先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


池田早苗さんの写真

異業種連携で仕事の幅を広げる
カラーの専門家

Le bijou(ル・ビジュ)/大阪府泉大津市
池田 早苗さん(41歳)

いけだ・さなえ/大阪府出身。短大卒業後に就職した会社で事務系の仕事に従事。29歳、“変わらない自分”に気づき、カラーコーディネートを学ぶスクールに入学。2002年6月、自宅でカラースクールを開業。同年12月、地元・泉大津市にてサロンをオープン。

独立準備のがんばりどころ

腰掛けのつもりで勤めた会社に9年。変化のない自分に愕然として、退職を決意

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自身のサロンのほか、地元・泉大津市の市民ホール、大阪府内の公共施設などでも各種講座を展開。「大人の女性のためのカラーレッスン」では、表情や歩き方のアドバイスも

20代の初め、短大を卒業した頃、独立することなど、まるで考えていませんでした。短大に進学したのも親の勧めで、卒業したら少し働いて、その後、お嫁に行くための準備をする。そんな感覚でしたから。そもそも自分でやりたいことで独立・開業を目指す女性がたくさんいるなんて、まったく知りませんでしたよ(笑)。卒業後は親の知り合いの紹介で就職。当然ですが、腰掛け感覚でした。ところが、その会社には9年間もお世話になることに。9年目、ちょうどその年で30歳になるという時でした。ふと、「あれ? 私って、勤め始めた頃と何も変わっていない」と、急に不安に。その時、5年後の自分を想像しても、このままだと同じまま……。

なぜそう思うのかと考えてみたら、「私は、仕事で認められたことがあるだろうか」「急に私が辞めても、私の代わりなんてたくさんいるんじゃないか」って。そんな気持ちのまま働き続けるのが嫌だったので、社長に直接相談してみたのです。社長はとても理解のある方で、「何か勉強したいのか? 夜間の学校に通いたいなら、必ず定時で仕事が終わるようにすればいい」と言ってくれました。でも、「じゃあ私は何がしたいの?」と自分に問うてみても、「コレだ」というものはなかったんです。ただ、子どもの頃からインテリアをあれこれ考えることが好きで、住宅のチラシ広告にある間取り図は、私の格好の遊び道具でした。その間取りに合いそうな家具やファシリティをイメージしてみたり。そこで、試しにインテリアスクールの説明会に出かけてみました。ところが、授業料が想像以上に高額で、しかも授業そのものがとても厳しそう。そこまで意識が高くなかった私にはムリと。でも、その説明会で知ったのが、インテリア関連職種全般の中で、色、カラーの専門家がいるということでした。

まず、スクールの講師としてスタートし、サロン開設後も企業との提携で仕事を確保

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カラーチャート、カラーボトル、色エンピツなどを使って、それぞれが目指したいイメージを探る講座も。さらに、似合う色を受講生同士が客観的に選び合って意見交換。素敵度、生き生き度をアップ

その後、カラーコーディネーターを養成するスクールに通いました。それまでの私は、ファッションにしても、センスのいい友人の真似をするだけ。「色の選び方しだいで、一人一人がとても素敵に見える」。それがわかった時は衝撃的でした。それからは自分に似合う色はどんな色かと真剣に考えるようになり、その色を身に着けている自分を、今まで以上に肯定的に見られるようになりました。そして、スクールに通っている途中で、「講師を経験してみないか」と声をかけていただいたんです。卒業後は、そのまま、スクールで講師の仕事を続けていたのですが、2002年の6月、自宅の一室をサロンにして、自らスクールを開設することに。

さらにその半年後、自宅の近くに部屋を借りて、独立したサロンを立ち上げました。といっても、ちょっと不純な動機からです。実は、同じスクール出身の講師仲間が、その少し前にマンションの一室を借りて独立したサロンをオープン。そうしたらスクールの担当者が、彼女にたくさんの仕事を紹介したんですね。それで、「えっ、サロンを持つことで仕事が増えるなら」と、私もサロンのための物件を借りることに。でもやはり、ことはそう簡単には運ばないもの。どんどん仕事が増えるということにはならなかったです。そんなこともあって、ちょっと気持ちが焦り気味だった時に、知り合いづてに、とある結婚式場と提携している企業から委託されるかたちで、ブライダルスタイリストとしてカラーコーディネートに携わることに。そんな流れに任せて不定期ですが、サロンや地元の公的なホールなどで開催される市民講座の講師と並行させながら、漫然と仕事を続けていました。

異業種の起業家仲間とのつながりを大切にして、共に発展していきたい!

「とにかく仕事の数が増えれば」と思っていましたが、それは間違っていると考えるようになりました。実は、カラーコーディネートの世界は、まださほど世間に知られていないということもあり、講師間で仕事を奪い合うことが多々あります。そのような競争にさらされる中で、私も「とにかく数をこなそう」と。そして、「安定した収入さえ得られれば」と。そこに気を取られていたのです。そこで、少しゆっくりと、カラーに関することで私にしかできないことを追求してみようと。安定収入としてはありがたかったブライダル会社との提携を、思い切ってやめることにしました。さらに、カラーの世界だけで行動していても何も始まらないと、異業種交流会にも参加してみることに。そのひとつが、「起業支援ネットワークNICe」です。今まで出会うことのなかった業種の方たちからカラーに関する要望を聞かせていただいたり、目からウロコなことばかり。たとえば、起業家として信頼され、好感を持たれるために、仕事の内容や出かけていく場所によって、スーツやネクタイをこと細かく使い分けている方が多いんです。その方に話を聞かせていただいていると、「カラーコーディネーターの私より真剣に考えているし、センス抜群!」。それまで、私が講師を行う対象は女性ばかりでしたが、「男性も大いに需要がありそうだ」「近いうちに企画してみよう」と、仕事の幅を広げる可能性がどんどん見えてきましたね。

さらに、今年になって、運が回ってきたようで……。地元の泉大津市から、市立病院の地域周産期母子医療センターの開設に当たり、センター内のカラーコーディネートを全面的に引き受けてほしいと。多少の不安はありましたが、「ここにもまた、新たな仕事が展開できる可能性あり!」と、目の前がパーッと開けてきました。つい最近、その竣工式に参加してきたばかりですが、後に残る仕事をしたということもあり、いまだかつてない喜びをかみしめました。「自分がやりたいことを見つけて、独立しました」と胸を張って言えるのは、自分が歩むべき道をしっかりと考えるようになった昨年の秋以降です。今後は、異業種間の提携や連携による仕事をどんどん展開していく予定です。現在、様々なアイデアを温め中。カラーの世界だけだと気づきにくいですが、異業種間の交流が、いかに重要かということ。といっても、私だけが喜ぶのではなく、出会った仲間たちのそれぞれが共に発展していけることが私の願いであり目標といえますね。

取材・文 / 田村 康子 撮影 / 宮田 昌彦

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    とにかく、会社員のままだと自分は何も変わらない。輝くことができないのではないかと。私の独立は、そんな焦りから始まったといえますね。カラーコーディネートのスクールに通った後、そのスクールからの仕事を引き受けつつ自宅サロンをオープンしたのですが、その時は、ごく軽い気持ちでした。その後、近くのマンションの一室にサロンを移したものの、その時はまだ独立したという実感がなかったことは確かです。去年の11月に一念発起。現在、サロンを駅からすぐの利用してもらいやすい場所に移転しました。気持ちのうえで完全に独立しましたと胸を張って言えるのは、その時ですね。

  • 開業資金は?

    自宅でスクールをオープンした時は、大きな出費はありませんでした。半年後、マンションの一室を借りて独立したサロンを持った際の開業資金は、合計で約50万円です。物件取得費に約30万円、家具や什器などの備品購入費が約20万円です。

  • 開業資金はどう集めた?

    会社員時代から貯めていた貯蓄でまかないました。

  • 周囲の反応は?

    家族、特に母にはどんなことでも話をしている私ですが、母からの反対はまったくなかったですね。ところが友人は、「だいたい、カラースクールって何するん? 仕事になるん? そんなこと、やめときー!」と大反対。一方、私の気持ちは「逃したくないチャンス! 絶対にやる!」と、強い決意を抱いていました。なので、独立をあきらめようと思ったことは一度もありません。

  • 不安だったことは?

    最初は運良く、自分が通っていたスクールから仕事をいただけたのですが、サロン用物件を借りてスタートした時、「ここの家賃も払って、ちゃんと自分の収入も得て、安定してやっていけるだろうか」という不安がありました。でも、たまたま仕事関係で出会った方から講師の依頼が舞い込むなど、開業当初は運に恵まれていた感じです。それ以来ちょっと不安定な時期があっても、「大丈夫! なんとかなる! 私はめっちゃ運がいいはず!」と言い聞かせて、苦しい時を乗り切るようにしています(笑)。

  • 役立った情報源は?

    私、情報に貪欲じゃないんです(笑)。「カラーを学びたい人は、どんなことが知りたいのか?」と考えるのは、「カラーなんてどうでもいい」という意見を聞いた時です。「そうか、そうなのか!」、「なぜ、そう思うのか?」と。そういう人がいる、それもけっこう大勢いるということ自体が、そもそも貴重な情報だと感じています。「じゃあ、必要と思ってもらうためには、どうすればいいのか」と考え始めた時、いろいろな意見を聞いて回りますね。パソコンが得意でないので、インターネットで情報を収集することはあまりなくて、仲のいい女友だちに聞きまくっています。

  • 相談相手は?

    最近、異業種交流会やセミナーなどで知り合った起業家の先輩に相談することが多いですが、身近な一番の相談相手は学生時代の女性の友人です。立ち止まってしまうようなことがあると、その晩、友人がくつろいでいる頃を見計らって、「聞いて聞いて!」と電話。時には、日中に連絡して、「今晩も、お願いできますでしょうか?」と(笑)。それだけで、「また何か相談か、泣きごとの聞き役か」と、すぐわかってくれるみたいです。申し訳ないと思いつつ、また頼っちゃうんです。

  • 独立して一番困ったことは?

    顧客をいかに増やすか。これが開業時、一番心配でした。でも、仕事が仕事を呼んで、あるいは知り合った方たちが仕事を紹介してくれて、順風満帆とはいえませんが何とか続けることができています。また、「こんなことでいいのか?」と、今でも頭を悩ませているのはパソコンの扱いが苦手ということ。最近も、新しいパソコンを買ったのですが、以前使っていたものと少し使い方が違うだけでアタフタ。ものすごいストレスを感じてしまうんですよね。それと、ブログを引っ越したのですが、乗り換えたほうのブログの利用方法がよくわからなくて……。誰か助けて!

  • 独立して一番良かったことは?

    会社員時代には味わえなかった解放感でしょうか。自己責任は付きものですけど。やればやっただけ、プラスもマイナスも返ってきますから。それが自分には合っていると。あとは、独立したことでいろいろな人に出会えるチャンスが格段に増えたことが嬉しいですね。たとえば、起業している先輩、好きなことで仕事をしている仲間たちの集まりで出会う方たち、教室に通ってくれる生徒さんたちなど。「出会いって、無限なんだ」と。独立してから初めて実感できたことです。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    まず、今の自分が本当に楽しいかどうか、それを自問自答してみてください。それで、仕事が楽しくないと思っていて、「実はやりたいことがある!」という方は、ぜひそれを実現するための第一歩を踏み出してください。要するに、「やりたいことがあるなら準備を始めてみよう」ということです。今を捨てる不安は大きいかもしれませんが、不安なんていつでも付いて回るもの。その不安を軽減するためにも、いざという時に、「助けて!」と相談できる親友など、人とのつながりも大切にしてほしいですね。よく、起業家は弱みを見せてはいけないと言われますが、弱みを見せるのと、正直な気持ちを表現するのとは違います。強い人には誰も手を差し伸べませんが、「助けて」と言えば、救ってくれる人はたくさん現れます。助けてもらうためには、自分自身が大切にしたいと思っている人を心から信頼することが大事だと思います。

開業
2002年6月

開業資金
50万円

従業員数
1人

年間売上高
非公開

アクセス
http://www.le-bijou.jp/index.htm


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