お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.104, チーズバー
カーザ・デ・ケージョ  の場合
インタビュー
カーザ・デ・ケージョ
オーナー・齋藤敏明さん(66歳)
常時50種類を扱うチーズバー
30代女性を中心にファン増加中
PROFILE
さいとうとしあき/1941年、静岡県生まれ。高校卒業後、家電量販店に就職。その後音響関連の会社を起業したが、30歳で雪印乳業に再就職。60歳の定年を前にポルトガルへ留学。定年退職後、雪印乳業のグループ会社が経営するチーズショップの支配人を務める。3年後、ショップの閉店を機に、2006年11月、現在の店をオープンさせた。
開業のノウハウ
 
 長年勤務していた会社は大手乳業メーカー。そこでの経験を生かしてチーズバーを? とつい思いがちだが、実は齋藤さんがチーズに目覚めたのは、定年後のこと。退職した会社の子会社が運営するチーズショップから要請を受け、支配人としてチーズ販売の仕事に携わったことが、現在の店を開業するきっかけとなった。
 「チーズが好きになったのも、接客業のおもしろさを知ったのも、ここでの経験から。お客さんが、おいしいと喜んでくれる顔を見るのが私の喜びでした。この仕事はまさに天職でした」
  定年後、天職に巡り合えた齋藤さん。しかし、このショップは3年で撤退することが決まる。あとは、のんびり隠居生活を送ろうと考えていた矢先、現在入居している店舗物件のオーナーから、「恵比寿で店をやらないか」と話を持ちかけられる。想定外のことではあったが、迷わず決意。「やるなら、チーズバー」とすぐに店の姿をイメージできたからだ。
  物件取得費がかからないこと、大人も若者も集う恵比寿という街にあること、駅前の喧騒から少しはずれた隠れ家的な立地。これらの条件もまた、開業の決意を後押しした。
 「ショーケースに私がセレクトしたチーズを陳列し、対面でお客さんに提供する。お客さんはチーズを食べながらワインを楽しむ。おそらく日本で唯一のチーズバーでしょう。天職だと思っていた仕事がまたできる。開業することに迷いがなかったのは、心からそう思えたからです」
  こうして、齋藤さんがチーズバー「カーザ・デ・ケージョ」のオーナーになったのは、定年退職してから6年後のことだった。
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初めて食べるチーズに驚いたり舌鼓を打つお客の姿がうれしい

 店内に入ってまず最初に目に入るのは、カウンター前の長いショーケース。中には、齋藤さんが厳選した14カ国のチーズ約50種類がズラリ。倉庫に保管されている分を合わせると、70種類にものぼる。
 「チーズは、5社の輸入代理店から仕入れています。おもしろいチーズ、一般の家庭に流通していないものを扱わなければ、お客さんはここに来る意味がないですからね」
  この店の看板メニューは、3種類(1300円)または5種類(2000円)の盛り合わせ。客が好きなチーズを選んでもよし、齋藤さんに好みを伝えて、お任せで選んでもらってもよし。チーズによって食べ頃の温度は微妙に違う。時間を見計らいながら、齋藤さんはチーズをさばいていく。
 「こんなチーズ初めて食べたと驚いたり、おいしいと言ってくれるお客さんの顔を見るのが楽しい。そんなお客さんの喜ぶ顔を見たくて、この商売をしているようなもの。たくさんの種類のチーズを扱うとなると、仕入れコストも管理コストもかかります。原価率を考えたら、今の価格帯では見合わない。でも、原価に見合った料金にしてお客さんが来ないより、利益率は低くても、お客さんに喜んでもらえるほうがいい。そんなに大儲けなくても、生活していければいいんだよ(笑)」
  現在の月の売り上げは、120万〜130万円。そのうちチーズの仕入れ代は月約80万円というから、確かに、儲かっているとはいえない。しかし、13席の店舗を一人で運営し、オープンして1年に満たずして、コンスタントに120万円以上の売り上げがあるというのは、確実に客が増え、定着し、認知されてきている証拠。

月1回の食べ放題イベントとキャンペーンでファンを増やす

 チーズバーという新しい形態が話題になり、オープン当初からメディアに紹介されたことも、早い時期に認知された理由のひとつではあるが、それだけではない。試行錯誤しながらも、集客のための様々な工夫も売り上げ増につながっている。
  11月11日のチーズの日にちなんで、毎月11日をチーズ食べ放題(4000円)の日としている。これが思いのほか好評で、毎月11日は予約でいっぱいになるほど。そのほかにも、「珍しいチーズフェスタ」「スペイン・ポルトガル産チーズフェスタ」など、毎月新しいキャンペーンを企画している。
 「月に1回はお客さんに来店してもらえるにはどうしたらいいかを考えて、イベントを開催しています」
  開業と同時に始めたブログも効果を発揮し、特にキャンペーンの日は、全国から客がやって来るようなった。
  客層は、30代の女性が中心だが、子供連れから90歳の高齢者まで幅広い。
  ほかにも、カマンベールフォンデュやピザ、生ハムセットや生ウィンナーなどがあり、いずれも、チーズと同様、齋藤さんが素材にこだわり抜いた自慢のメニューだ。
 「夢はポルトガルのミュージシャンを呼んで全国で演奏会をすること。そのための資金をつくるためにも、この店でもう少しがんばらないとね(笑)」

■オープンまでの経緯
 
2000年3月 定年退職
2002年4月 チーズショップの支配人に
2005年5月 チーズショップが閉店することに
2006年7月 物件オーナーから店をやらないかと 声をかけられ開業を決意
2006年9月 内装工事着工
2006年11月 1日オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都渋谷区恵比寿2-8-7
平均客単価
3500円
最寄り駅
JR・東京メトロ恵比寿駅
平均来客数
10人/1日
電話
03-3473-5525
http://www.casadequeijo.com/
売り上げ
120万〜130万円/月
営業時間
12:00〜23:00(木・金曜のみ〜翌1:00)
経費
35万円/月(人件費、光熱費など含む)
定休日
日・月曜
仕入れ
80万円/月
広さ・席数
8坪

開業のノウハウ