ながしば・みえ/埼玉県出身。子育てをしながらネットショップを運営していた頃、仕事仲間に得意な片付けのノウハウをアドバイスするうち事業化を決意。収納コンサルタント、商材開発、セミナー講師などで活躍中。整理収納アドバイザー1級。
DIYも得意で、市販のスノコをカスタマイズして壁面ディスプレーに。発明学会にも所属し、企画から試作品づくりまで製造工程を経験していることも大きな強みに
"お片付け"と"ものづくり"が子どもの頃から好きで、小学2年生の時にはすでに、自分の机の引き出しの中に仕切りをつくって、文房具を細かく分別していた記憶があります。でもまさか、収納事業で起業するとは思ってもいませんでした。実家が商売をしていたので、商いの大変さも知っていたせいか、お勤めがしたいとずっと思っていたんです。性格がサバサバして男っぽいので(笑)、ガソリンスタンド運営を主とする車関連事業会社に就職。ここで約3年、事務業務、接客、技術、経営企画など様々な仕事に携わり、ビジネスの面白さをもっと味わいたいと思うように。ちょうど営業所主任になる寸前に、父が地元のショッピングモールに飲食店を開業。私に「運営をやってみないか」と。父も私も飲食業はまったくの素人でしたが、思い切って退職して挑戦しました。店づくり、人材教育、サービスの構築など、経営の醍醐味と大変さも体感しました。13年間運営しましたが、そのモール自体の魅力がなくなり、撤退。
ちょうど3人目の子どもが生まれた時でした。親族に「新事業としてネットショップを始めたい。協力してほしい」と言ったのです。パソコン操作は苦手でしたが、ゼロから始めて軌道に乗せた飲食店経営の経験とノウハウがきっと生かせると思ったので。ネットの接続法すら知らなかったのに(笑)。
ネットショップ運営の経験から、個人オフィス・自宅オフィスの収納アイデアも多彩。見た目の美しさはもちろん、利便性・機能性を重視したノウハウが豊富
パソコン用語の暗記から始め、猛勉強してイチから立ち上げました。ショップ運営そのものは楽しかったですし、売り上げも満足のいく数字になりましたが、どうしてもパソコン操作が好きになれなくて。子ども3人の育児をしながらなので、睡眠時間は毎日3時間。気分転換に大好きな掃除をして、頭をスッキリさせて、また仕事に取り組むという毎日でした。事業の参考になればと様々なビジネス書を読んでいた時、「ビジネスを起こすなら、自分が好きなこと、いくら時間を要しても飽きないこと、寝る時間を惜しんでもやりたいことが強い」と書いてあったんです。「その条件にぴったりなのは収納。そんなもの仕事にならないし」と、その時は本を投げ出したのですが。この時に「収納で起業できたら」という思いが無意識にインプットされたのかもしれません。
ちょうどその頃、同業者仲間が「仕事が忙しくて部屋の中がめちゃくちゃ」とぼやいているのを聞いて、得意なDIYで簡単につくれる収納アイテムを教えたり、簡単に片付く方法をアドバイスするようになったんです。また、「整理収納に苦労している」「誰か代わりに片付けてほしい」という要望が多いことを知りました。もしや本当に、自分が好きな収納を仕事にできる?と思い始めたんです。事業化するからには本気でもっと極めたいと思い、3年半続けたネットショップ運営から完全に手を引き、収納に何かしら関連するのではと不動産会社に転職。当時はまだ収納アドバイザーという職種自体、社会的な認知度も低かったので、"二足のわらじ"でスタートしました。
整理収納というのは、ただ単に部屋の中をきれいに整えるだけでなく、片付けることで無意識に思考する、気持ちまでもリフレッシュする心理的な効果があります。自分の創意工夫でキレイになって、ものがパッと見分けられて、掃除もしやすいって、日常生活が楽しくなるでしょう。私はそれもぜひ伝えたいと思っていました。アドバイザーやコンサルタントというと、一方的にノウハウを教える先生のような位置付けになってしまう。自分に適した、オンリーワンの呼び方はないかと考えました。そして、心理的なプラス効果も提供し、共に考えて一緒に改善していく「収納ドクター」というネーミングを思い付きました。
その頃にはホームページを自作できるまでになっていたので、サイトを中心にセミナーなどの告知をし、手探りの状態で始動。スキルアップを図るため、2006年12月に整理収納アドバイザー1級を、2年後に整理収納アドバイザー2級認定講師免許を、翌年にはファイリングデザイナー2級を取得。ネットショップ時代の仲間から徐々にクチコミで広がり、個人宅や企業からのオファーもいただくようになりました。会社勤めと収納ドクターの両立を4年間続けましたが、依頼が増え、このままでは体力的に持たないと思い、長男の就職と長女の高校入学を待って不動産会社を退職。今春からは、収納ドクター一本に専念です。子どもたちはずっと働いてきた母親の姿を見ていますし、仕事も育児も妥協しない厳しさもよ?く知っています。反抗期には、取っ組み合いをしたこともありました(笑)。その私が、一本に絞ったのですから、本気度は十二分に伝わっているはず。今年は著書の出版、近い将来に法人化も計画しています。いつか私が死んだ後にでも、「母ちゃんにはかなわない」と言ってもらえるよう、これからも子どもたちの見本となり、母親業と収納ドクターを全力で頑張っていきます。
物心ついた時から"お片づけ"が得意でした。既製の道具や材料を利用して、整理収納グッズをつくるのも好きだったのです。お片づけが得意、キレイ好きというのは、必要なものがなかなか見つからないことが嫌ということなんですよね。「仕事が忙しくて片付けできずに困っている」というネットショップの経営者仲間が意外と多く、何人かに整理収納のアドバイスをしたら、それがとても好評で。自分の得意分野で、好きなことで、人にも喜ばれる仕事だと感じ、起業を決意しました。
開業資金は特にありません。資料などを作成するためのパソコンも持っていましたし、ホームページも自作です。
開業資金はゼロなので、集める必要がありませんでした。
ネットショップの経営者仲間や、知り合いの経営コンサルタントの方からも、「それは本当にビジネスになるの?」と心配されました。でも、当時はパソコン操作が本当に嫌いで、業務自体がつらくて、つらくて(笑)。周囲もそんな私の現状を知っていたせいか、最終的に、好きな収納ビジネスに転向することを応援してくれました。
好きなことをビジネスにしたら、嫌いになってしまうのではと不安でしたが、杞憂でした。好きなことだからこそ、もっと極めたい、もっと自分の知識やスキルを身に付けたいと強く思えるんですね。どんな苦労も苦労とは思わない。それに、「これがやりたい!」と自分の思いを発信していると、周囲からいい情報や知恵もいただける。特定非営利活動法人ハウスキーピング協会の存在を教えてくれたのも知人です。起業後に、整理収納アドバイザー1級免許などを取得。資格を取得したことが自信にもなりましたし、対企業とのビジネスの場でも信用につながっていると思います。
ネットショップを立ち上げた時に必死でIT関連の技術やマーケティングを勉強し、実務経験を積んだことが役立っています。それと、経営者仲間との交流の場も貴重な情報源です。収納ドクターとして独立するまで紆余曲折ありましたが、これまでの職場・職務を通じた経験は、すべて今の自分になるためには必要なことであり、どれも財産になったといえます。
ネットショップ運営時に知り合った経営者仲間です。様々なキャリアを積んできた経営者なので、ビジネスの観点から鋭い意見をしてくれるありがたい存在です。起業当時に何人かにモニターになってもらいましたし、今でもクチコミで私の宣伝もしてくれています。
どんな苦しい状況でも、あまり窮地とは思わない性格なので(笑)、困った記憶がありません。あえて挙げるとしたら、企業と収納商材を共同開発した時のことです。企画段階で様々な収納アイデアを提案したのですが、その時には何も契約書を交わしていませんでした。アイデアというものは目には見えない価値なので、提案しただけで終わり、になりかねません。企画やアイデアも商品であるという自覚をまずは私自身が持たないといけないと反省しました。
得意なこと、好きなことで起業すると、こうも楽しいのかと実感しています。ネットショップを運営していた時は、パソコンの知識や技術を習得した後も、まったく好きになれなかったですから(笑)。ですが、収納ドクターは、体力的に厳しい時でも苦労も苦労と思わない。得意であり好きという分野であることが、こんなにも大きな力になるのかと改めて感じています。知り合いからは、「好きなことを仕事にすると、こうも人間は変わるのか、輝くものなのか!」と驚かれています(笑)。
失敗を怖がっていたら、何も始まりません。たとえ失敗しても、世の中の大勢の人たちからすれば、ひとつやふたつの失敗なんて誰も知らないし、気にもしていませんから。成功しても失敗しても、何をしても意見してくる人は必ずいます。前向きな意見なら参考にすればいいし、単なる批判的な意見ならば気にせず、思い切ってチャレンジしてほしいと思います。事前に情報を得て知識を増やすことももちろん大切ですが、頭で理解することよりも、身をもって体験したほうが理解スピードは断然速いと思うんです。また、どんな経験からも学んで、何かしら今後に生かすという前向きな気持ちも大切。すべては、自分次第だと思います。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報