CASE76コンピュータエンジニア
報酬額以上の仕事を常に心がける事業計画立案のスペシャリスト
ある程度の規模の会社なら、経営企画室などを設けて事業計画立案の専門社員を配置、育成することも可能だろう。だが、中小やベンチャー企業ではそこまで手が回らないのが実情だ。鈴木さんは、大手IT企業でベンチャー企業への投資判断や、市場動向調査をもとに新規事業計画立案を担当していた。その経験を生かして、中小・ベンチャー企業向けに、事業計画立案などをサポートするコンサルタントとして活躍している。
「コンサルタントには、料金が高いとか相談だけでお金をとるようなイメージがあります。私は従来型とは一線を画して、事業計画書を作成して終わりではなく、クライアントの最終目的に向けて具体的にどうすればいいのかまで提案していきます。『もの』として見えて、納得できる形ができて初めて報酬をいただくということにこだわっています」
実は鈴木さんは2回の独立を経験している。1度目は大手IT企業を退社し、市場調査リポートの作成などを主な業務として個人で開業した。しかし、需要があり、収入も確保できていたのにもかかわらず、鈴木さんは何か腑に落ちない気持ちを抱えていたという。
「市場調査や情報収集は、きれい事だけではできない仕事です。それに請負仕事でしかない。ほかにもやりたい仕事があったのになかなか進まず、この仕事をずっと続けていくのか、これが一生の仕事でいいのかと不安を覚え、つまらなくなってしまった(笑)」
その頃、事業計画立案の依頼を受けたベンチャー企業から声が掛かり再就職。経営企画室長として事業計画や上場準備、内部監査を担当。無事に上場を果たした後、転職したベンチャー企業ではIR/PR業務、J-SOX対応準備などを担当し、2008年に2回目の独立に踏み切った。
「コンサルタント業務だけではなく、自分で新しいビジネスをつくりたかったのですが、それには最初の独立は早すぎました。今度は、もう会社勤めはいいだろうと思えたので独立しました」
鈴木さんにはトライアスロン歴20年というもう一つの顔がある。40歳をすぎた今でもフルマラソンを約3時間で走りきるアスリート・プロワーカーなのだ。「仕事もトライアスロンも同じもの。やり出したらきりがない」と言い、会社員とプロワーカーを行き来した鈴木さんは、仕事に対して独特の価値観を持っている。
「会社勤めは時間を売るようなもの。でも、自分の成果を売るのも仕事になるし、仕事で自己実現ができればもっと楽しくなる。私はそういう働き方をしていきたいし、やりたいことができるのが一番幸せな生き方だと思います。だから、自分に我慢をしたくない。そのためにどうするかを常に考えています」
PROFILE
鈴木 雄久さん(47歳)
1962年、愛知県生まれ。東北大学大学院工学研究科(修士)修了。87年、リクルートに入社し、主に技術部門で勤務。99年、トランスコスモスに転職し、技術面から見た投資判断や新規事業開発を担当。2004年、個人で開業。2005年、サイバーステップに再就職。東証マザーズ上場を果たし、2007年、テクノマセマティカル入社。2008年4月、同社を退社し、プロワーカーとして独立。
取材・文●山根洋士 撮影●井出マコト
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会
[ 2009.02.20 ]
スケジュール管理などは、手書きではなくデジタル派。すべてノートPCとPDA代わりのiPod Touchで管理している
POLICY
顧客の期待以上の仕事をする。決して自分の安売りはしないが、「鈴木さんに頼んで安かったよ」と言われると本望。
HOLIDAY
週休2日は崩さない。ダラダラ仕事をしないように、オンとオフをしっかり切り替えるためにも休日をもうけている。
MONEY
顧客に請求書を発行する時、「自分はこれだけの金額の価値がある仕事をしたのか」と、自分を振り返るいい機会になる。
SATISFACTION
顧客の反応をダイレクトに見ることができ、「ありがとう」「ためになった」などと言われると、会社員時代よりうれしい。