CASE57J-SOX対策コンサルタント
J-SOX法対策の内部統制強化を通じて企業の売り上げ向上を支援
SOX(Sarbanes-Oxley=サーベンス・オクスリー)法は、エンロン事件をはじめとする会計不祥事の続出に対して、企業の内部統制強化を目的にアメリカ政府が制定。2002年7月に成立した法律である。日本でも粉飾決済などの不祥事が絶えないため、同様の目的で2008年4月からJ-(日本版)SOX法が施行された。
アメリカで同法が導入された頃、企業は大混乱に陥った。今までになかった規則だけにお手本も何もない。すべてが手探りで進めなければならなかった。この混乱の渦中で、当時ソニーのSOX法対策プロジェクトのリーダーを務めていたのが田原さんだった。
「これが日本に数年遅れで導入されるとなれば、日本企業も混乱することは目に見えている。ビジネスのチャンスだと思いました」
「たまたま定年まで勤めてしまっただけ」と本人は笑うが、独立はいつも意識の片隅にあった。きっかけが見つからなかっただけなのだ。しかし、定年を目前にしてチャンスの到来と会社を辞める時期が合致した。田原さんは定年退職後の2007年7月、J-SOX法対策を企業にアドバイスするコンサルタントとして再スタートを切った。
「昔をひきずっていてもしょうがないと思い、2000枚あった取引先などの名刺は一日がかりでシュレッダーにかけました。大企業と個人では方法論が違います。個人で担当できる企業は5社くらい。それならツテで開拓できる。それに自分がゼロからどこまでできるか試したいという気持ちもあった。独立後2年は安定せず、持ち出しを覚悟していたのですが、9カ月をすぎて生活費は稼げるくらいになっています」
大きな枠組みで物事をとらえ、その中で自分の役割を考えるのが田原さんの信条。同法の施行に伴い、企業の金銭的負担は増える。義務だからしかたなく内部統制に取り組むだけではなく、それを収益改善に結び付ける方法を提案している。その先に見据えているのは、日本企業や社会の体質改善だ。
「年齢でものを考える思考方法、そこからできた制度が企業や社会の発展を阻害している。年齢は絶対に追い越せないし、変えられない。年功序列もそうだし、定年制もそう。60歳はまだ若いのに制度で何もできなくなる。そこに風穴を開けたいと思っています」
熱いハートの持ち主かと思えば、冷静かつビジネスライクな視点も持ち合わせている。自身のビジネスモデルのチャンスは2、3年と分析し、退職金をつぎ込むようなリスクも背負わない。
「退職金を使って始めるのはリスクが高すぎる。ゼロからというのは、ミニマムなリスクの中でスタートしてどこまでできるかという挑戦でもあります。それで無理なら、あっさり辞めますよ(笑)」
PROFILE
田原 中男さん(61歳)
1946年、東京都生まれ。東京大学在学中にユネスコのNGO団体理事長として学生の国際交流事業に従事。卒業後、ソニー入社。人事、ビジネス企画、子会社再建、内部監査などの要職を歴任。アメリカのSOX法対策ではプロジェクトリーダーとして組織を運営。2007年3月、同社を定年退職。同年7月、BMDリサーチを設立し、J-SOX法コンサルタントとして活動開始。
取材・文●山根洋士 撮影●松本朋之
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会
[ 2008.04.18 ]

メガネはイタリア製。折りたたむと薄くなり、胸ポケットに収容可能。アイデアを書き留めておくために、メモ用紙も必携
POLICY
頑固なところがある。自分の考えと合わなければその仕事はやらない。会社員時代も、間違っていると思えば上司と激論していた。
HOLIDAY
前職時代の土日は、海外出張などでほとんどつぶれていたためほとんどなし。今は基本、土日休み。独立して休日は増えた。
MONEY
独立すると、収入は上下するが固定費などの支出は一定。自然とキャッシュフローはずいぶん考えるようになってきた。
SATISFACTION
クライアントの相談に乗って感謝されるとホッとするけれども、昔も今も仕事で満足感を得たことはあまりない。