あだち・だいすけ / 愛知県出身。高校卒業後、起業を夢見てフリーターを続け、27歳で独立。それまでの茶髪&ホスト風スーツを、まじめな若手社長風に切り替えて、遊び仲間に驚かれる。 開業から2年で、静岡県島田市、佐賀県鳥栖市に支店も開設。
商品回収に使う運搬用ワゴン車の中。使用可能な中古電話機だけでなく、故障した機器の基盤も回収。右端に見えるアルミ缶も当然換金する
社会の役に立つような仕事で起業したいと考えるようになったのは20歳過ぎ頃からです。高校卒業後はフリーターとしてアルバイトを続けていました。就職して落ち着いてしまう自分がイヤだったからです。今なら、ある程度の規模の企業に就職しておけば学ぶものも大いにあったはずと思えるのですが、当時は若さゆえのおごりもあって(笑)。
漠然と思い描いていた起業ですが、オフィス用の電話機を販売する会社でテレホンアポインターのバイトをしていたある日、新しい電話機を設置した会社から回収されてきた中古の電話機の山を見て「あっ!」とひらめいたんです。「まだ使えるものばかりだ。コレって欲しい人がいるんじゃないか?」と。
レトロなピンクの公衆電話もマニアが欲しがる貴重な品。後ろのワゴン車がネットオークションから、4万2500円で落札した営業車両
そこで、そのバイト先の社長に了解を得て、試しに売ってみることにしました。いや、いきなり開業したわけではないんですよ。まずはネットオークションに出品したんです。すると、オフィス用電話って、少なくとも3?5台ほどが1セットになっているのですが、10セットが1週間で売れてしまい、約20万円の売り上げが。コスト削減が当然の世の中、中古の電話機が欲しいという中小企業がたくさんあることを実感したんですよ。
いろいろ調べて見ると、オフィス用電話機の配線工事を行っている会社も、工事のみを専門にやっていて、販売を行っているところはほとんどありませんでした。ましてや中古品の販売ですから、これは競争相手も少ないぞと開業を決意。リサイクル全盛の世の中ですが、オフィス用電話機に関しては、まさしく“隙間”だったんですよね。
開業に当たって強く心に決めていたことは、できるだけお金をかけないということ。とりあえずの出費といえば、販売する中古電話機を回収するためのコスト。当然自分自身で回収することにして、中古の運搬用ワゴン車を4万2500円で購入しました。これもネットオークションで(笑)。
動き始めると、オフィス用電話だけでなく、昔のダイヤル式電話や公衆電話に使われていたピンク電話や赤電話もマニアが欲しがっていることがわかりました。また、捨てるだけだったケーブル類や、故障して使えない機器の基盤に使われている銅など、金属類もリサイクル業者が買ってくれます。いらない人にとってはゴミ、欲しい人にとっては宝。そのやりとりの仲立ちをするのが当社の役割です。起業前に考えていた“社会に役に立つ仕事”が今できているということ。それが一番嬉しいですね。
高校時代から、いつかは自分の力でビジネスをしたいと考えていました。卒業後に就職しなかったのも、就職してしまったら給料ももらえて、身分も安定するから、安穏とかまえてしまうのでは……、と思ったからです。お金儲けをしたいというよりも、何か社会に貢献できるようなビジネスを展開できればと思っていたところ、中古ビジネス電話の販売を思い立ったというわけです。
300万円で、有限会社にするための資本金です。有限会社にしたのは取引先に信頼してもらえると考えたからです。この資本金には手を付けずに、できるだけ早く利益を出すことを目標にスタートしました。仕入れはタダでできるのだから、この際出費も徹底的に減らそうと、事務所は自宅の一室、従業員は雇わずに動き始めました。運転資金として当初出費したのは、名刺代、それに交通費と電話代くらいで、合計しても数万円です。
フリーター時代にコツコツと貯めておいた貯蓄です。絶対に自分の力で開業してやると心に決めていましたので、できるだけお金を使わずに貯めておくということを実行できました。
両親には大反対されました。心配されたというよりも、お前がそんな仕事をしても続くわけがないと言われてしまいました。ショックだったのは、ある友人から、何でそんなに金儲けをしたいんだ、という反応しか見せなかったことです。金儲けをしたいんじゃなくて、社会貢献になるような……、などと言っても信じてもらえそうになかったので、よーし、結果で見せてやろうと。かえって熱意が倍増しました。
もし失敗してもゼロに戻るだけで、マイナスにならないようにスタートしましたから不安はありませんでした。資金繰りに困って借金するくらいなら、その時点でやめると決めていたんです。何しろ、売るものはタダで手に入れてくるという商売ですから、仕入れにお金をかけるという発想は皆無でしたね。
インターネットでいろいろなことを調べました。異業種交流会というものがあることも、インターネットで知りました。いろいろな交流会に参加するようになって、情報を得るというよりも、参加している人たちの意識の高さに大いに影響されましたね。大勢集まっても愚痴を言う人はいなく、夢や思いを語り合って、お互いに励まし合って前進していく先輩たちの姿に感動すら覚えました。
異業種交流会で知り合った先輩たちです。特に、ある交流会を主宰している女性が、時にはやさしく、時には厳しく、常に叱咤激励してくれたことが励みになりました。交流会の開始時間に遅刻した時も、時間を守ることがどんなに大切か、真剣になって怒ってくれたんです。フリーターからの独立ということで心配してくれていたようで、「かわいいから怒るんだよ」と言われて、改めてやる気を奮い立たせることができました。
独立を宣言した時は、何でそんなに金儲けをしたいんだと言って離れていった昔の仲間たちが、ちょっと軌道に乗ったことを知ると、お金があるんだったら貸してくれとか、また仲良くしようという感じで群がってきたことが嫌でしたね。結局、僕は相手にしたくなかったので、そのような仲間たちとは自然に縁遠くなっていきました。
自分の考えで行動し、自分の力で進めた仕事に対価が支払われていると実感できることです。それと、毎日のように新しい出会いがあること。フリーターを続けていたり、会社に就職していたら、出会う人の数にも限界があるはずです。ある人と出会ったことで、憧れていたベンチャー企業の社長とも知り合えるなど、独立前には予想していなかったことが日々繰り返されている今、本当に独立して良かったと思っています。
恐れずに、まず初めの一歩を踏み出してほしいです。しかし、できるだけお金をかけずにスタートすることが重要。最初からきれいなオフィスを用意したいとか、従業員を雇いたいとか、見栄を張る必要はありません。僕なんか、中古ビジネス電話やケーブル類など、ゴミ集めから始めたんですから(笑)。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報