起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

子供も親もうれしい「遊び場」
を提供――ファンバス

近年、日本では子供たちの遊ぶ場所が少なくなっているという。特に都会では、どこも住宅が密集しており、公園は狭く、かつてのような空き地などは望むべくもない。道路で遊ぶのは危険だし託児所や幼稚園も制限が多く、そして何より週末に遊ばせる場所がない。自分たちの時間も取れないばかりか、最近では幼児を狙う悪質な犯罪も増え、親たちの悩みは増えるばかりで、状況はアメリカでもそう変わることはない。そんな状況を打開してくれるニュービジネスが今回ご紹介する「Fun Buses(ファンバス)」だ。

バスが遊び場!?

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アメリカでは低年齢の子供を一人きりにさせることが法律で固く禁じられている。夕方のちょっとしたお買い物の時に家で留守番をさせたりするのはもちろん、子供が寝たあとに親だけで映画や食事に行くことも許されない。通学にも必ず保護者が同伴する必要がある。そんなアメリカだからこそ、親の手助けをするビジネスは多数存在する。ベビーシッターなどはその代表的なものだ。

しかし週末にはやはり子供を遊ばせたいものだし、少しは運動させないと夜ちゃんと眠ってもくれないだろうが、都会の親たちは忙しく、そんな場所もそうそう見つからない。また家の中や託児所内で走り回られるのも考えもの。しかし元気があり余る子供たちにそれをやめろというのもちょっとかわいそう。都会に住む親たちの悩みは万国共通のようである。

そこに現れたのがファンバスだ。彼らは子供たちの前にさっそうと現れ、子供たちが疲れるまでとことん遊ばせてくれる。そう、このファンバスは依頼があればその場所まで出向き、バスの中で遊ばせてくれるというサービスを行っているのだ。やや小ぶりのバスは子供が喜びそうなデザインに彩られ、遠くからでもこのバスを見つけることができる。現地に到着すると車内のシートは取り払われ、広い空間が出現。そしてバスの運転手さんは先生に早変わりして車内とその周りをうまく使って子供たちを遊ばせてくれるのだ。

必要はニュービジネスの素

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このファンバス、フランチャイズの本拠地はニューヨークのお隣であるニュージャージー州。託児所で仕事をしていた2人の女性、カリ・デントンさんとダウン・マクガリーさんは、日々の仕事の中で常によいやり方を模索していたという。彼女らの経験と創意工夫から生み出されたのがファンバスなのだ。

ファンバスは、お絵かきや絵本を読むなどの家の中でできることではなく、あくまで「子供たちのフィットネス」をその主眼としている。親たちが一番困っているのがこの面でのケアということもあるし、何より「子供たちは遊びたいのよ(デントン氏)」という彼らの気持ちをくんだ配慮は経験者ならではといえるだろう。

経験者が始めただけに、細かい点まで気配りが行き届いているのがファンバスの特徴だ。現場に到着するとウレタンマットが車内外に敷き詰められ、安全には最大限の注意を払っている。遊ぶのも、バスの中と周囲をうまく一周するように組み立てられており、遊技用具の取り合いによる子供同士のけんかや、走り回ることによる衝突の危険なども回避されている。

成功の要因とは?

このファンバスがビジネス上の成功を収めた理由は、その対象が広い意味で子供だけではなかったことも大きい。もちろんバスの中で遊ぶのは子供なのだが、そのために親が自分の時間を子供に割かなくてよいことが大きいのだ。しかもその間子供は健康的に遊んでくれるのだから言うことはない。

例えば、会社総出のピクニックやスポーツの大会などであっても、そのイベントの場所にファンバスを呼べば、その時間内は子供たちの面倒を見なくても済むわけだ。施設内に託児所を確保するのが難しいような場所や環境下でも、大人が子供連れでありながら自分の時間を取ることができる。このことが同社のビジネスをさらに成功させることとなったのは間違いない。今ではフランチャイズ展開を行っており、何台ものファンバスがあちこちで走り回っている。

今回取材した日は寒い初冬の休日。しかし子供たちは暖かい車の中とその周りを行ったり来たりで大騒ぎだ。子供はバスに乗るのは大好きだし、運転手さんも大好きだ。その運転手さんは今は先生となり一緒に遊んでくれている。彼らは皆きらきら目を輝かせ、そして大きく笑っている。周囲の大人たちも同様だ。ビジネスとしてだけではなく公益性も高い社会活動として成立しているのがこのファンバスなのだ。

取材に応じてくれたファンバス・ビジネスを行っているパティさんは言う
「週末は引っ張りだこなの。とても大変だけど子供の笑顔で元気は取り戻せるわね」
パティさんを手伝う息子のデビッド君も、
「子供の相手は大変だよ。でも子供が喜んでくれるのは良いよね」
ビジネスとして、顧客だけではなく自分たち自身もが少し幸せになれるニュービジネス、ファンバス。素晴らしいではないか。

次回は2008年2月1日更新予定。お楽しみに!

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