CASE48営業コンサルタント
失敗から学んだノウハウで売れない時代の営業活動を応援
管理職に就き、出世街道を歩むことは、会社員の理想像のひとつ。その一方で、肩書きやポジションにこだわらず現場に残り、定年まで第一線で力を尽くしたいという人も少なくない。
28歳で日本アイ・ビー・エムに入社して以来、一貫して営業畑でキャリアを積んできた西山さんも、部長としてマネジメントに携わるかたわら、57歳までセールスの現場に立っていた。
「しかし、会社組織の将来を思えば、若い人に場を譲り、経験を積んでもらうほうがいいに決まっている。つまり、私が現役時代に培ったものを伝える場所は、社内にないと気づいたのです」
2005年末、定年を待たずに退職してまで西山さんが伝えたかったのは、セールスで味わった挫折や失敗の体験と、それを克服することで得たノウハウの数々だった。現在はプロワーカーとして、日本アイ・ビー・エムで採用されているSSM(顧客観点で設計された営業手法の標準)をベースにしたIT系営業のノウハウや、“モノが売れない時代”のセールスを応援するための、独自の研修プログラムを提供。インストラクターではなく、現役のセールスと一緒に問題解決を考えるコンサルタントであることがモットーだ。
「ご覧のとおりの人相ですから、お客様から担当を替えろといわれたり、いつも怒っている風に見られたり、いくつも挫折を味わってきました。だからこそ相手の警戒感を解き、信用を勝ち取るといった人間力や、要望や悩みを聞き出す話術やコンサル力など、知的技術を身につけてきた。これは、成功体験より普遍的で、あらゆる業界の営業に応用できると思います」
ホームページ以外に特別な広告を出さなかったこともあり、初月は売り上げゼロ。だが、「50歳を過ぎてからの起業は、儲けることより続けることが重要」と考えていた西山さんは、焦ることなく、顧客開拓や資料づくりを続けた。また、営業以外の分野でも顧客の要望に応えられるようにと、会社員時代の同僚や学生時代の後輩ら、異なる職能を持つ人材を集め連携している。
現在の取引先は、大手家電メーカーなど2社。これまでは短期研修の引き合いが主だったが、今後はIT系の営業研修で長期契約を取りたいという。
「出勤は週3、4日なので、周りからはストレスがなくなっただろうと言われますが、会社員時代もストレスなんてなかった(笑)。むしろ、自分ひとりでも会社は会社。潰したくないし、今のほうがプレッシャーは大きいかも」
団塊の世代の退職がピークを迎えた今、豊富な営業経験を武器にセカンドキャリアを志すライバルは少なくない。
「広告などで差別化をうたうより、採用してくださったお客様の満足度を高め、継続や紹介につながるような仕事をしていきたい。続けていくことによって、コンサルタントとしてのスキルを磨くことも、プロワーカーとして必要な情報力を得ることもできると思います」
PROFILE
西山 竜彦さん(60歳)
1947年、大阪府生まれ。一橋大学卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。金融機関、松下電器産業などの担当営業を経て米国アイ・ビー・エム極東本部に出向。その後も顧客担当営業、パソコン、ネットワークなどの営業部長を歴任。2006年1月に独立し、(株)プロブレイン・アソシエイツを設立。
取材・文●服部貴美子 撮影●笹木淳
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会
[ 2007.11.30 ]

IBM在職中から愛用のパソコンで資料を作成。意外にもパワーポイントの操作が苦手とか
POLICY
管理職や指導者ではなく、お客様と一緒に現場で問題に立ち向かうコンサルタントでありたい。
HOLIDAY
休日は増えたが、つい仕事のことが頭に浮かぶ。120kgのバーベルで、オフモードに切り替え!
MONEY
収入は会社員時代の約1割。成長志向ではなく、自分の力を発揮できる場を持続させるのが目標。
SATISFACTION
現役時代の苦労や失敗からの教訓を伝えられること。評価への不安がある分、喜びは大きい。