お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.102, フランス家庭料理店
レ・リヤン  の場合
インタビュー
レ・リヤン
オーナー・吉澤美智子さん(31歳)

料理をおいしいと言ってもらえてお金がもらえる。
あらためて、この商売ってすごい!と思うんです
PROFILE
よしざわみちこ/1976年、東京都生まれ。短大卒業後、調理師専門学校に入学。卒業後、フレンチレストランに就職。調理師として仕事をするも、体調を壊し25歳の時、3カ月間休養を取る。その後、ベトナム料理店でアルバイトをし、その時に現店舗のオーナーと知り合い、独立を決意。2004年1月、現在の店をオープンさせる。
開業のノウハウ
 
 吉澤さんがフレンチの料理人になりたいと思ったのは、中学生の時。家族に連れられてフレンチレストランに行ったのがきっかけだった。専門学校に行き、レストランに就職し……と、思い描いた夢を、吉澤さんは確実に実現させていった。ただし、その頃はまだ、独立して自分の店を持つことなど考えたこともなかったという。それが、28歳で店を持つことに。そのきっかけがおもしろい。
 就職したレストランで厳しい修業を積んでいた吉澤さんは、ある時体を壊してしまう。「もう、料理の世界から離れよう」。そんな思いで休養生活を送る吉澤さんに、下北沢にあるベトナム料理店から、アルバイトをしてほしいと声がかかる。「やっぱり料理の仕事がしたい」と、実家のある浅草から、これまで行ったことのなかった下北沢に通うことに。
 個性的な店舗がひしめきあう下北沢。そんなエリアで、吉澤さんがよく通っていたのは、バイト先に向かう途中にあるカフェだった。築60年の建物の1階を改装してつくられたそのカフェに流れる、落ち着いた雰囲気が気に入っていた。やがて、カフェのオーナーとも仲良くなり、その人物は、建物の持ち主でもあることがわかった。ある日のこと、オーナーは吉澤さんにこんな話を持ちかけた。「自分はもうカフェの運営を撤退するから、ここでお店をしてみない?」。予想外の提案にびっくりした吉澤さんだったが、この申し出をきっかけに、独立を決意する。
 「大好きなこの空間で自分の店を持てるなんて、こんなチャンスはめったにない。やるしかない!と、自分でも驚くほど迷わずに決めました」
 店舗のある建物は、老朽化が進んでいるため、数年後には取り壊しが決まっていた。それゆえ、保証金はゼロ。さらに、カフェで使用していた什器やインテリアをそのまま使用させてもらえる。それなら少ない資金で開業できる。この好条件もまた、独立を決意する後押しとなった。
 こうして、ある日突然やってきたチャンスをつかみ、28歳にして、吉澤さんは店のオーナーになった。    
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オープン2年目に形態を変更
これが売り上げアップに


 常に多くの若者でにぎわっている下北沢の駅前商店街の喧騒を抜け、奥の通りに入った辺りに店はある。
 オープン当初、吉澤さんが考えたコンセプトは、料理メニューが充実したカフェ&バー。営業時間はランチタイムから23時まで。ランチだけ、お茶をゆっくり、お酒を楽しんで……。この店は、お客さんが好きなように使えばいい。こんな思いから、吉澤さんは先のような形態と営業時間を決めた。しかし、次第にこのやり方では店の雰囲気に統一感がなく、店舗運営の面から見ても効率が悪いことに気づく。同じ時間帯に、お酒を飲みながら食事している客もいれば、静かにお茶を飲む客もいて、違和感のある空気をつくってしまうのだ。吉澤さんにとっても、昼と夜の区別がつかず、1日の客の流れがつかめない。そうすると、売り上げ予測がたてにくく、計画的な運営ができない。
 そこで、オープン2年目の昨年、カフェ&バーからブラッスリーに形態を変えることに。同時に、営業時間も、ランチタイム時とディナー&バータイム時の2部構成に変更し、閉店時間も延長。お酒のメニューも増やし、それに合わせて、料理メニューも充実させた。この営業時間を含む形態の変更は、大正解だった。客の目的が明確になり、夜は酒を中心に料理を楽しみに来る客が増えた。営業時間を延長したことで、最後にこの店でお酒を一杯、という客も来るようになった。月平均120万円前後だった売り上げが、160万〜170万円に伸びた。
 「形態を変えたことで、徐々にですが、大人の方に安心して来ていただける店になっているような気がします」

フレンドリーな接客でファンを拡大

 もちろん、店の経営が軌道に乗ったのは、形態変更だけが要因ではない。料理の勉強と経験をしっかり積んだ吉澤さんのつくる、野菜たっぷりの料理、そして、自称「定食屋のおかみさん」のようなフレンドリーな接客が、ファンを増やしてきた。休日、お客と遊びに行ったり飲みに行ったりすることもあり、お客とのコミュニケーションづくりを大事にしていることも、常連の増加&定着の要因。
 「売り上げゼロの日もあったり、スタッフが辞めたりと、つらいことはたくさんありましたが、お客さんが私の料理をおいしいって食べに来てくれて、それに対してお金を支払ってくれる。これが商売というものなのでしょうが、このことが、すごいな、うれしいなって思うんです。来年立ち退きになりますが、移転先は絶対近くにしてね、とお客さんから言われているんです。そういうとき、この店を始めてよかったなあ、とつくづく思います」

■オープンまでの経緯
 
2003年12月 独立を決意
2004年1月 家族に融資を依頼。コンセプトを決める
2004年3月 物件の正式契約。一部内装工事を開始
2004年4月 5日、オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都世田谷区代沢5-32-14
平均客単価
昼(ランチ)1000円
夜3000〜5000円
最寄り駅
京王井の頭・小田急線下北沢駅
平均来客数
昼25人/1日 夜20人/1日
電話
03-3410-3454
売り上げ
160万〜170万円/月
営業時間
12:00〜14:30
18:00〜24:00
経費
65万円/月(家賃、光熱費、人件費)
定休日
月曜
仕入れ
売り上げの25%
広さ・席数
12坪・17席

開業のノウハウ