日本でもすでに広く普及した商品券。米国ではギフトカードと呼ばれ、デパートやカード会社などを中心に無数のカードが発行されている。今回は、このギフトカードに着目し、少し目先を変え、そして少し特徴を持たせることで成功を納めた女性起業家を紹介する。
アメリカでは秋の感謝祭からクリスマス、年末年始まで長いホリデーがあり、プレゼントのシーズンでもある。一年間の消費活動の多くがこの時期に集中するともいわれるが、今ではプレゼントにギフトカードを送ることも多くなってきた。ギフトカードとはクレジットカードと同じ大きさで、銀行のキャッシュカードやクレジットカードのように使用できることから、近年とみに利用者が増加。送り手は商品を選ばずに済む手軽さもあるが、受け手には趣味の合わない店のカードだと活用しにくいし、かといって他店のものと交換というわけにもいかない、という難点があった。
そこで出てきたのが、Swap a Gift。所有するギフトカードを、希望するお店や会社のギフトカードと交換しようとするサイトだ。つまり物々交換をオンラインで行ってしまおうという趣旨だ。同社の最大の特徴は、扱う商品をギフトカードに限っていることと、それに付随するサービスが非常に多岐にわたりユーザーの利便性を追求していることの2点である。
同社では様々な企業のギフトカードに関して、多様なサービスを行っている。手持ちのギフトカードを他社のものに交換したり、またしばらく使用の予定がないのなら、売却もできる。そしてギフトカードを使用して、様々な支払いなどに充てることも。財布に入ったまま使うあてのないギフトカードで、携帯電話料金を支払うといったようなことも可能だ。2007年には1000億円規模ともいわれ、毎年7%以上というこの市場の成長が同社の成功の基盤となったことは間違いない。
起業は2003年。急激に伸びを示した商品券市場を見越してペンシルバニア州で設立された。同社は売り手からの手数料、1.99ドルを徴収することで利益を確保している。既に1万5000人以上の登録会員と250社以上のビジネスパートナーを持つという。
同社によれば、毎年100億円相当のギフトカードが使用されないまま眠っており、期限切れを迎え使用できなくなるカードは増えるばかり。また2300万人以上が1年以上商品券を保有したままであるともいわれる。米国に限れば、この種のサイトとしては最初に創設されたものの一つであり、創業当初より現在まで「第二次の商品券市場の担い手」としての地位を確固たるものとしている。同社の創業経営者、メアリー・ジェーン・ケリー氏はテレビの取材に対して述べる。
「このビジネスを最初に始めたのが我々なのです」
先駆者としてのメリットを十分に活かしているようだ。
ところで日本には「質屋」というビジネスモデルがあり、そして現在では「金券ショップ」も多数存在する。今さらこのビジネスモデルを選ぶメリットがあるようには思えない。しかし米国には質屋も金券ショップも日本のような形では普及しておらず、市場は事実上手つかずであったのだ。
そう、このSwap a Giftの盛況を見ると、よいサービスであれば、そして他社に先んじることができれば、それがほかのエリアでは一般的であっても、市場をつくりだせる可能性がある、といえないだろうか。同社は日本では珍しくもない金券ショップ的なビジネスを、ほかにライバルがいなかった米国でほんの少しアレンジして始めたに過ぎない。アイデアを付け加えたり、目先を変えることで、従来からあるビジネスでも意外なほど激変できることの証明ともいえるだろう。