先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


久光定雄さんの写真

高齢者と障害者専門の
旅行会社

株式会社H.Kリエゾン / 大阪市住吉区
久光定雄さん(58歳)

ひさみつ・さだお / 大阪府生まれ。外国語系の大学を卒業後、大手旅行会社に入社。企画・営業業務を中心に31年間勤め、母親と妻の介護のために退職した。「スローツーリズム」をモットーにしたサービスに、顧客から「待ってました!」の声も。

独立準備のがんばりどころ

介護との両立を一番に考え、身の丈に合ったビジネスを考案

写真

現地の介護サービス会社や旅行会社と多数提携。日本語対応の介護タクシーで、海外旅行が初めての車椅子ユーザーも、思いっきりハワイを満喫できる

私の場合、母親と妻の介護と事業を両立させることを一番重視していましたから、自宅を拠点にひとりでできて、得意な外国語力や旅行の知識を生かせるビジネスを考えていきました。日本に遊びに来た外国人のガイド、通訳、旅行関連のライター……。ただ、どうも決め手に欠けるのと、得意分野にプラス、自分の介護経験も生かすといいのではないか、と。そこで、介護・福祉分野を考えるようになりました。

しかし、インターネット検索をして、いろいろ情報を集める中で、介護・福祉分野は、対面して行う仕事が多いと実感。それでは外出が増えてしまうし、身内の介護との両立も難しい。また、ひとりでやるのも難しいと感じました。そんな模索する中、妻のリハビリのためにと、ハワイ旅行へ。それが私に大きなヒントをもたらしたのです。

事業の決め手は、車椅子ユーザーで元添乗員の妻の視点

写真

自宅での仕事はパソコンでのやりとりがほとんど。集中力を失わないよう、机の上にさらに机を置いて机の位置を高くし、立って作業するのだとか

ハワイは、バリアフリーが法律で義務化されているため、あらゆる障害者や介助者にとって、不自由さを感じさせないところなんですね。ホテルは目の見えない方でも、聴覚障がいがある方でも、車椅子ユーザーでも違和感のない障害者向けの部屋が必ず用意されています。ランディーズ(水陸両用の車椅子)を貸し出す会社もあります。地元の人もサポートに慣れていますし、何しろ気候がいいのです。妻の表情を見て、ハワイ旅行は短期間でも日本でのリハビリ1年分に相当すると実感。日本に暮らす障害のある方に、自信を持ってオススメできる場所だと確信しました。

そこで、私の外国語力や旅行会社の経験に加え、車椅子ユーザーで元添乗員であった妻の「障害者」と「添乗員」両方の視点を強みとし、ニーズにマッチしたサポートをすれば、確実に多くのお客さまに喜ばれるはずだと。ハワイ旅行を主体に置いた、障害者と高齢者のための旅行会社を開業することを決めたのです。

競合や顧客ニーズも忘れず調査。自宅を拠点にできるビジネススタイルに

ただ、事業内容を決めたからといって、突っ走るのは危険です。競合を調べたり、障害のある方からニーズをヒヤリングしたり、日本語に対応し、きめ細かいサービスをする現地旅行会社などを探したり……。事業として成立するかどうかを綿密に調査することも忘れませんでした。

そして、オリジナルツアーや、他社のツアーを活用した低価格のイージーオーダーツアーなどを考案。店舗を持たず、ネットや電話などで申し込みを受け付けるようにして、私は現地に出向かず、旅行の企画や予約代行などを行うスタイルに。自宅での介護と事業を両立させ、かつ低資金でできるビジネスになりました。妻はホントに口うるさい人なんですけど(笑)、彼女の細かい指摘があったおかげで、お客さまから喜びの声をいただけるビジネスになったと感謝しています。

取材・文 / 石田恵海 撮影 / 笹木 淳

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    一番の大きな理由は、母親と妻の介護です。海外出張で家を空けることも多かったので、不安でした。それで仕事と介護を両立させるために、独立することを決めました。この事業にしたのは、これまでの自分の経験や、添乗員だった妻の経験、また車椅子ユーザーとしての着眼点などを生かすことができると思ったから。いろんなビジネスを考えてはみたんですけどね。妻のリハビリでバリアフリー天国のハワイに行って、これだ!と思ったんです。

  • 開業資金は?

    400万円です。第3種旅行会社としての営業保証金の供託が300万円。旅行会社としての登記料などが19万円。ホームページの制作費が20万円。パソコン2台を買って40万円。残りはプリンタ、FAX、IP電話などを導入するために使いました。

  • 開業資金はどう集めた?

    早期退職制度を活用して得た退職金の一部や貯金を充てたほか、提携しているNPO団体の理事長からの出資も。年齢的に多額の資金を投入したり、借金してまで起業したくはありませんでしたし、できるだけ低資本でできるビジネスをと心がけました。

  • 周囲の反応は?

    妻や親戚からは、元手をかけないビジネスなら賛成するけど、元手をかけるなら反対だと言われていました。倒れても立ち上がれないようなことはするな、と。実際、小資本で始めましたし、マイペースでやっていますから、独立後はみんな応援してくれています。

  • 不安だったことは?

    スタッフを雇うような余裕もなかったので、ひとりでやると決めたのはいいのですが、経理も顧客対応も現地の旅行会社とのやりとりも、すべて自分ひとりでやらなくてはいけないわけです。孤軍奮闘がモチベーションにもなりましたが、やっぱり不安でしたね。

  • 役立った情報源は?

    インターネットです。競合の調査から、ニーズの把握、経理の勉強など、あらゆる情報を得られましたね。インターネットの世界って、バリアフリーじゃないですか。障害があろうがなかろうが、関係ない世界。ですから、障害のある方や車椅子ユーザーの方にたくさん意見を伺うこともできましたし、ホントに助けられましたよ。今でも、ブログやSNSなどでつながって、意見交換している方も多いですしね。

  • 相談相手は?

    ネットで知り合った、障害のある方や介護をしている方などもそうですし、旅行会社時代の友人もそう。有志で結成した「ツーリズム研究会」という会に入っているのですが、そこのメンバーにも相談しました。

  • 独立して一番困ったことは?

    ひとりでやっているので、自分の代わりがいないということですね。嬉しいやら悲しいやらですが、空港までの送迎は「久光さんの送迎じゃないとイヤ!」とおっしゃるお客さまもいらっしゃるんです。しかし、家族の介護と両立しながらの事業なので、母や妻の体調によっては、私が出られない場合もあります。なので、うまく仕事をセーブするようにしていますね。

  • 独立して一番良かったことは?

    旅行会社に長く勤務してはいましたが、障害者や高齢者の方を対象にした専門旅行会社ですし、オリジナルツアーが主。これまで出会うことのなかったタイプのお客さまや、提携するホテルや送迎会社の方など、新しい出会いがどんどん広がっているのが嬉しいですね。「こんな旅行会社を待ってたのよ!」なんて言われると、独立を決意してホント良かったと思います。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    私は山登りが趣味なので、登山に例えてお話します。まず、初めて登山をする場合、いきなり冬山やエベレストに挑戦するような人はいませんよね。そうでなくても、登山用シューズを履いて、地図を持って、非常時の用意をして、でもできるだけ荷物を軽めにしていくのが当然です。それと起業は同じです。背負うモノはできるだけ少なく、準備万端でできるだけ安全なルートを登ること。そうやって経験を積んで、高度な山登りにチャレンジしていけばいいのです。あせらず、まずは身の丈のビジネスを小資本で始めることが大事ではないでしょうか。

設立
2006年6月

資本金
1000万円

従業員数
1人

年間売上高
350 万円(2007年3月期)※営業開始06年9月からの6カ月間

アクセス
http://www7a.biglobe.ne.jp/~liaisonjapan/


アントレnet で独立の道を見つける!

独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報

・会員登録がまだの方
会員登録
・アントレnet会員の方
ログイン

INDEX(インデックス)

業種は?

独立前の仕事は?

独立前の年齢は?

ページの先頭へ