現在ではどのような企業も自社のウェブサイトは持っているだろうし、サイトの運営自体がビジネスという企業も多い。そしてすべての担当に共通する悩みが、「いかにして自社のサイトにアクセスしてもらうか」であろう。アクセス数を増やすための様々な手法が知られてはいるものの、しかし思うに任せないのもまた事実。似たような他社のサイトとの差別化は大きな悩みだ。しかし米国のとある人気サイトは、そのスタート前から人気であり、今もその勢いは衰えていないという。いったいどういうことなのか。
さて日本ではゴ?ルデンウィークも終わったところ。海外旅行に出かけられた方は多いことだろう。そんな時、皆さんはどうやって旅行先の情報を仕入れたのだろうか。多くの方はガイドブックを手にし、今ならインターネットでの検索も当たり前だろう。ニューヨークのような大都市が旅行先の場合、書店にはガイドブックが多数並べられており、インターネットでの検索ともなればそれこそ無数に検索結果が出てくることになる。どの観光名所を訪れるのがよいのやら、逆に途方に暮れた経験を多くの方がお持ちではないかと思う。
しかも、ガイド本でもインターネットでも、広告宣伝の類も多いので、なかなか真の情報が入手しにくいのも現実だ。現地に知人でもいればタイムリーな情報を仕入れたりすることも可能だろう。せめて、厳選されたものが集められているウェブサイトがあれば・・・・・・。こう願う観光客は多いに違いない。それに答える形でスタートしたのが今回ご紹介するMETRO MIXなのである。
METRO MIXのスタートはほぼ10年前の97年。そのスタート当初から大人気だったという。しかし観光ガイドのサイトは当時でも珍しくはなく、しかもMETRO MIXはスタート時にはシカゴ一都市しか掲載してなかった。なぜ最初から一気に人気サイトとなったのか。それはこのサイトがもともとはシカゴの大手新聞『シカゴ・トリビューン』の人気ページであったことに由来する。地元新聞社が厳選して選び抜いた地元のエンターテインメント情報ということで、市民に親しまれていたのだ。そのバックナンバーも含めた形でインターネット上にオープンしたのがMETROMIX.com。最初から人気があったのも合点がいく。
目的の都市のレストランや、訪れたその日にやっている演劇やコンサートなどの情報が細かく掲載されていることで、観光客のみならず地元市民にも人気のサイトとなっている。写真やデータだけではなく動画や音声まで含んだコンテンツは目的に完璧に合致した訪問先を選定することを可能としており、例えばレストランガイドブックなどにありがちな「行ってみたけどがっかり」的なことが非常に少ないと評判だ。
そしてその背景にはサイトの構築を行ったオブジェクト・デザイン社の高い技術も寄与している。97年の段階では先進的なJAVA技術を採用したことで、多くのアクセスや動画や音声に対応を可能とした先見の明が、現在までの順調な成長の基礎になったことは否定できないだろう。
現在でもMETRO MIXが網羅するのは現在でも僅か12都市(とエリア)ほどにしかすぎない。これは厳選したクオリティの高い情報を提供できることが可能になった都市しか掲載しないためという。現地に在住する人々からの生の情報も人気の要因。現在月間のページビューは1500万ページほどで、アクセスユーザー数は150万人を超えるという。
現在ではMETRO MIXは多くの広告主が先を争って広告掲載を希望するサイトとなっており、その人気ゆえ様々な新展開も実現してきている。オープン10年目の2007年にはトリビューンと人気メディア大手のガーネットの共同出資により「METROMIX LLC」社を設立。今後30都市ほどを網羅するサイトに成長させるべく規模を広げていくとともに、政府など公共広告の獲得などにも注力していくことが発表された。
人気サイトをつくり上げるのは難しい。しかしほかの媒体や商品で人気を博しているものをうまくインターネット上にスピンオフできれば、当初から人気を博すことは不可能ではない。例えば自社サイトへのアクセスが少ないとお悩みなら、全社的なウェブサイトは置いておき、人気商品だけのサイトや、売れ行きの良いサービスだけのサイトを構築してみるというのはいかがだろうか。会社ありき、組織ありきの日本では、なかなか発想の転換は難しいが、消費者が求めているのは会社の名前ではなく商品やサービスそのものであるからだ。