先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


川野真理子さんの写真

起業家が集い、
人と知恵と食がつながるサロン

リーダーズサロンなみへい(ニュープラネット合同会社)
/東京都中央区
川野真理子さん(52歳)

かわの・まりこ/パソコンインストラクターなどを経て、1998年、起業家ネットワーク「キープラネット」を発足(2002年5月NPO法人化)し、各種セミナーなどを企画開催。次なる目標を実現するための場所として、2008年夏、起業家が集うサロンをオープン。

独立準備のがんばりどころ

起業家・経営者などの挑戦者限定! ビジネス活動を活性化させるためのサロン

写真

来店者が自由に移動して交流できるよう、テーブルやソファなどの間隔を広げ、ゆったりと配置。カウンター越しの厨房は、調理の様子や食材などが見えるようなオープンな設計に

私にとって、この「リーダーズサロンなみへい」(以下、なみへい)のオープンは第2の起業なんです。起業家や経営者のネットワーク「キープラネット」を発足させて今年で11年目。キープラネットでは難しかった目的を実現するためのステージといえるでしょうか。なみへいは、起業家や経営者だけでなく、全国各地で地域のために頑張っているキーマン、企業のリーダー、また大学の先生などなど、様々な人たちが集まって、おいしい料理やお酒でくつろぎながら情報交換する場所。究極の目的は、なみへいで出会った人たちがお互いに知恵を出し合い、新たなビジネスを生み出したり、地域を代表するような新商品を誕生させることです。

お酒が飲めて、料理が提供されるということは、「つまり居酒屋?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。入店いただくお客さまは、各地で頑張っている起業家やその支援者たち。そして、そんな方々が連れてきてくださる人に限定。だから「リーダーズサロンなみへい」なんです。メニューに使用する食材は全国のおいしい新鮮素材を採用し、故郷の自慢のお酒やご自分の好きなお酒をボトルで持ち込んでいただくこともOK。持ち込み料はもちろん、氷や水も無料です。これにはみなさん驚かれます。「そんなことして儲かるの?」って。まあ、何とかなります(笑)。

運営母体は、議決権が出資比率に関係なく決められる合同会社

写真

場所は、上京した人がアクセスしやすいJR・地下鉄神田駅から徒歩4、5分。新幹線も通るJRのガード沿いを歩き、昭和の風情をタップリ残す飲食店街の先に「なみへい」の看板が

サロンのオープンに当たって、運営母体を株式会社でなく合同会社にしました。合同会社は2006年5月施行の会社法で制定された新しいタイプの会社類型です。出資者の責任範囲が出資額の限度内という点は株式会社と一緒。しかし、出資者の権利に関しては、出資者同士の合意があれば、出資比率に関係なく自由に決めることができるんです。様々な観点から、「このサロンは合同会社でやるべき」と、スパッと答えを出してくれたのは出資者のひとりで、経営に関しても一番頼りにしている仲間です。

なぜ合同会社かというと、まず、それなりの資金が必要な事業だけれど、私ひとりではまかなえなかったこと。でも、私の出資比率が低いと、議決権が小さくなってしまいます。出資仲間たちは、「自分たちの出資額がどうこうではなく、このサロンの運営は川野さんが言いだしたことで、川野さんの情熱とセンスと人望で展開すべき。川野さんだから成り立つものにしなければならないんだから」と。そこで利益分配率は出資額の比率と同等ですが、議決権は私が51%以上にするということを決め、定款にも記載しました。株式会社では出資比率=議決権比率になってしまいますが、合同会社はこういうことが自由に決められるのです。

理想の居抜き物件が見つからず、新築物件を思いどおりに仕上げる

登記は完了したものの、なかなかオープンできなかったのは、物件探しが難航したから。全国各地のリーダーが上京した際に来店しやすいよう、できれば東京駅から徒歩圏内、それも飲食店用の居抜き物件と考えていました。ところが、理想の物件は探せども探せども見つからなくて……。オープンは今年(2008年)の7月ですが、ゴールデンウイーク直前、タウンページでアタリをつけた180もの不動産業者に「こんな物件を探しています」というFAXを流したんです。連絡くださった業者の紹介で、東京駅隣の神田駅に近いこの場所に決めることに。でも実はここ、新築のオフィス用物件。基礎工事、内装工事、厨房工事も、すべて新規で行なう必要があったんです。

出費は当然増えてしまいましたが、結果として、ほぼ100%の理想どおり。最高のフロアと厨房が完成しました。昼も夜もサロンとして開放できる場所にしたかったので、明るい雰囲気であることも条件のひとつ。元・飲み屋の居抜き物件は、いかにも夜の営業に向いたような、悪くいえば暗く汚い印象のものばかりでした。また、厨房は調理の様子が見えて、使用食材や生産地、生産者のことが話題にできるような、オープンキッチンでなければと。その2点を絶対に譲らなかったのは、これこそがなみへいのウリだから。昼でも夜でもみんな気兼ねなく集まって、食材ひとつが話題になり、そこから交流が生まれるような。ほかには真似できないサロンを実現したかったからです。

取材・文 / 田村 康子 撮影 / 加納 拓也

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    自ら立ち上げた経営者・起業家のネットワーク「キープラネット」が発足10年目を迎え、運営方法やサービス内容に関して、このままでいいのだろうかと考え始めたことがきっかけです。会員数が増えるに従って、会員それぞれの企業規模、どんな成長段階にいるのかなど状況がまちまちで、個々の会員に対する適切なサービス提供が難しくなってきたんです。それに、全国各地の会員や、仕事で知り合った経営者たちが、「川野さん、今東京にいるから、ちょっと遊びに行くよ」と、集まってくれる人もたくさん。でも、仕事の都合できちんと対応できなかったり、逆に私の仕事が中断してしまったり。それで、私自身が仕事も時間も気にすることなく、来訪者もゆっくりくつろげる場所が必要だと痛感。そんなサロンの、いわばママになることが私の今の使命だと。そう決意してのオープンです。

  • 開業資金は?

    総額で1540万円です。内訳は、物件取得費に約500万円、内装費に600万円、厨房設備に200万円、残りは細かな備品購入費。そして主に人件費となる当面の運転資金を残しておきました。

  • 開業資金はどう集めた?

    合同会社で設立しようと決めてから、キープラネットを応援してくれている人たちを主体に、出資してくれそうな方をリストアップしていきました。でもそれは、お金を持っていそうな人という観点ではなくて、私が「この人に支えてほしい」と思う人をじっくり考えてのこと。しかし、それぞれの事情もありますし、目標金額の1500万円は簡単には集まらないだろうと覚悟していたんです。ところが、本当に、あっという間に目標を達成。達成後も、「私も出資したかったのに」と言っていただいたり。こんなにたくさん支援してくださる方がいるんだから、もうこれは何としてでもかたちにして成功させねばと。私自身の決意がますます固いものになりました。

  • 周囲の反応は?

    起業家サロンをつくりたいことを発表したのは、キープラネットが来年10周年を迎えるという年の暮れに、関係者や会員が集まって行ったクリスマスパーティーです。みなさん、私がキープラットでやってきたことを知っている人ばかりでしたので、次のステージとして私が目標に掲げたこと、そして歩んでいこうとしていることがどんなことなのか、よく理解してくれました。最後には、「川野さんがやりたいことなら、それはやらせるしかないよな」と(笑)。だから反対はほとんどありませんでした。

  • 不安だったことは?

    私にとってサロン主宰者のイメージは、話術が巧みで、いろいろな特技や多彩な趣味を持っていて……、というものでした。ところが、私は世間的な話題に疎く、特別な趣味や特技もないし、何か強みになる武器が何もないよなと。そんな私がサロンの主宰者になっていいのだろうかと不安になりました。でも、「川野さんは、そのままの川野さんで充分おもしろいから、そのまま、それを生かすと思えばいいんだよ」と言われ、真に受けることにしました(笑)。

  • 役立った情報源は?

    応援してほしい人は決めていましたので、そのメンバーたちがもたらしてくれる一つひとつの情報がすべて貴重なものでした。飲食店経営に関しては各種ノウハウ本を参考にしてみました。ところが、私がつくりたいサロンは今までに例がないものなので、本に書かれているとおりにはいかないと思うことばかり。物件探しにしてもしかり。考えていたメニューの内容や提供の仕方も、どこにも書かれていません。そこでわかってきたのは、「自分で試行錯誤しながら実現していくしかない」ということ。トライアル&エラーを繰り返しながら前進していこう。そして、小さなことでも妥協しないと決意しました。

  • 相談相手は?

    やはり相談に乗ってくれたのは、出資仲間や信頼している支援者の皆さんです。ブログでちょっと質問しただけで、すぐに電話でアドバイスしてくださったり、こんな資料もあるよと送ってくれたり、その反応の早さは私も驚くほどでした。

  • 独立して一番困ったことは?

    正式オープン前に、仲間対象にプレオープンの期間を設けました。プランニングしてきたことを実際に行うとどうなるのか? その実験期間ですが、「困ったな」ということが予想以上にたくさん起きました。時には、「こんなんではダメですよ」とお叱りを受けることも……。その結果、オープン日は決まっていましたが、役員会議で、まだ正式な開店の案内状を出さず、プレオープンとしてしばらく運営してみようということに決めました。そのため、最初のひと月は試行錯誤の実験を繰り返し、宣伝しようにも宣伝できず、赤字の日々が続きました。

  • 独立して一番良かったことは?

    出資してくれた人、今まで支援してくれていた人、キープラネットの長年の会員などなど、私を本気で応援してくれる人たちが大勢いるということが、改めて、そして確かに認識できたことです。そんな皆さんがいなければ実現し得なかったことは間違いありません。また、私は今年で52歳になるんですが、前々から50歳をすぎたら新しい世界で挑戦したいと考えていました。しかも、お金も財産もない立場で、「やればできるん」というところを見せたかったんです。今、そのスタート地点に立てたことが一番嬉しいですね。まだオープンしたばかりですので、「本当だ、川野さんがやればできることを確かに見せてくれたよ」と言われるようになるまで、とことん突き進んでいきたいと思います。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    「起業したい」という思った時、自分はまだ準備不足だと感じたら、慌てずに、ゆっくりと目標に向かえばいいと思います。とはいえ、現在の仕事を続けながらだと、なかなか思うようにことは運びません。ゆっくりでいいと思っていると、時はどんどん過ぎていきます。起業に向けて、キャリアを築いたり、人脈をつくったりといったことは、自分から積極的に行動していかないと実現しません。また、そういったことに専念するために必要な出費も想像以上に多いもの。仮に、現在の仕事を辞めたうえで、ある程度の準備期間を設けるなら、その間、生活に不安をきたさないようなお金の準備も必要です。そして、「これで起業」と宣言したら、それをとにかく周囲に言い続けて、やり続けることです。そして一生懸命に取り組めば、自然に応援してくれる人も集まってきますから。

設立
2007年11月(オープンは2008年7月)

資本金
1540万円

従業員数
6人

年間売上高
実績なし

アクセス
http://kawano-mariko.cocolog-nifty.com/blog/


アントレnet で独立の道を見つける!

独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報

・会員登録がまだの方
会員登録
・アントレnet会員の方
ログイン

INDEX(インデックス)

業種は?

独立前の仕事は?

独立前の年齢は?

ページの先頭へ