先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


村治明子さんの写真

生活を提案する
園芸&雑貨のネットショップ

楽園な暮らし BoraBora / 兵庫県西宮市
村治明子さん(43歳)

むらじ・あきこ / 兵庫県出身。営業職、ウエディング関連のプロデューサーを経験後、結婚・出産を経て園芸&雑貨のネットショップを開設。将来、収益の一部を活用して、捨てられた犬たちを保護するシェルターをつくることを目標に仕事に励む毎日。

独立準備のがんばりどころ

園芸ショップでアルバイトを経験し、まずはネットオークションでの販売に挑戦

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「素焼きの鉢や園芸小物といえばBoraBora」といわれるよう、商品の仕入れに力を入れている。商品撮影は自然光のもとで。実際の庭で使っている雰囲気を出すように研究

昔からガーデニングが大好きで、結局その趣味が高じて開業したわけですが、それまではイベント会社でウエディング関連のプロデューサーやMCの仕事をしていました。でも、だんだんと庭のデザインや景観づくりを行う仕事にどうしても就きたいという思いが高まってきて、ウエディングの仕事には区切りをつけて、ガーデンデザインが学べるスクールに通うことにしたんです。実地体験も大切ですから、苗物や園芸資材を広範囲に扱っている大型の園芸ショップでアルバイトも経験しました。

しかし、当時は女性が庭づくりの職人的な仕事に就いて、それをきちんと成り立たせることはほとんど無理に近かったんですよね。そこで、自分でも着手できそうな園芸小物や苗の販売から始めてみることを目標にしました。最初からネットを活用してやってみようと思ってはいましたが、販売に関しても素人だったので、専用サイトをつくる前のマーケティングとして、手始めにネットオークションでの販売に挑戦してみたんです。

商工会の起業コンテストで会頭賞を受賞。しかし出産のために開業を延期

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励みになっているのは顧客からの喜びのメッセージ。「ていねいな梱包に感激した」「クレーム対応が迅速で嬉しかった」など、プリントして壁に張り出している

ネットオークションでは、園芸関連の問屋から仕入れてきた苗を中心に販売しました。試しにという、軽い気持ちに反して、特に街中の園芸店では手に入らないような珍しい苗が驚くほど高い価格で落札されて、いい手応えを感じることができました。ちょうどその頃、西宮市の商工会が主宰する起業セミナーがあることを知り、それもいい機会だからと参加してみたんです。

実は、私がやろうとしていることを夫も面白がってくれて、当初は夫婦で開業しようと計画していたんです。ですから、セミナーにもふたりで参加しました。そのセミナーの仕上げにビジネスプランコンテストがあり、プレゼンを行うことになったのですが、嬉しいことに私たちが会頭賞を受賞することができました。それが大きな励みになりましたが、いよいよ本格的な開業に向けて動き始めようというタイミングで、なんと、妊娠・出産という、これまた人生の一大転機が訪れて……。それで、いったんはその計画を休止するのですが、出産直後の大変な時期を過ぎると、やっぱり思いは行動に移すべきだと。2003年4月に個人事業の届け出を出し、まずは自宅を事務所にしてスタートしました。

「この人なら信頼できる」と思ったママさん仲間がスタッフとして参加

Webサイトは市販のパソコンソフトを活用して自分でコツコツとつくりましたが、より多くのお客さまに来ていただけるよう、ネット上のショッピングモールにも出店しました。顧客数が増えて軌道に乗ってきた時に困ったのは、在庫置き場と梱包のためのスペースの確保です。園芸小物は品数のわりにかさばるものが多く、自宅ではまかないきれなくなってしまって……。そこでオフィス兼出荷用の倉庫として、自宅からも近い今のスペースを借りることにしたんですよ。

その後も売り上げは徐々に伸びていきましたが、梱包作業にかなりの時間を取られ、ほかの仕事ができなくなっていきました。それで、このまま私ひとりでやっていくには無理があると判断してスタッフを採用しようと。困っている私を最初に助けてくれたのは義理の妹の友人です。彼女は今、梱包の達人になっています。その後に来ていただいたのは、公園で知り合ったママさん仲間のひとりですが、彼女も注文の受付から発送の準備、お客さまの問い合わせ対応などがとても丁寧で、絶対に欠かせないスタッフになっています。実は彼女は、公園で何げない会話を繰り返す中で、「この人はしっかりしている人だな、うちで働いてくれないかな」と、密かに狙っていた人なんです(笑)。そこで、思いきってお誘いしてみたら快く引き受けてくれました。ちなみに、店名の「BoraBora」は、タヒチのボラボラ島から名づけました。南国の楽園のような暮らしを届けるショップという意味を込めたかったんですよね。今は販売のみに徹していますが、将来は庭づくりそのものも含めて、ゆったりとしたライフスタイル全般を提案できるような企業に成長させたいと思っています。

取材・文 / 田村康子 撮影 / 安田行宏

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    子どもの頃から植物が好きで、小学生ながら、自分の部屋で観葉植物を育てて喜んでいました(笑)。その後も自然に植物に親しむ生活を続けていましたが、結婚して暮らし始めた夫の実家で庭づくりをしているうちに、ますますガーデニングに熱中してしまったんです。だんだんと、これを趣味に終わらせることなく、仕事にできたら幸せだなーと思うようになって、知識や技術を身につけようとガーデンデザインのスクールに通うことを決めました。「よし、開業しよう!」と決意できたのは、試しにネットオークションでの販売に挑戦した際に、予想以上のいい手応えを感じることができたからですね。最初は夫も会社を辞めて、一緒に開業しようとしていたのですが、準備中に、夫婦での共同経営はやめたほうがいいかもしれないと思い始めたんです。というのも、私自身の強い思いから始めたことなので、夫の行動にいちいち口出ししてしまうんですよね。夫は夫で、会社で発揮しているようなリーダーシップが、相手が身内だと返ってトラブルの元になってしまいそうなことに戸惑いを感じているようでした。激しく対立したということはなかったのですが、お互いに変に譲り合いながらやるのはよくないことだと判断して、それで私ひとりで開業することになったのです。その判断は間違っていなかったですね。今、夫は私のやっていることを客観的に見てくれる、なくてはならない相談相手になっています。

  • 開業資金は?

    280万円です。ですが、これは自宅で始めた2003年時点の話ではなくて、今の場所を借りて移転した2005年の話です。ここでのスタートが実質的な開業といえます。自宅でやっていた時は、少し仕入れて売り上げがあるとまた仕入れるというかたちでやっていましたので、ほとんどお金がかかりませんでした。その280万円のうち、物件取得費と備品購入費として100万円ほど使い、残りは運転資金として残しておきました。

  • 開業資金はどう集めた?

    西宮市の商工会から融資を得ました。それがすんなりと獲得できたのは、起業セミナーに参加して起業プランコンテストで賞を取ったことが大きかったと思います。その金額が280万円だったのですが、もし融資が得られていなければずっと自宅で続けていたかもしれません。

  • 周囲の反応は?

    夫はもともと一緒にやろうとしていたくらいなのでまったく反対しませんでした。実家の両親が、「本当に大丈夫なの?」という感じで少し心配していたようですが、だからといってやめるつもりはなかったですね。

  • 不安だったことは?

    これは開業直後に気づいて愕然としたことですが、素焼きの鉢など園芸小物は割れ物なので、発送前の検品や梱包にものすごく気を使わなければならなかったことです。よく考えてみれば扱う商品は破損しやすく、重たく、かさばるものばかりですから、「こんなに大変なことをこの先やっていけるのだろうか……」とかなり憂鬱になりました。だんだん売れるようになっていったことは嬉しいことでしたが、いつまでもひとりではできないと、ずっと感じていましたね。やがて常連のお客さまがたくさん付いてくれたことと、融資が得られたことで経営が安定し、それによって頼りになるスタッフに来てもらえるようになったことで問題は解決できました。

  • 役立った情報源は?

    Webサイトは自分でつくりましたので、ネットショップの開業本を何冊か買って参考にしました。『月刊アントレ』もネットショップの事例が出ている時は買ってきて読みましたね。また、ネットショップに関して専門に編集されているある雑誌がありましたので、商品がよく見える写真の撮り方など、そこに書かれていることを実践しました。

  • 相談相手は?

    最初は自宅で育児をしながら細々と始めた程度でしたから、誰かに相談するという発想自体がなかったですね。本や雑誌を参考にしたり、ネット検索で調べ物をしたりはしましたが、手探りで孤軍奮闘という感じでした。そうはいっても、一番の相談相手は夫でしょうか。今も迷ったり悩んだりした時に気軽に相談していますが、明確な答えはなくても、「考えすぎだよ」とか、「そんなに気にしなくてもいいんじゃないの」という一言で気持ちが楽になります。楽天的というか、いい意味でいい加減なところがある人なので助かっていますね(笑)。

  • 独立して一番困ったことは?

    初めは自宅でのスタートでしたので、仕入れた商品を廊下に積み上げたり、部屋中を段ボールだらけにして発送作業をしなければなりませんでした。夫の両親との二世帯住宅ということもありますが、お父さんがとてもきちんとしていた人なので、散らかしていることを怒られたりしないかといつもハラハラ。ガムテープを扱う時のベリベリっという音などもとても気になって、みんなが寝静まってからの梱包作業には本当に気を使いましたよ。それらを気にせず作業できる専用スペースを確保するために頑張れたともいえますね。

  • 独立して一番良かったことは?

    今、一番嬉しいと感じているのは、優秀なスタッフに巡り会えたことです。一番困っていた時に梱包スタッフとしてさっそく来てくれた義妹の友人、そして、公園で知り合ったママさんスタッフも本当によくできる人で、私が一日中不在の日でも安心して業務を任せています。また、ほかのスタッフも含めて、皆で商品が絶対に破損しないような梱包の方法を研究してくれたり、私が留守の間にきたクレームにも迅速に対処してくれたり、逆にそのお客さまに感謝されるくらいです。ですから、いい意味で私が少し気を抜くことができる時間も確保できているんです。お互いに人として信頼できる仲間たちとも、開業しなければ出会えなかったわけですからね。開業して本当に良かったと思っています。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    自分がやりたいことで開業したいなら、まず想定できる問題をくまなくチェックしておくことです。でも、問題ばかりが気になって、開業を断念してしまうケースも多いと思います。私の場合、すべての問題がすぐに解決できるものではないと自分に言い聞かせて、ひとつクリアしたら次へと、焦らずに落ち着いて解決するように心がけてきました。すると不思議なことに、ある問題が解決できると別の問題の突破口も見えてきたりします。頭をかかえている時は本当に苦しいですが、ハードルを越えるたびに大きな達成感が味わえます。その達成感こそが、「やってて良かった!」という喜びなんですよね。壁にぶつかっても、「これは必ず乗り越えられる」「そのためにいろいろ試みてみよう」、そして「きっと乗り越えた時の充実感はすごいだろうな」ということまでイメージしてください。一歩ずつ前進すればいいんだという心構えで臨んでいただきたいですね。

開業
2003年4月

開業資金
280万円

従業員数
5人

年間売上高
非公開

アクセス
http://www.rakuten.co.jp/borabora/


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