CASE56キャリアカウンセラー
“生き生きと働く”ことを支援する若者・女性・会社員のサポーター
自分らしい独立・起業を応援する本誌と同じ理念を持ち、 働く誰もが“自分らしく、生き生きと働く”ために様々な支援を行うことを生業とするのがキャリアカウンセラーの奥さんだ。会社員時代に培った人材採用や教育などの業務経験を生かし、キャリア開発プログラムの企画や研修講師などの業務を請け負っている。中でも前職のコールセンター運営会社で担当した企業内メンタルヘルス・ケア業務は、独立した現在も週3日勤務の業務委託契約を結び、継続して任務にあたっている。
「会社に勤めていたころ、社内に“ゆとり推進チーム”が発足し、私はそのメンバーとしてストレスを内にためず職場内ではき出せる研修システムの構築・運営を担当しました。組織が大きくなり従業員間のコミュニケーションが希薄になってくると、日々の何げない言動が相手の心を固くしたり、垣根を作ったりします。心の垣根を低くして心地よい交流を図るワークショップ形式の研修は、役職など関係なく自分が好きなように名札に書いた名前でお互いを呼び合い交流します。研修は想像以上に反響を呼びました」
研修が終了しても職場に戻らず、いつまでも語り合う参加者を見て、自分が手掛けている仕事の必要性が強く感じられた。しかし、組織変更により別の部門から異動してきた上司からは、その仕事の意義や取り組みを評価されることはなかった。希薄なコミュニケーションから、奥さんの心は固くなっていった。
「人のメンタルヘルス・ケアをしながら、自分の心にある不満にはフタをして我慢しながら続けました。ですが、研修を実施するたびに参加者の役に立っているという実感は強まり、もっと自分のスキルを高めて、そのスキルはここではなく求められる場所で発揮したいと考えるようになりました」
こうして、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格を取得し、2006年6月に退社。キャリアカウンセラーとしての独立準備に入った。その後、すぐに仕事の依頼が来たのは、何と退職したばかりの勤め先からだった。
「研修の参加者が増え、一緒に働いていた後輩だけでは手に負えず、経験者を探すのも困難なため、私を呼び戻すよう上司に懇願したそうです。私の功績を認めてくれている別の上司が窓口となってくれたことから業務委託の依頼を快諾し、職場に復帰しました。同じ職場、同じ仕事でも、求める人がいて評価してくれるだけで、こんなにも気持ちが違うのかと思いましたね」
会社員のメンタルヘルス・ケアのほかにも、奥さんは若者の就労・自立支援、女性の再就職支援に向けた講座やキャリア・カウンセリングなども積極的に行っている。
「特に若者たちに多い“人付き合いの苦手感”は克服できるようにしてあげたいですね。私にも高校1年生の娘がいます。娘とは一緒に料理をしたり、アーティストのコンサートに出かけたり、コミュニケーションは以前に増して密になったかな。これも自分で働き方を決められるプロワーカーのメリットですね」
PROFILE
奥 富美子さん(50歳)
1958年、埼玉県生まれ。短大を卒業後、損保の業界団体で一般事務として約7年勤務。その後、大手通信会社系システムメーカー、米国通信事業者の関連会社にて役員秘書や人事業務を経験する。出産・育児を経た後、コールセンター運営会社でコミュニケーターの教育・研修、企業内メンタルヘルス・ケアなどに従事。2007年 4月に独立する。
取材・文●岩見浩二 撮影●刑部友康
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会
[ 2008.04.04 ]

手帳カバーは毎年の気分に合わせて手作り。メールではなく手書きでお礼をしたい時に備え、数種類のハガキを用意
POLICY
同じ内容の業務を依頼された場合は、既存取引先に承諾を得てから受ける。競業でなければ依頼は断らないスタンス。
HOLIDAY
娘が高校受験を迎えた年に独立。休みを調整しやすくなったため、学校説明会や受験手続きなどにも時間を割けた。
MONEY
共働きで夫の収入もあるため、家庭との両立ができなくなるような働き方はしない。時間価値は以前より上がった。
SATISFACTION
自分の仕事によって喜ぶ人、役に立っている人がいるという影響力の大きさを知ったら、もう辞められなくなる(笑)。