく、
「かなり高価だった」。
その指輪は、買い取りを保証付きだったのだが、ダイヤモンド街にあったその購入店でさえ、驚くような低価格しか提示しなかったという。
「フラれて心を痛めて、そして財布への打撃も大きいんじゃ、立ち直れないよ」 (ジョシュア)

そして氏はサイトを立ち上げることとなる。サイト名の「I do Now Don't.com」とは、結婚式の時の誓いの言葉をもじったもの。「はい誓います。今はもう誓いません」という皮肉の効いたものである。サイトは話題を呼び、あっという間に人気となる。今では最初に氏が買い取り金額に落胆した宝飾店でさえも鑑定の手伝いや出品を行うなど密接な提携を結ぶまでになっている。

一方女性の側はどうなのであろうか。I do Now Don'tに対抗してというわけでもなかろうが、今年2月には、同じようなコンセプトでEx-boyfriend Jewelryがオープンした。こちらは西海岸カリフォルニアでの起業。創業者はミーガン・ペリーとマリー・ペリー。義理の母娘である2人が始めたのは、別れた元彼からもらったプレゼント類、それも貴金属類のみをリサイクル販売するサイトだ。 「私の結婚が駄目になった時にミーガンと一晩話してアイデアを思いついたの」 (マリー) いずれも立ち上げの経緯は似たような物語である。

両サイトとも、貴金属ゆえの注意点には各種の配慮を行っている。I do Now Don't.comでは専門家の鑑定をつけるなど品質には気をつかい、偽物が出品されないよう工夫しているし、Ex-boyfriend Jewelryではだまされないようにするためのノウハウや、送金方法など各種のアドバイスなども行うなど、詐欺などが起きないようにするための工夫を凝らしている。悪徳な業者や出品者へは目を光らせ、利用者の安全には最大限の手間をかけていると双方が述べている。このような基本的なカスタマーサポートはどのようなサイトでも大切なことなのであろうし、特に扱う商品が高価なものであればなおさらだ。

顧客の特徴

HP1

ところでそれぞれのサイトに聞けば、I do Now Don't.は男性の利用者が、Ex-boyfriend Jewelryには女性の利用者が多いのも、それぞれに共感ポイントがあるからだろう。いずれのサイトも一般のユーザーからの出品を中心に、業者からの出品も受け付け、さらにはオークションや交換、無償提供など、様々なユーザーサービスを用意。さらに両サイトともに、売り出されている宝石類についてのストーリーを投稿できるようになっているのだが、前者はどちらかといえば悲惨で暗い話になりがちなのに比べ、後者は相手への非難や悪口などもあっけらかんと書かれている。テレビ取材などにも積極的に応じるミーガン/マリーと、自身の新規ビジネスに徹するジョシュア。こういうところでも男女の差、そして東と西の文化の差は明確だ。

言うまでもなく貴金属は高価ゆえに、買い取りなど2次販売の仕組みが早くから普及している業界といえる。しかしその買い取り価格の設定や各種の条件など、現状が決して消費者サイドに立ったものではなかったこともまた事実だ。そのような利用者の不満があった土壌から生まれてきたのがこれらのサイト。彼らは同じようなビジネスモデルではあるが、しかしそれぞれ男女間の差、そして土地柄をうまく生かした特色が出ており、それぞれ成功をしている。利用者を男女で区切ることなど、今までのビジネスモデルをよりきめ細かに区分けしていくことで、新規の市場を開拓できるという好例であろう。

ターゲットを絞る

オンラインショップのメリットとして、世界中の人々が対象で、商圏が広いということがまず挙げられる。多くの人々に様々な商品を売ることができる優位点が、実店舗に比べて優れているといわれてきた。事実、初期のネットショップはそうやって成長してきている。しかし今やインターネットといえども誰もがそれぞれの使い方をしている。であれば、オンラインショップだからといって無理に間口を広げることがよいとはいえないだろう。「顧客は誰か」を絞りこみ、エリアを絞る。一見ネットの特性に逆行するかのような手法も、十分成功は可能なのである。

次回は2008年06月13日更新予定。お楽しみに!

ページの先頭へ