CASE58ワークフローアドバイザー

独自に研究を重ねたワークフローで経営の「見える化」をサポート

現在多くの企業では部署ごとに情報が管理され、企業全体での情報共有が十分にできていないという問題が起こっている。セキュリティという観点からも、いつしかオープン性がなくなり、たとえ隣同士にある部署でもお互いがどんな内容の業務を行っているのかが見えなくなってしまっている。そのために会社としての問題点が見つけにくく、問題解決のスピードを鈍らせているのだ。この企業問題に、“IDEF 0(アイデフゼロ)”というビジネスプロセスを図示する手法で挑んでいるのが、ワークフロー研究所の稲次さんだ。

“IDEF 0”とは、米国の空軍で約20年前に開発され、現在はIT業界をはじめ幅広い業種のビジネスフロー、事業オペレーションを、包括的に表現するために利用されている図示化手法。
   「以前在籍していた会社で、会社内のオープン性を保つにはどうしたらいいのかを、いつも考えていました。ある経営会議で各部署の業務状況を発表してもらうと、全員目標値をクリアする業績を残している。しかし、会社としては目標達成に到達せず、どこに問題点があるのか見つけられなかったんです。その状況を打破するためにいろいろと調べた結果、“IDEF 0”という手法が最適なことがわかったのです」

大手情報機器関連企業で、人事、製造管理、人事企画と管理部門を28年間歩んできた稲次さんは、この“IDEF 0”に出合ってから社内の問題点を次々と見つけ出し、業務改善を行ってきた。そして50歳になった時に、今まで自分が経験したことを生かし世の中にお返しがしたいと、独立を意識したという。

「けれども独立をした先輩から、まだまだ知名度の低い“IDEF 0”だけでは商品力が弱いと指摘されたのです。プロとして通用するよう個人の資質を上げる必要があると感じたため、退職した後、ある企業の顧問となりました。しかしそこで、在籍中に民事再生法を受けることになってしまったのです。思いもかけない出来事でしたが、“IDEF 0”を駆使して業務改善に取り組むことができ、おかげで会社は計画通り再生することができました。これが私の業務知識を広げるために、とてもいい経験となったのです」
   その後、顧問職を辞し、いよいよ活動を本格化。

「約250名以上の経営者と会って、会社の問題点やその解決方法をリサーチしました。多くの経営者は社内に問題があることはわかるものの、その問題のポイントを絞りきれずに頭を悩ませていました。それは、ビジネスプロセスや情報が社内でオープンになっていないからこそ。私は“IDEF 0”を使って、目標達成するために解決しなくてはならない課題を示唆しました。納得してもらえる人が多く、この仕事の手ごたえを感じましたね」
   多くの企業の現状を知ったことで、自信がついた稲次さん。ある製造会社と半年間の契約を結ぶことができた。

「説明をした時に、『よくわかる』といってもらえると達成感を感じますね。“IDEF 0”で会社全体の仕事の流れをつかみ、会社内の「見える化」を実現します。それによって全員で課題を共有することができ、課題解決に向かって一丸となって進めるため、スピーディに解決へと向かうことができます」
   と、稲次さんは仕事の醍醐味を語る。

「今あるパイの中で顧客を取り合うのではなく、新しいマーケットを醸成していくこの仕事に、非常にやりがいを感じています」



PROFILE

稲次 信男さん(63歳)

1945年、岡山県生まれ。関西大学経済学部を卒業後、ミノルタ株式会社(現コニカミノルタホールディングス)に入社。人事、製造管理、人事企画など、主に管理畑を歩む。50歳で退職し、その後3年間、化粧品事業会社の顧問として事業に携わる。2007年8月ワークフロー研究所設立。

取材・文●浅子百合(クレッシェント) 撮影●刑部友康
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会

[ 2008.05.09 ]

営業ツールの写真

キャリー用のプロジェクタは稲次さんにとって大切な仕事のパートナー。「プレゼンの時など、パソコンの小さな画面より、大きな画面で説明したほうがわかりやすいですから」

POLICY

「あきらめない」。あきらめずに続けていけば必ず報われる、が信条。

HOLIDAY

独立前より休みは確実に減ったが、あまり苦にはならない。日曜日はなるべく休むようにしている。

MONEY

会社員時代には及ばないものの、昨年は640万円の利益を挙げている。

SATISFACTION

一つのテーマを持って、それに特化して動けるのが魅力。9:00〜17:00の定時でしばられるのではなく、自分の裁量で行動できるのもうれしい。