CASE71教育コンサルタント

プロワーカーになって得た時間は絶対にお金では買えないもの

組織を率いる者にとって、部下の指導・教育は永遠に悩みの種だろう。ところが、効率的、効果的に教えるためにはどうすれば良いのかという問題は、インストラクショナルデザインという手法を活用することで改善できる。

小澤さんはその手法を用いて、教育コンサルタントとして活躍している。これまでの主な仕事は、外資系IT企業のセールス教育(研修企画、ビデオ・テキスト教材開発、効果測定)、経済産業省のサービス産業創出支援事業プロジェクト(企画設計開発、教育効果評価)、ホテル向けホスピタリティ教育(企画、カリキュラム設計、教育効果評価)、財団法人海外技術者研修協会の研修カリキュラムデザインなど。また、研修や教育に限らず、今までの経験やスキルを活用できる業務管理やプロジェクト管理の支援も行っている。

大学を卒業して勤めた大手コンピュータメーカーではソフト開発を担当。転職した外資系IT企業でインストラクショナルデザインと出合い、コンサルティング業務に従事することに。ここで小澤さんは後の生き方につながる「衝撃的な一言」とも出合う。それは所属していた教育部門が投資会社に売却されることになった時、不安の渦中にあった社員に向けて社長が放った一言だ。

「社長が謝るのかと思ったら、『会社に頼るな。自分のキャリアは自分で作れ』と。今まで会社に頼っていたつもりはないけれど、結果としてそうなっていた。自分の人生を会社が作ってくれるわけがないということに気づかされて衝撃を受けました」

その後、新会社が設立され、小澤さんは社員として勤務し続けたものの、仕事内容が管理業務に変わり、充足感が得られなくなった。同じ頃に、子どもの学童保育での様子を聞き、子どもの気持ちを理解していなかったことに気づく出来事があった。

「自分は満足のいく仕事をしていないし、母親としての役割も果たせていない。仕事と家庭の両立を考えた時、自分の売れる部分を探すこと、それを求めてくれる方と組んで、独立して仕事をしていくことが必要だと思いました」

独立して10年。収入は前職時代に追い付いていないものの、「プライスレスの時間を手に入れることができた」と小澤さんは振り返る。会社員時代より家族と過ごす時間が増え、仕事をセーブして大学院に通うこともできた。仕事では、深く現場にかかわると若い人たちの相談に乗ることもある。プロワーカーの、働く女性の先輩として、後に続く若い人たちのサポートをしたいという思いも強い。

「女性は働きやすい環境になったけれど、その分ワークライフバランスが崩れている人が増えています。こうあるべきだという理想や型にこだわらずに、まず自分にとって何が一番大切なのかを明確にすることが重要だと思います。私自身も家族の支えがあってやってこられたので偉そうなことは言えませんが、今後は子育てを一段落して何かしたいという女性たちと一緒にできることはないかと、考えているところです」



PROFILE

小澤 咲子さん(49歳)

1959年、神奈川県出身。82年、大学卒業後、大手コンピュータメーカーにてソフト開発を担当。85年、外資系IT企業に転職し、インストラクショナルデザインを活用した教材、サービス開発、教育効果評価などのコンサルティングに従事。96年、所属部門が売却され、設立された新会社に移籍し、ビジネス開発、DBマーケティングなどを担当。99年、プロワーカーとして独立する。

取材・文●山根洋士 撮影●井出マコト
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会

[ 2008.11.21 ]

営業ツールの写真

手帳には子どもの予定やプライベートの用事まですべて書いてある。携帯電話はPCのメールも送受信できるタイプを愛用

POLICY

しなやかに、柔軟に考えること。そして常に誠実であること。

HOLIDAY

今のほうが休日に仕事をすることは増えたが、時間を自分の裁量で使えるようになった。お金より時間が大切だとつくづく思う。

MONEY

金銭感覚は「今も昔もザル(笑)」だが、今は前職時代より収入が減ったので昔よりも収支をきっちり管理するようになった。

SATISFACTION

お客さまに感謝された時も嬉しいが、あるプロジェクトが終了して、仲間と達成感や喜びを共有できる時にも満足感を得られる。