たかやなぎ・かずこ/埼玉県出身。結婚後、家業である鋳物製造会社を手伝いながら、無添加の食材販売でハーブに出合い、とりこになる。楽器、書籍などの営業職を経験し、独立。親の介護と両立しながらハーブ&アロマライフを楽しむ。
手軽に楽しく学べるようにと、長野県・蓼科のハーブ畑で摘んできたハーブをボックス型のドライフラワーづくりに活用。今後の講習会で活用することを考案中
出産を経験し、専業主婦として、家族のためにいつもおいしくて体に良い食事をつくりたいと思っていたんです。それで無添加の冷凍食材の宅配を活用し始めた時に、ハーブに出合い、ハマりました。今度は自分が業務委託でその冷凍食材や健康食品を売る立場になって、自宅に友人などを招き、その食材を使って試食会を開き、希望者に販売していたんです。料理も大好きでしたし、気に入っている商品を勧められるわけですから、幸福感のある仕事でした。フルタイムの仕事に復帰した後も、ハーブやアロマなどの勉強を続け、本格的なハーブのスクールにも通いました。当時はまだ独立という意識はなかったですが、とにかく植物の力について学びたい一心だったと思います。
転機となったのは義父が末期がんと診断されたこと。余命1カ月で緩和ケアの段階だと診断されたんです。でも、そう簡単にお父さんを死なせるわけにはいかないと、あらゆる民間療法を試しました。その中でお父さんが一番喜んでくれたのが、ハーブによるフットバスやアロマオイルによるトリートメント(施術)だったんです。結果的に9カ月で逝きましたが、義父が喜んでくれた顔を思い出すたびに、ふつふつと使命感のようなものが湧いてきたんです。家は代々鋳物製造会社を経営しており、夫が継いでいます。そこでまずは、その会社の社内ベンチャーのようなかたちで、ハーバル部門をつくって事業をスタート。自社の一室で始めることにしたんです。
植物の香りいっぱいの自宅兼オフィスで、アロマやハーブの講習会を開くことも。クリスマスの時季には、ご近所の常連さんとリースの講習会も実施する
ハーブやアロマオイルの仕入れ先は、見本市などに参加して見つけていきました。チラシをパソコンで自作して、自宅兼オフィスの前に置いて近所の人たちにアピール。長く住んでいる場所ですし、食材の自宅販売やPTA参加などで培った地元ネットワークもありますから、そういった方々に向けて情報発信していきました。アロマテラピーサロンとして施術も行っていたのですが、ハーブに関しては好意的なご近所の方々も、アロマとなると土地柄なのか認知度が低いのか、思うように集客できなくて。またその後、母の介護などが重なり、サロンは閉鎖しました。
そんな時に、女性労働協会の「女性と仕事の未来館」で起業セミナーが開催されていることを知り、参加。自分のスキルの再確認や発想転換の大切さなどを学びました。セミナー講師との面談では、自分は使命感を持って今の事業に取り組んでいるのだと再認識することができ、勇気が出てきましたね。このセミナーに参加してホント良かったと思っています。そこで、夫の会社の一部門ではなく、自分自身の力で再出発することを決意。その昔、子どもたちに絵本の読み聞かせをしていた時の活動名「シャルロッテ」を冠に掲げ、ブランド化することに。そんなビジネスヒントを教えてくれたのも、セミナーの先生です。さらに、ブランド化に必要となるリーフレット制作会社も紹介してもらいました。
営業職をしていた時、楽器や書籍など自分が好きで誇りを持ってお勧めできるものを売っていたので、お客さまに断られてもまったくつらくなかったんですね。今、行っているハーブやアロマの事業も同じ。思えば、私は昔から仕事に使命感を求めていたのだと思います。好きで好きで、勉強し続けてきた世界ですから、ハーブとアロマの様々な使用法について幅広く講習することは誰にも負けないと自負しています。その知識を生かして販売と講師に絞って活動中です。最近では、交流会やセミナーで出会った異業種の講師とコラボレーションするなど、これまでにない付加価値のある講習会を開催しています。
いつか田舎のロッジのような場所で、ハーブを学べる場所をつくりたいと思っています。人は空気豊かな場所に行くだけで癒されますからね。都会の閉鎖的な空間で自然の力を学ぶのではなく、自然豊かな場所に行って、新鮮な空気を楽しみながら学べる場を提供したいんです。ちょうど長野県・蓼科で借りているハーブ畑の苗がうまく育つ2年後あたりには、かたちにできるんじゃないかと。今、ワクワクしながらアイデアを練っています。
時間を切り売りする時間給の仕事に抵抗感があり、営業職など自分の働きの成果を評価してくれる仕事を選んできました。そういった意味では、独立向きだったのかもしれません。独立のきっかけは、義父が末期がんと診断され、アロマオイルを使ったトリートメント(施術)を施したことです。義父が逝った後も喜んでくれたことが忘れられなくて。そこで、自分が勉強してきたハーブやアロマの知識や経験をもっと多くの人たちのために役立てたいと、独立を決意しました。
最初は家業の社内ベンチャーのかたちでスタートさせました。この時は、仕入れ用の自動車購入費が100万円、備品購入が40万円、ハーブやオイルなどの仕入れ費用が60万円。合計で200万円ですね。ちなみに再出発の際に再び費用をかけています。その費用は合計で70万円。備品購入が15万円、仕入れ費用が55万円です。
社内ベンチャーのかたちで始めているので、当初は、鋳物製造会社として得た利益を充てさせてもらいました。シャルロッテとして再出発した時も、それまでのハーバル部門の利益を資金に充てています。
友人に独立したことを話したら非常に喜んでくれましたし、娘たちは宣伝担当としてスタート時から応援してくれています。経営に悩んでいた頃、アロマセラピストの資格取得でお世話になった先生から、「埼玉県川口市という地域の特色からいって、サロンは厳しいので講師一本で続けてはどうか」と提案されたんです。確かに集客が厳しかったため、その後、講師と販売だけに事業内容を絞りました。
自社が拠点で家賃が発生しないため、売り上げに関する心配はそれほどありませんでした。ただ、アロマセラピーの施術者はお客さまの疲れなど、負のエネルギーをもらい受けてしまうこともあるためです。なので、自分の体調が一番の心配でしたね。
専門誌や書籍をフル活用しました。ハーブや植物療法、アロマセラピーに関する書物は、とにかくたくさん読んでいましたし、今でも役に立っています。また、関連するセミナーや講演、シンポジウムにも足繁く通いました。
現在、顧問をしてくださっている税理士さんでしょうか。税務や保険に関することのほか、ビジネスに関するアドバイスをもらっています。埼玉県の地域性もよくわかっている方なので、マーケティングのヒントにもなっていますね。
体調を崩してしまったことです。ひとりでやっているので、自分ができない状態だとどうしようもなくて。いっそ入院でもしてしまえば、「いったん休憩!」と割り切れるのですが、中途半端な体調の崩し方で(笑)。グズグズと仕事をしてしまっていた時期がありました。あの頃はとてもつらかったですね。
頑張っている仕入れ先の業者さんや異業種の経営者との出会いなど、人間関係に広がりができたことです。ひとつの出会いが新しい出会いにつながって、コラボレーションできる仕事が生まれたりして。自分の仕事の幅も広くなりました。
使命感って大切なんじゃないかなと思います。私は義父をアロマで喜ばせたことから、「もっと多くの人を喜ばせたい」「健康を届けたい」という強い気持ちが生まれたわけですが、使命感は事業を続ける礎になると思います。「何のために自分はこれをしているのか」という理由が明確にあると、人は続けられるんですよね。また、相談できる相手を見つけたり、セミナーなどに参加して知識を増やし続けることも大切。支えてくれる人を自分でつくっていくことです。一見、仕事には関係なさそうな集まりでも参加してみると、意外にいい出会いがあるものですよ。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報