先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


矢野久美子さんの写真

生地とクリームにこだわる
クレープの移動販売

Cindy’s / さいたま市南区
矢野久美子さん(34歳)

やの・くみこ / 埼玉県出身。大学卒業後、飲食店の店員や携帯電話販売員、テレホンアポインターなど、数々のアルバイトを経験。年間の半分はアルバイトをして資金を貯め、半分は海外で過ごす。大学の同級生だった夫、吉郎さんと共に開業した。

独立準備のがんばりどころ

前の職場を反面教師に他店を調査し、味を研究

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お店となるフォルクスワーゲンのレイトバスは、注目度も高い。週に1度営業している「極楽湯・入間店」前では、湯上がりにクレープを買う家族連れも!

商材をクレープに決めたのは、夫も私も甘いもの好きだったことがありますが、前職でクレープ店に勤めていたことも理由のひとつです。クレープの質の鍵になるのは、何といっても生地とクリームですが、前職の店では、生地になる粉はすでにブレンドされた業務用粉をただ水と混ぜるだけで使っていましたし、クリームも冷凍ホイップを使っていました。だから、実はあまりおいしいとはいえないものだったのです。自分自身がオススメできないものをつくって販売する心苦しさも感じていました。

そこで、前職の店を反面教師にして、生地とクリームにこだわった味を追求。移動販売に限らず、クレープのお店に何軒も足を運び、「粉は何を使っているのかな?」「クリームは出来合いっぽいな」など研究を重ねました。そしてオリジナルレシピでつくる生地を完成させ、様々なメニューを考えていったのです。

コスト削減のためリサイクル家具を使い、車の改造はすべて手づくり

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人気は「Wendy(いちごキャラメルクリーム)」と「Kim(チョコバナナクリーム)」。クリームは毎朝、矢野さんがホイップ。ジャムはすべて手づくり

その一方で、移動販売車の改造をしていきました。車は70年代のフォルクスワーゲンのレイトバスですから、それだけでかなり目を引く外観。なので、外側は手を加える必要はありませんでしたが、什器や設備などの内装はしっかり整えなくてはなりません。

そういったシンクや焼き台、床敷きなどは大工仕事の得意な夫が担当。看板などのイラスト描きは私が担当するなど役割分担し、夏の暑い中、すべてふたりで手づくりしていきました。結局、完成までに3カ月くらいかかったでしょうか。また、家具や電化製品などもできるだけ自宅にあるものを使用。低コストで仕上げることができました。

出店先を確保するために、イベント会社を活用

一番大変だったのは、出店先の確保ですね。現在は出店場所も落ち着き、1週間で曜日ごとに5カ所を回っていますが、これがなかなか定まらなくて……。集客できそうでイメージも合う商業施設を見つけて問い合わせても、個人事業主だからNGと断られるばかりで、泣きそうになりました(笑)。

そこで、私たちのような移動販売業者と商業施設などをマッチングしてくれるイベント会社を活用。売り上げの数%をイベント会社に支払うことで、出店先を紹介してもらいました。また、お店のWebサイトをつくって「出店先募集!」と広報も。一般の人からイベントなどに呼んでもらうこともあります。路上駐車での販売は違法ですから、集客率の高い私有地を借りられるかどうかが、移動販売を続ける大きなポイントだと思いますね。

取材・文 / 石田恵海 撮影 / 刑部友康

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    アルバイト生活を長く続けていたのですが、そろそろ雇われて働く以外の働き方がしたいと考えていました。そんな時に夫がワーゲン好きだったのもあって、中古ワーゲンショップへ行ったら、車の魅力にまんまとハマッてしまって(笑)。車で移動しながら仕事をするのは、旅をするようで自由な雰囲気がいいな、と。だったら、お互い好物のスイーツを売ろう! バイトでやっていたクレープ販売なんてどうだろう? そんな感じで話はトントン拍子に進み、独立することになりました。

  • 開業資金は?

    320万円くらいです。ワーゲンのレイトバスが218万円。20万円は什器や機材を購入するのに使い、残りは運転資金にしました。

  • 開業資金はどう集めた?

    本当はすべて自分たちで集めるつもりで、車両もローンを組むつもりでした。ところが、義父に車のローンの保証人になってほしいと頼みに行ったら、「車代くらいなら貸してあげる」とありがたい話に。結局、ローンを組むことなく、車両代218万円を義父に借り、残りはふたりの貯蓄でまかないました。

  • 周囲の反応は?

    特に驚くこともなく、応援してくれていますね。義母だけはいまだに「就職したら?」と心配してくれているようですが、たまにお店に顔を出しては、ひとつ400円のクレープを1000円で買ってくれたり、とか(笑)。そんな応援の仕方をしてくれています。

  • 不安だったことは?

    最初のうちはなかったですね。始めてみて、なかなか出店場所が定まらなかった時は不安になりましたけれど、その時くらいでしょうか。あんまり生活が苦しいようなら、店は私だけで運営して、夫は勤め人になろうと話していました。でも店舗にしている車が古いため、運転操作が難しくて、私は怖くて運転できなくて……。だったら、ふたりでやるしかないよね、と。結局、いつもふたり一緒にお店をやっています。

  • 役立った情報源は?

    大工仕事は夫が得意だったので、車の改造に関しては問題なかったのですが、ガスの確保はどうするんだろう?と気になったので、「移動販売の始め方」が書いてある本などを読みました。あと、スゴい役に立ったのは『タウンページ』。食材やガスの問屋、チラシ作成を依頼する印刷会社など、お店を始めるために必要な業者さん情報がすべて載ってましたから。

  • 相談相手は?

    いなかったですね。夫とふたりで話しながら進めていった感じです。他店の視察にも行きましたが、味の調査程度で、お店のつくり方や運営に関して質問することはありませんでした。お店をやるようになってから、逆に「移動販売、やりたいんですけど」と質問されることが多くなりましたね。

  • 独立して一番困ったことは?

    やっぱり、出店先の確保ですね。定まってきたのは、ここ最近ですから。あとは、自分の店だからといって、自由に休めないってこと(笑)。雨が降っていると、どうせ今日はお客さん来ないだろうと思っても、どしゃぶりでもお客さんは来るんですよね。そういうお客さんがひとりでもいると思うと、休めないし、休んじゃダメだという責任感も強くなりましたね。

  • 独立して一番良かったことは?

    フリーターの時には味わったことのない気持ちになれることです。フリーター時代は、お客さんに「おいしい」「ありがとう」と言われても、あまり感動することもありませんでしたが、今、そんなこと言われたら「マジですか!?」と。こっちのほうが「ありがとう、ですよ」という気持ちになります。独立するってこういうことなんだなって、店をやって初めて思いました。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    こんなことを言うと、夢がないかもしれませんが、移動販売は大きく儲かる商売ではありません。最初から大きく儲けたい人は別の業態を選んだほうがいいと思いますね。たまに、車両だけに1000万円近い資金をかける人がいますが、その分を回収するのは至難の業。小さく始められることと、お客さんがいるところに飛んでいけるフットワークの軽さが移動販売の魅力です。それを最大限生かした、自分サイズの商売をしたい人には移動販売は向いていると思いますよ。

開業
2005年11月

従業員数
2人

年間売上高
650万円(2007年12月期)

アクセス
http://www.cindys.jp/


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