CASE55飲食店コンサルタント

現場に深くかかわる支援、指導で、飲食店の売り上げ改善を指南

会社に勤めていれば、「出世」と「楽しく仕事をしたい」という気持ちがイコールで結ばれないことが往々にしてある。約20年の業界経験を生かして飲食店コンサルタントとして活躍する阿部さんが、昨年6月に会社を辞めた時の最後の役職は取締役(経営企画室新規事業開発担当、マーケティング本部本部長)。有名企業で大手カフェチェーンを黒字化した担当者ともなれば、他社から転職の誘いは少なくなかった。独立するにしても、飲食業界であれば大きく始めて大きく儲ける手法を知らないわけではない。それでも阿部さんがあえてプロワーカーとしての道を選んだ理由は、まず何より自分自身が「楽しく仕事をしたい」から。そして「飲食で働く若い人たちに楽しく仕事をしてほしい」という思いからだった。



「最初に就職したホテルではサービスの基本を、次の会社では喫茶、和食、洋食などの飲食店経営を、その次の菓子メーカーでは調理師免許を取得、洋食店経営や洋菓子の開発などで調理を学びました。そして31歳で入った会社でカフェのチェーン展開に携わりました。出世できたのは、カフェブームの後押しがあったことと、みんなが頑張ってくれた結果です」

しかし、そのカフェが有名ブランドになり、肩書も上がった時、自分が本当にやりたいことと組織の一員としての仕事が乖離してきたことに気付く。自分の原点を思い出すきっかけとなったのが、後発で出てきた中小の飲食チェーン店の存在だった。

「今の外食産業で元気があるのは後から出てきた20店舗くらいの規模の会社が多い。実際、そういうところからいくつか転職のお話もいただきましたが、組織に属してしまうと当然楽しくないことも出てきます。だから、外部のブレーンとしてそれらの企業と契約して、お手伝いさせていただく方法を選びました」

コンサルタントとしてのメニューは、飲食店の立ち上げから経営、メニュー開発、スタッフ教育、チェーン展開に関する指導と多岐にわたる。中でももっとも得意とする分野は不採算店などの立て直しだ。しかも、セミナー開催などの座学や経営者との面談だけではなく、OJTを中心とした支援・指導で現場に直接かかわっていく手法が、飲食業界では珍しいと評判になってきたという。

「飲食店が抱える問題はお店によって違うし、人によって得意不得意があるから現場に行くことが大切です。手間も時間もかかるから担当できる会社は5、6社くらいですけど、嫌な仕事をして大きく稼ぐより、そこそこ稼いで楽しく仕事をしていきます(笑)」



PROFILE

阿部 芳広さん(39歳)

1968年、愛知県生まれ。大手ホテル、百貨店子会社、菓子メーカーを経て99年、大手飲料メーカー飲食関連子会社に転職。直営店店長、SV(スーパーバイザー)、直営店グループ課長、運営企画部課長、店舗運営部長などを歴任し、2004年、取締役に就任。07年6月に退任し、08年1月、(株)プライマリーパートナーズを設立。

取材・文●山根洋士 撮影●松本朋之
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会

[ 2008.03.21 ]

営業ツールの写真

メジャーはいつでもどこでも気になったイスやテーブルの寸法を測る。メニュー開発で虫歯になりやすいため歯ミガキセットも必須

POLICY

最初に会った時に、五感で感じた印象や相性は、その後もそれほど変わらない。対人関係はリアル・コミュニケーションが大切。

HOLIDAY

前職では週休2日。今は月に4日くらい。食べ歩きや調理など、趣味の延長のような仕事なので、むしろ健康のために休む。

MONEY

金銭感覚は今も昔も変わらない。それより時間に厳しくなって予定時刻に遅れなくなったり、酒量が減った変化の方が大きい。

SATISFACTION

クライアントのお店の若い人が、自分で考えて自発的に動くようになったりして、成長したことが見えるとうれしい。