若い女性がセレクトショップをオープン。これだけでは珍しくも何ともないだろう。性別や年齢を問わず自分のお店を持ちたいと思う人は多いし、ニューヨークでもセレクトショップはいたるところにある。オーナーはせっかく開いたお店を人気店にしたいだろうし、ほかの店とはひと味もふた味も違う特色を出そうとする。今回、取り上げるスイートテーターも、もともとはニューヨークに数あるセレクトショップのひとつにすぎなかった。しかし、オープンから約4年経った現在では、有名人の集まる特別な店として名が知られ、いつしか独自ブランドまで展開。その秘密を探ってみよう。
仲の良い二人のニューヨーカー、クリスティーナとサラは2004年にスイートテーターをオープン。場所はノリータのマルベリー通りだ。ノリータはおしゃれなショップが立ち並ぶ、最も競争の厳しい場所。後発で無名のスイートテーターにとっては最も適していた、ともいえるだろう。当初は、50?60年代の欧州の古着中心の品ぞろえであった。サラ自身がギリシャに住む祖母から、様々な商品を入手することができたからである。もともとフリーのデザイナーでもあるサラのセンスは素晴らしく、その目利き力によってスイートテーターはすぐにある種の特別なお店となっていく。今では同店は、映画『スパイダーマン』シリーズで一躍人気女優となったキリスティン・ダンストやリブ・タイラー、映画監督のソフィア・コッポラやスーパーモデルのカロリナ・クルコヴァらが足しげく通う「知る人ぞ知る」ショップなのだ。サラは、「キリスティンは『あなたは私の代わりに買い物に行ってくれたのね』って言ったのよ」(以下の発言はすべてサラ)と笑う。確かにキリスティンやカロリナなどに共通するイメージと同店のセンスとはマッチする部分が多いだろう。
また、サラは日本のセレクトショップのセンスや品揃えにも影響を受けたという。「衝撃を受けたわ。とってもかわいいし素晴らしいセンス。雑誌などでいろいろと教えられたの。直接日本から仕入れてもいいんだけど、やはりこっちではちょっとね。でも靴なんかは本当に残念だわ。さすがにちょっとサイズが小さすぎるのよ」。そもそもアメリカから見ると少し異国情緒な雰囲気がある商品が多いスイートテーターには、日本のオリエンタルな商品群は、ぴったりとマッチしているようだ。
さらにスイートテーターは、2005年頃からオリジナルのタグを縫いつけた独自商品も手がけている。セレクトして仕入れた商品だけでなく、自分たちのセンスを形にした商品の充実を図っているのである。そう、既に独自ブランドを持つデザイナーズ・ブティックとしての顔もあるのだ。その後は毎シーズン、「スイートテーター・コレクション」として、新作を発表。また、ショップのホームページで商品を販売したり、動画サイト「youtube」でのPRビデオ公開など、自在な展開を見せている。
セレクトショップは日本でも今や珍しくないし、そもそも古着店に端を発したアメリカ発のビジネスモデルだ。目利きのセンスがあるアメリカのセレクトショップオーナーが、日本のファッションに目をつけていても不思議はない。ファッションセンスに国境はない。成功するかどうか、すべてはオーナーの感性次第だ。
ビジネスモデルがありきたりでも、「誰に売るのか」「何をどう売るのか」「そのセンスと表現の仕方」などで、まだまだ新しい展開を広げることが可能なのだ。それは、何もファッション分野だけにはとどまらないだろう。