みやた・けい/東京都出身。営業マネジャー、人事部長を経て転職。上場企業関連会社を設立、社長に。人と組織の活性化に使命感を覚え起業。「私がこの世に住んだが故に、少しだけ世の中が良くなったということが認められるまでは生きていたい」が座右の銘。
2009年11月に、書籍『社長! リーダーは「1年」で育て上げろ!!』(すばる舎)を出版。社員の能力を最大限に引き出し、組織をまとめ上げるノウハウをわかりやすく伝授
小学校を卒業したらすぐに働きたいと考えていたんですよ。幼い頃から自立心は強かったですね。父親がとても厳格で、厳しくしつけられたので、子ども心に「養われている間は発言権がない」と思いまして。もちろん父には感謝していますが、当時はそんな自分の立場がイヤで、できるだけ早く起業しようと心の準備を進めていた。心身共に鍛えようと、柔道や剣道、山ごもりもしましたし。何ごともやるからには究めたいと思う性格で、自己鍛錬のために始めた格闘技で20歳の頃にプロデビュー。昼間は働き、夜は練習し、試合に臨むという生活を5年ほど続けました。しかし、練習で体を壊して格闘家としては引退。ビジネスの世界に入るには人より遅れていると感じ、また、起業するには営業力と組織構築力が必要だと考え、あえて厳しいと評判の会社に就職しました。
社内でも一番ハードといわれる営業部署を希望し、朝から深夜まで働き、営業ノウハウの早期習得に専念。ちなみに、睡眠時間は平均3時間の日々でした。そしてトップセールスを経て営業マネジャーとなり、そうやって実績を挙げてから人事部への異動願を提出。そこで人事のノウハウ、組織構築力を習得して、人事部長になるわけです。そしてその後、上場企業にスカウトされ、その子会社をゼロからつくり上げました。
科学的な視点で組織力とモチベーション向上を促す独自プログラムを提供。河口湖での研修では体感的プログラムを組み合わせたコンサルティングを実施
いわゆる"雇われ社長"でしたが、それまでに培った営業力と組織構築力で、従業員100名を超える会社に成長させました。その時に、社長業と人事統括を兼任し、経営者にとって本当に必要な人事のプロが足りないと実感したのです。人と組織の活性化をさらに究めたいと思ったので、上場企業の安定的なポジションに未練はありませんでした。自分が打ち込みたいのは「人」にかかわる仕事だという使命感を再確信し、人事に特化したビジネスでの起業を決断しました。
上場企業3社で人事部長やトップマネジメントを経験してみて、経営者視点、人事部目線で人材関連のサービスを提供してくれる企業があまりにも少ないと感じたのです。顧客ニーズを把握する力が足りず、すぐに求人広告などの媒体利用を勧めたがる。それでは社内の人に関する問題は解決できないのです。僕と同じように感じている経営者や人事担当者がいるに違いない。僕が経営者として、また人事トップとして欲しかったサービスを提供することは、必ず他社でもニーズがあるだろうと確信しました。そして、経営者視点、人事部目線での人財採用および組織活性化コンサルティングとリーダー育成を主軸に事業をスタートしたのです。
紹介が紹介を呼び、仕事の依頼は順調に増えてきました。しかし、量を増やすことよりも質を高めたいと方向修正。設立の翌年には、知人の紹介で河口湖の「自然楽校」と出合い、プロデュースをすることに。アウトドアで組織活性化やリーダー育成ができるプログラムをつくり、大自然の中でのアクションラーニング研修を提供することになりました。大自然の中に身を置くと、日常とは違う脳の活性化が起こるのです。当初は、自分が多忙でしたのでインストラクターに任せていましたが、質を高めたいとの思いから、今では自らインストラクターを務めています。それ以降、なんとリピート率は100%になりました。今、河口湖と東京を往復する多忙な生活ですが、まったく苦には感じません。
こうして振り返ると、起業すると決め、そのために必要なことは何か、自分がやるべきことを突き詰めて考え続けたことで、経験値で使命感が持てる人生のテーマに出合えたと実感します。さらにその使命感を深掘りすることで、ビジネスとして提供できるサービスの付加価値が生まれ、それが新たなサービスとなる。その循環は、すべて自分の経験から生まれるのだと思います。何ごとも究める性格なので、5年後、10年後、まったく違う事業を起こしているかもしれませんが、もちろん「人とかかわる分野」であることは変わらないでしょう。日本人ならではの素晴らしい感性を世界に提供できるような、独自のビジネスモデルをつくりたいと考えているところです。
子どもの頃から起業すると決めていました。"雇われ社長"ではなく、真に自分の手で会社を起こすことが僕にとっては重要なポイント。○○会社の宮田、○○会社の雇われ社長の宮田、ではなく、宮田がつくった○○会社にしたい。そんな思いがありました。そして、自分が使命感に燃えることができる「人」というテーマに出合い、寝食を忘れて打ち込んでも苦労に感じないことを確信し、独立を決意しました。
開業資金は298万円です。事務所開設に198万円、備品50万円、法人設立の手続きなどに50万円。ちなみに、資本金は2000万円を用意しました。
2000万円のうち、1300万円は自己資金。貯蓄を充てました。いずれ起業するつもりで準備していましたから。700万円は支援者、協力者からの出資です。後に出資分のほとんどの株式は買い戻しています。
特にありません。ずっと起業すると周囲には言っていましたので、逆に、「いつ起業するのか?」と言われていました(笑)。
一切ありませんでした。プロの格闘家を引退する時に完全に悩まなくなりました。悩むぐらいなら課題を見つけて取り組んだほうがいいですから。そして、"雇われ社長"の時に、完全に前向き思考になりました。たとえ穴に落ちたと感じても、「こんな浅い穴で良かった。これを這い上がったら、自分はさらに強くなっているはずだ」と思うようになったんです。
すべては経験です。就職したのが遅かったので、世の中のこと、ビジネス界のことを何でも吸収しようと、睡眠時間3時間の激務だった時から、異業種交流会などに積極的に参加していました。とにかく情報を得ようと。現在は、量より質を追求しています。
相談はしません。母からは幾度も節目節目で「相談してほしかった」と言われましたが、心配させるぐらいなら言わないほうがいいですから。相談というよりも聞いてもらうという意味では、起業家や経営者支援を生業としている人たちに話すくらいです。
どんなことも困難や苦労と思えない性格なので、困ったことはひとつもないです(笑)。あえて挙げるなら、40歳になった時に、自分をどこまで追い込めるか、1時間睡眠でどこまで持つのか試してみたことでしょうか。3、4カ月続けましたが、運転中に意識がもうろうとなり、対向車と何度かぶつかりそうになったんです。3度目の時に、これはやめようと。とにかく自分で経験しないと気が済まない性格なので。でも、実験した結果、「1時間睡眠は無理」と人に言えるわけですから試してみて良かったです。
起業がここまで自分を成長させてくれるとは思いませんでした。自分が取り組むべきものに邁進できる。これが何より人間にとっては幸せなことだと身をもって実感しています。
使命感を感じられる仕事を見つけることです。そのためには、まず自分を追い込んでみる。経験しないと見つかりませんし、経験を重ねることで感性は磨かれていきますから。それと、相手や周囲に不平不満があるならば、それらを変えることよりも、自分自身を変えることに努めるべきだと思います。何でも挑戦し、実体験してみることです。やってみないとわかりません。実行してみて、違和感を覚えたら変更すればいい。自分が変わること、自分を追い込むことに、年齢制限はありませんから。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報