先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


日下 啓さんの写真

バングラデシュ産
「芸術の紅茶」の輸入・販売

シレット・インターナショナル株式会社 / 仙台市青葉区
日下 啓さん(47歳)

くさか・あきら / 宮城県出身。医療機器メーカー、生命保険会社などで勤務後、仲間5人で医療機器販売会社を起業するも半年で分裂。約1年をかけて事業を模索し、現在の商材に出合った。ベンチャー企業ならぬ「アドベンチャー企業」を自称する。

独立準備のがんばりどころ

日本にない商材を探し、紹介されたバングラデシュへ

写真

仙台を代表する老舗百貨店「藤崎」を始め、全国の大手百貨店から催事販売の引き合いがくる。その際は、事業パートナーでもある妻と一緒に店頭に立って接客する

仲間と立ち上げた医療機器販売会社が立ち行かなくなり、自分で事業をするしかないと商材を探していた時、勤務時代の仲間から海外のビジネス事情に詳しい経営者を紹介してもらいました。その経営者は海外に多くの工場も持つ方。中でも、バングラデシュはオリジナリティもクオリティも高い商品が多いのに、日本ではあまり紹介されていないという。だから、商材として面白いのではないか、と僕に勧めてくれたんです。

確かに「バングラデシュの特産は何か」と聞かれても、パッと思いつくものはありません。でも、実際に良い商品をいち早く日本で紹介できたら、ビジネスになるのではないか。そう考え、とりあえずバングラデシュに飛びました。宝飾品や手織りのカーペットなどを見ましたが、素晴らしい商品ではあるものの、いまひとつ僕にはピンとこない。悩みました。

完全無農薬の「幻の紅茶」に出合い、これしかないと交渉開始!

写真

起業家仲間と組んで「シレット・ティー」を使ったプリンやマカロンも開発。紅茶と同様に無添加で、天然飼料育ちの蔵王地養卵や低殺菌の蔵王山麓地牛乳を使用し、人気を呼んでいる

バングラデシュで最後に見たのが、紅茶でした。僕はあまり紅茶が好きなほうではなかったので、商材としてあまり考えていなかったのですが、実際にシレット地方にある農園へ行き、飲ませてもらった。これが驚くほどおいしい! 少量だけ買って帰国し、毎日飲んでいたのですが、まったく飽きがこない。しかも、その農園は、開園して150年以上、一度も農薬を使ったことのない完全無農薬・有機栽培を徹底しています。さらに調べると、シレット地方はヨーロッパ、特にイギリスでは高級紅茶の産地として知られ、英国王室御用達の「紅茶の芸術」とも呼ばれる最高級の幻の紅茶だったのです。もちろん、まだ日本へは輸出されていない商材でした。

もう、この紅茶しかないと、結局、半年間で4回ほど現地へ出向いて交渉しました。相手はシレットでも最大手の農園。安売りはしないと強気でしたが、初めて訪れた日本人だということもあり、少ないロットにもかかわらず、取り引きに成功。バングラデシュの商材を勧めてくれた社長からいただいた、餞別の30万円を仕入れ代に充てました。

「飲めばわかる」と味がクチコミで広がり、催事販売で全国区へ

帰国後すぐにオリジナルのパッケージを製作。卸し先を探しましたが、なかなか販路が広がりません。そんな時に、ケーキ店を経営する学生時代の友人とバッタリ出会いました。チャンスはすべて生かそうと「この紅茶を試飲しておいしかったら、お店に置いてほしい」と交渉。飲んでくれさえすれば、納得してもらえる自信がありました。そして思惑が通じ、友人の店が卸し先1号店に。それから少しずつクチコミで評判が広がり、百貨店の催事販売をスタート。販路は全国区になりました。

現在は、催事販売を月2、3回のペースで行っています。販路は催事のほか、卸しと自社ネットショップの3本柱に。この紅茶を使ったスイーツを起業家仲間の力を借りて開発したことで、紅茶とのセット販売もできるようになりました。振り返れば、いつも人に助けられてここまできたと思います。本当にありがたいことです。仕事も幸せも、人が運んでくれるものだと改めて実感しています。

取材・文 / 石田恵海 撮影 / 佐藤 修

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    やるしかなかったというのが本音です。様々な企業に勤務して会社勤めが向いていないと思い知り、仲間と起業したけれど失敗して40歳目前で無職……。もう、自分で事業をするしかないでしょう(笑)。商材を探す中で、日本ではまだ売られていなかったバングラデシュ・シレット地方の紅茶と出合い、あまりのおいしさにこれしかないと。人生の再起をかけて起業したというわけです。

  • 開業資金は?

    50万円です。最初の仕入れ代と商品のパッケージ代で消えました。おかげで独立後の半年間はキツかったー! まさに自転車操業で、生まれたばかりの息子のミルク代を捻出するにも苦労しました。皆さん、運転資金はあるほど良いので用意しておくべきですよ。

  • 開業資金はどう集めた?

    20万円は、妻がパートで貯めた、なけなしのお金。30万円は、バングラデシュの商品が面白いと勧めてくれた会社社長からの餞別です。自分の貯蓄も多少あったのですが、それは商材探しの渡航費などですべて消えていました。

  • 周囲の反応は?

    妻以外、全員身内は反対でした。「生活はどうするんだ」と。そりゃ、そうですよね。1年近くも無職の人間が、いきなり起業するなんて言っているわけですから(笑)。でも、会社に勤めている当時から、親は僕のやることにいつも反対で、賛成された記憶がない(笑)。ですから、今回も押し切ったかたちでの起業でした。今は納得してくれているようですけど。

  • 不安だったことは?

    不安だらけですよ! 子どもにミルクを飲ませることができるのか、妻にごはんを食べさせることができるのか……。実際、そのとおりかなり苦しかったですよ。起業して半年あたりでしょうか? 本当に生活が苦しくて、先輩経営者に無心の相談をしたことがありました。でも「ここでお金を渡すとキリがないし、今、目の前にあるピンチは乗り越えられても、次のピンチは乗り越えられないから」と断られました。今ではあの時、断られて本当に良かったと思っていますね。

  • 役立った情報源は?

    バングラデシュの商品を勧めてくれた経営者からの情報です。この方がいなかったら、現在の商材には出合っていなかったわけですし、どうやって生きていたことやらと思います。今でも、仙台の起業家仲間を始め、知人や友人から紹介してもらう情報が多いですし、人脈に支えられていると実感します。

  • 相談相手は?

    たくさんいます。先にも話したバングラデシュの商品を勧めてくれた経営者や、ピンチの時に無心の相談に行った先輩経営者、生命保険会社に勤務していた時のお客さま、起業家仲間などです。アドバイスをいただくだけでなく、いい話ができる時は報告に伺うよう心がけています。

  • 独立して一番困ったことは?

    生活です。生命保険会社に勤務していた当時と比較すると、月収は7割減でしたから。生活レベルを落とすのも大変でしたし、お客さまに生活が逼迫した雰囲気を見せないよう努力することも大変でしたね。でも、おかげで商品ひとつ買っていただくごとに、本当にありがたい気持ちになりましたし、コストを節約して高いパフォーマンスを挙げる方法も学べました。

  • 独立して一番良かったことは?

    商品を買っていただく喜びを感じられることです。勤務時代は給料が振り込まれることが嬉しかったですが、今はこういってはビジネスとはいえませんが、入金がなくても買っていただくだけで嬉しい。お客さまに買っていただいた瞬間こそが最高の瞬間! そう思えるようになりました。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    僕は、開業資金も用意せず始めてしまい、かなり苦しい時を経験したので、皆さんに同じやり方を勧めることなんてできません。しかし、節約や小資本でビジネスを始める大切さを体で知ることができました。独立する時は見栄を張らず、とにかく自分のできることから小さく始めてみることが重要です。そして、少しずつ投資をしていくことで、事業を大きくしていく。それが安全ですし、失敗も少ないはずです。それから、大切な家族に苦労をかけないためにも、当面の生活費はちゃんと確保してから始めてほしいですね。

設立
2004年12月15日(創業は2001年6月)

資本金
200万円

従業員数
2人

年間売上高
非公開

アクセス
http://www.sylhet-tea.com/


アントレnet で独立の道を見つける!

独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報

・会員登録がまだの方
会員登録
・アントレnet会員の方
ログイン

INDEX(インデックス)

業種は?

独立前の仕事は?

独立前の年齢は?

ページの先頭へ