まつお・ひろみ / 大阪府出身。ツアーコンダクターを13年間務めた後、ハワイに移住。マルチメディアスペシャリストとして活動し、2005年に帰国する。物語性や視覚に訴えるコミュニケーションアートを重視したWeb制作に力を注ぐ。
唯一のスタッフであるWebディレクターの加納菜子さんは、松尾さんと「一旗揚げたい!」と、同じ勤務先から共に飛び出した同士
インターネットが普及し始めた1997年頃から、ハワイでWebに携わってきました。でも、長く海外に住んでいたので、日本のビジネス的なトレンドや、日常生活の今風の「フツー」もわからなくて……。携帯電話ひとつ買うにも、四苦八苦(笑)。
独立を意識したのは、自社サイトの制作を行う日本の会社に務めるなかで「これは、人間らしい生活ではない」と気づいた時でした。そこで、まずは日本のWeb制作の現場でコネクションづくりと、ビジネスの動向やスタイルを知ることが大切だと、システム構築などを行う会社に転職。日本語版の業界用語の習得から、人脈づくり、仕事の進め方……と、自分と周りのギャップを埋める作業の繰り返し。結果、独立する直前まで、この会社で日本のビジネスノウハウを勉強させてもらいました。
東京・渋谷という立地にこだわって探した結果、民間のインキュベーション施設に入居。会議室や事務機器も使用でき、家賃も相場より低い
会社員としてWebプロデューサーの仕事をするうちに、「独立したら?」と言ってくれる人もいたのですが、独立するためには、どんな考え方で、何をすべきで、そのノウハウをどこで学べばいいのか、誰も教えてくれないんですね。そこで、通勤電車の車内広告で知った「仕事と女性の未来館」で開催する「起業セミナー」に参加したんです。
まず、セミナーに参加して驚いたのが、自分と同じように、どうやって起業すればいいのか悩んでいる女性がこんなにもいるのかということ。悩みを共有できる同志と出会えたことは、すごく心強かったです。しかも、授業は、独立の心構えから事業の発想法、事業の立案方法など、ゲーム感覚で教えてもらえる内容。楽しんで笑って学んで、授業が終わった後は、仲間とお茶をしながら、授業内容を共有できましたから、のみ込みもとってもスムーズでした。
そして、独立準備の最終段階に入り、会社設立登記をすることに。でも、最初は自分でやるつもりだった設立登記になかなか時間が割けなくて……。ならば、プロに依頼しようと考えたんですが、知り合いもいないですし、良心的な金額でトラブルもなく、親身になって相談に乗ってくれる専門家ってどうやって探せばいいのかもわからない。結局、セミナーの講師だった方に相談し、司法書士さんを紹介してもらいました。
「持つべきものは、専門家を紹介してくれる人!」ですね。私の場合、会社設立にまつわる専門家にコネも人脈もありませんでしたから。貴重な情報を紹介してくれる人に出会うためには、自分からアクションを起こすことが本当に大切です。あのセミナーに参加してなかったら、今もまだ、会社員のままだったかもしれません。
ハワイから帰国後、日本の企業でWebプロデューサーとして勤務し始めたのですが、仕事の現場は劣悪な環境のうえ、内部トラブルに巻き込まれるなどして、私を含めた多くの社員が辞めていきました。一緒に働いていた仲間の叫びに、彼ら、彼女らのために何とかししたいと思ったのが、独立のきっかけです。この業界は生活がすごく不規則で、夜遅くまで仕事をするのは当たり前。そんな病んだ環境ではない仕事場をつくりたかったんです。
800万円です。そのうち500万円は運転資金。半年間は仕事がなくても、私についてきてくれたスタッフに毎月ちゃんと給料を支払える状態にすること。安心して仕事に集中してもらいたいと考えたのです。
300万円は、家を住み替える際、自宅を売却して得た金額の一部を充てました。残りの500万円は、国民生活金融公庫からの借り入れです。融資を申し込む際、かなり緊張したのですが、起業セミナーで学んだとおりしっかりした事業計画書を提出したおかげであっさり満額OK。これが、拍子抜けしてしまうくらいのスムーズさで(笑)。
父親からは「本当にできるのか?」と少し心配されました。まっ、身内ですからね。ほとんどの人が賛成モードで、独立前に勤務していた会社の方には応援団になってもらえました。友人からは「何をしでかすことやら……」なんて言われたりもして(笑)。
セミナーに行くまでは、独立には何が必要で、どうすればいいのかまったく知りませんでしたし、なにせ、世間知らず。ぬるま湯に浸かってボーッと暮してきたので(笑)、人一倍不安でしたよ。今だって継続的に仕事を得られるかとか、将来的なことをもっと考えないとヤバいとか……。独立した後も不安はたくさんあるものです。
セミナーやセミナー仲間から得られた情報が大きいですね。『アントレ』や、別冊の『独立事典』も、もちろん読みましたよ。また、セミナー講師だった増田紀彦さんの書籍『正しく儲ける「起業術」』や『起業・独立の強化書』は私のバイブルです。
セミナーで出会った講師の方や仲間はもちろん、雑務関連の話は勤務していた会社の総務スタッフに、経営関連は前職の上司にも相談に乗ってもらっていました。ツアーコンダクター時代の仲間との関係も続いているので、そういった異業種で頑張っている人も大切な相談相手です。
オンラインバンキングを導入したので、銀行との取り引きはスムーズになりましたが、もともと経理や事務的な仕事が大の苦手で……。結局、苦手なことは得意な人に任せたほうがいいと判断し、会計事務はプロにお願いしました。
背中にどっしりと乗っていた魔物が突然消えたかのように、スッキリしたこと(笑)。仕事での疲れ方が勤務していた時とは全然違うんですよね、不思議と。休日も、どうしても仕事のことを考えてしまいがちですが、それも楽しいこと。ただ、定期的に休むことを習慣にしないとメリハリが付かないので、ちゃんと休むよう自分に言い聞かせてます。
経営者としてお手本となって、自分に助言してくれるメンターを持つことは大事だと思います。心の支えにもなりますから。そういう意味でも、起業セミナーに参加するのはとっても重要ではないでしょうか。「何から始めればいいのかわからない」なら、なおさら参加すべし!ですよ。起業に必要なノウハウを得られるだけでなく、人とのつながりに広がりが生まれますし、勇気もわいてきます。自分ひとりだけでは独立できませんから、出会いを生かして!
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報