すずき・のりあき / 埼玉県出身。大学時代にカフェでバイトをしたことをきっかけに飲食店経営に興味を持つ。カフェ開業の修業として、インテリアショップやアパレルメーカーに勤務した経験も。開業後も内装を変えるなど、日々店を進化させている。
すべて手づくりした内装は、リラックスできる空間を第一に考えた。来店客の店内での動きを観察した結果、よりリラックス感のある雰囲気をつくろうと、近々改装をする予定
大学を卒業してから店を開業するまでは、すべて修業と考えて仕事を選んできました。最初に就職したのは、女性向けのアパレルメーカーです。カフェの場合、店に入ってもらえさえすれば、売り上げになりますよね? でも、アパレルショップは来店客の半分以上が商品を買わずに店を出ていくわけです。しかも、男性の僕が女性に女性の服を売るのは大変だろうと。そういったシビアな世界に身を置くことで、女性の心理や接客術を学んでいきました。
予想以上に大変でしたよ。本当に売れなかった。僕が「お似合いですよ」と言うのと、女性店員が言うのでは、女性客に伝わるニュアンスは全然違いますからね。なので、途中から「洋服の話をしない」という作戦に切り替えました。服とまったく関係ない共通話題を探って声をかけることで信頼関係を築き、2度目、3度目の来店で買っていただくよう心がけました。この時に身につけた接客術は今に生きていますね。お客さまの店での動向や視線から、ニーズが読み取れるようになりましたから。
自慢のスイーツはカフェ時代の同僚だった蓮沼佳子さんのお手製! 深夜3時まで営業する同店には、美味しい食事やスイーツ、鈴木さんとの会話を楽しむひとり女性客も多い
アパレルメーカーの次に修業したのは、カジュアルレストランやダイニングバーなどを多店舗展開する大手外食チェーンです。そこでは店舗運営だけでなく、スタッフのマネジメントや食材・酒類メーカーなどとの仕入れ交渉といった、大手ならではのダイナミックな仕事を経験することが目的でした。収支や原価計算といった数字面の勉強にもなりましたし、ハードワークで給料も高かったので、資金稼ぎにもなってますね。
そして、最後の仕上げとして、身の丈で開業しているカフェに勤務。大手外食チェーンは収支や原価計算に関してシビアですが、個人店とはケタが違います。逆に個人店は数字に甘い部分がありますが、出てくる数字はリアルです。その両方を経験することで、自分の店ならどんな計算をすべきかが見えてきました。
飲食店で働いたことで、人脈も増えました。酒類メーカーや酒店などの知人もできたので、仕入れや設備などの相談ができましたし、前職のカフェオーナーからは経営について教えてもらうこともありました。ですから、いざ開業となった時も、急いでノウハウ本を読むこともなかったですし、慌てて開業直前の準備をすることもなかったんです。
最初から完璧な店はつくれないと思っていましたから、内装なども自分たちで行って最低限の費用で開業しています。だから、まだまだ発展途中で、最近になってやっと平日のランチを始めたばかりですよ。お客さまのニーズを探りながら、少しずつ店を進化させていけばいいと考えていますね。
大学時代にクラブやカフェなどでバイトしていたことで、飲食店の面白さに目覚めました。カフェのバイト先のボスがリーダーシップもあってかっこ良くて。彼に影響されたのもあると思いますね。大学を卒業する頃には、カフェを開業することを決意していました。その後、修業として数々の企業に勤めてノウハウを学んで、開業してもやっていける力を付けたところで独立しました。
650万円です。物件取得費に250万円。内装はほとんど手づくりして200万円。厨房設備などは、中古品を活用するなどして100万円。ショーケースや冷蔵庫、製氷機、グラス類などは付き合いのあった酒店やメーカーなどから協賛品として提供しもらいました。テーブルやイスなどの備品は、中古家具店などを巡って100万円。運転資金は用意できなかったので、国民生活金融公庫に融資の相談をしようかとも考えたのですが、結局、借り入れせずに済みました。
大手外食チェーン会社時代に貯蓄した資金が300円。当初は弟と一緒に店を始めたので、弟が150万円出しました。残り200万円は両親から借りています。
弟と一緒に開業したので、身内の反対はありませんでした。また、開業前に勤めていたカフェの常連さんなど仲のいい人もいたのですが、自分が開業したことを伝えるとお客さまを奪うことになると思い、わりと周囲には内緒で始めているんです。友人の中には「お店ができたら行くよ」と言ってくれる人もいましたが、言うだけの人が多いということはこれまでの経験で知ってましたからね(笑)。開業景気を期待しないよう心がけました。
ビルの2階なので「認知されるまでにどれだけ時間がかかるだろう」という不安はありましたね。広告費もいっさいかけていませんでしたし。でも、雑誌やWebなどに記事として紹介してもらったことで、思ったより早く認知されるように。だから金融機関から運転資金を借り入れせずに済んだんです。ただ、まだまだ集客面の不安はありますから、お客さまのニーズを読み取って、内装を変えたり、メニューを変えたりと、日々マイナーチェンジしています。
カフェや外食チェーンで飲食店経営について実地で学んできたので、準備の段階でノウハウ本を読んで勉強したり、Webで情報を収集するようなことはありませんでした。あえていえば、酒店や酒類メーカーにいる友人が情報源でしょうか。協賛品を提供してもらうためのノウハウを教えてもらいましたから。
前職のカフェ経営者からは内装に関するアドバイスをもらいました。酒店や酒類メーカーに勤める友人には開業のためにたくさんの協力をしてもらっています。協賛品に関しての情報提供はもちろん、合コンをセッティングするのを条件に、物件探しまで一所懸命手伝ってくれました(笑)。
仕事のことばかり考えていることを、家族や恋人、友人たちが快く思ってくれないことですね。脇目も振らずビジネスまっしぐらって、独立して最初のうちは仕方ないと思うんですけどね。周囲はそう思わないようで、「生活を省みない人」なんて言われちゃってます。
お客さまが自分の店でリラックスされている様子を見られるのは、ホント嬉しいことですね。特にお客さまとスタッフがお互い笑いながら話をしているシーンを見た時は、ニヤリとしちゃいますよ。店やって良かったなと思う瞬間です。
カフェをやりたい人って多いですが、やりたいと言いながらもやらない人が多い。それって、捨てる覚悟がないんじゃないかと僕は思うんです。独立・開業は新しい世界に入っていくわけですが、新しいことを始める覚悟よりも、これまでの自分を捨てる覚悟がある人。それが独立できる人だと思いますね。何か新しいものを選ぶということは、確実に別の何かを捨てているわけですから。だから、後ろ向きな人は独立に向かないでしょうね。「これまでの安定や収入や立場など捨ててもいい!」。そんな覚悟、必要ですよ。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報