先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


豪さんの写真

キャリアアップに貢献する
留学サポート会社

株式会社diBec(ディーベック)/仙台市青葉区
多田 克士さん(42歳)

ただ・かつし/石川県出身。高校卒業後、ホテルに勤務。バーテンダーやギャルソンなどを経験した後、アメリカに留学。大学院修了後、企業内通訳として2年間働く。1998年に帰国し、留学カウンセラーとして企業に6年間勤め、独立を果たす。

独立準備のがんばりどころ

地方都市に絞って、事業の拠点となるエリアをリサーチ

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インキュベーション施設内の会議室を利用し、英語力アップの授業を実施。少人数のディスカッション形式で行っており、多田さん自身が講師を務めることも

起業準備に1年間をかけ、まずはどの土地で起業するかを考えました。競合の多い大都市よりも地方が有利だろうと、地元・金沢市での起業も検討したのですが、市場規模があまりにも小さい。そこで別の地方都市で始めようと、仙台市、神戸市、福岡市を候補に。マーケットリサーチのために、最初に訪れたのが仙台市でした。

ウィークリーマンションを借り、宮城県庁で世帯数や大学進学率などを調査。駅前で高校生にアンケート調査も行いましたよ。100人くらいにヒヤリングしたでしょうか。「留学してみたいですか?」と聞くと、6、7割は「行ってみたい」と。開拓しがいのある土地だという実感が高かったんです。それに東京のマーケットも意識すると新幹線で2時間というアクセスの良さもありましたし、東北全体で考えた時に一番大きな都市であることも後押しに。結局、神戸市や福岡市をリサーチすることなく、仙台市に来て2週間でここを拠点に勝負することを決めていました。

起業家向けセミナーに参加することで、ビジネスを学び、人脈を培う

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仙台駅前というアクセスの良さにこだわって入居した開放的なオフィスには、学校帰りの高校生たちが自由に英語の勉強に来て、プチ英会話スクールに発展!

仙台市で起業すると決めたとはいえ、知り合いは皆無の見知らぬ土地。おまけに経営について何も勉強していませんでしたから、まずは情報収集だと。そこで、宮城県のホームページで知った、みやぎ産業振興機構が開催する「起業家育成塾」に通うことにしました。起業の心構えから、ビジネスプランの策定、最後は事業内容のプレゼンテーションまで行うカリキュラムでしたが、本当にこの講座に参加しておいて良かった。ここで学んだビジネスプランの策定やプレゼンの技術は、インキュベーション施設に入居する際や、起業後に参加したビジネスプランコンテストで大いに役立ちましたから。それに、講師や同じ志を持つ受講者など仙台市内の人脈も培うことができました。

そして、仙台市産業振興事業団が募集していた新規創業者向けのインキュベーション施設「Nestせんだい」(現在は閉鎖)に応募。ここは保証金が不要で家賃も格安。立地も仙台駅前とアクセスも良く、仙台のランドマークタワー的な存在でした。信用力も高く、起業したばかりの仲間も多いため情報交換もしやすいと考えたのです。そして入居が決まった翌月に法人化しました。

物件取得費を抑えた分、宣伝・広告費に資金投入!

オフィスや教室などの物件取得費を抑えた分、広告・宣伝費に資金をかけています。インターネットで留学に関する情報を検索する人が多いですし、事業柄、高校などへの営業活動にも注力しなければいけません。そこで用意した開業資金のほとんどはWebサイトとパンフレットづくりに費やしました。高校への営業が奏功し、最近は留学を希望する高校生向けの英語授業をオンラインで行うサービスも始めています。

現在は、同じビル内にあるベンチャー企業向けインキュベーション施設「起業育成室」に移転。2008年2月には東京支社を開設し、さらに大阪支社の開設に向けて準備しているところです。仙台市を拠点に全国に事業を広げていき、ゆくゆくは世界の大学に進学できる中・高一貫校をつくりたいと思っています。この留学&キャリアサポート事業を継続することで、日本と世界のかけ橋を担う人材を育てる。どう、いいでしょ?

取材・文 / 石田 恵海 撮影 / 佐藤 修

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    ホテルに勤めていた時も、アメリカで企業内通訳をしていた時も「これは自分にとって、一生続ける仕事ではない」と考えていました。ところが、アメリカから帰国して留学カウンセラーとして勤務し始めた瞬間に、「これだ!」と。自分が海外に留学した経験が、仕事をとおしてすべてお客さまの役に立つ。人の役に立つ仕事という実感を初めて持つことができたんです。6年間、一所懸命働き続け、現場も任されていました。でも、自分の力でやってみたい、どれだけできるのかトライしてみたいという挑戦心がわいてきて。ひとりでも多くの人が「本当にやりたいことを見つけられる留学」を応援したいと思い、起業の道を選びました。

  • 開業資金は?

    500万円です。海外への視察交通費などで50万円。パンフレットやWebサイト制作費で150万円。残りの300万円を資本金(現在は増資)にして、運転資金に回しました。

  • 開業資金はどう集めた?

    留学カウンセラーとして6年間働いて貯めた貯蓄です。

  • 周囲の反応は?

    独立前に勤務していた会社では、現場をすべて僕が仕切っていたので、周囲は「なんでわざわざ辞めて、同じ事業を立ち上げるの?」という感じでした。身内にいたっては大反対! 周囲に留学した人もいないですし、会社を立ち上げた人もいなかったので、ピンとこないところもあったみたいで。反対したところで、どうせ僕はやるとわかっていたので、止められることはありませんでしたが、ずいぶん心配かけたようですね。

  • 不安だったことは?

    不安だったので、起業家育成塾を受講したり、アンケートを取ったりしたんだと思うんですけど、それ以外はなかったかなぁ。むしろ、ワクワクしてましたね。

  • 役立った情報源は?

    県庁や文部科学省、日米教育委員会などが発表しているデータでしょうか。たとえば、大学進学率や留学数の推移といったものです。市場規模を測る際の目安になりました。

  • 相談相手は?

    起業家育成塾の講師や受講者仲間。それと、インキュベーション施設「ネスト仙台」のインキュベーションマネジャーや入居仲間など、たくさん! 集客方法のアドバイスを受けたり、ビジネスプランを聞いてもらったりしました。今でもそのつながりは大切にしていますよ。

  • 独立して一番困ったことは?

    独立前にイメージしたようなスピードで事業が伸びていないということでしょうか。あとは自分ひとりで事業はできないので、人材が命。今も人を育てる難しさを実感していますね。

  • 独立して一番良かったことは?

    「本当にやりたいことを見つけるために留学したい」という前向きな子どもたちと出会えることですね。多少なりとも自分は人の役に立てているのかな、という実感が持てることも大きな喜びです。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    僕は、いつか「あの時、起業しておけば……」と後悔するのがイヤだったんで、起業しました。「あの時……」と後悔したくないのなら、一歩前に進むしかないですよ。とはいえ、思いだけで起業してもうまくいきません。事業を客観的に見ることが大事です。だからこそ準備を怠らないこと! カンペキな準備はもちろん無理。でも自分が事業を行いたい市場の全体像をつかみ、目標をつくり、そして目標を達成するには何が必要かリサーチすることは、必要不可欠だと思いますね。頭でっかちは良くないですが、できるだけ不安要素を取り除いて事業を始めることが大切ではないでしょうか。

設立
2006年1月

資本金
420万円

従業員数
10人

年間売上高
2500万円(2009年3月見込み)

アクセス
http://www.dibec.co.jp/


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