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本の出版が思わぬ効果を生み出した
2004年末に、私の本が2冊連続で出版された。『限界を乗り越える学ぶ技術・今の自分に満足できないあなたへ』と『東京で伝説になった就活トレーニング・ジコピー道場』の2冊だ。
この2冊を出版して気づいたことがある。それは「本を出す」ことによって、「自己成長」が促進されるということだ。どういうことか? 起業家を目指す『アントレ』読者の皆さんの中にも、いつか自分の本を出版したいという人がいるかもしれない。そこで、今回本を出して私の身の回りに起こった現象について報告してみよう。
本が発売されてまだ1週間もたたない頃から、インターネット上で私の名前検索のヒット数が急増していった。私自身の情報は、これまでにも少しずつ伸びてはいた。研修、セミナーを全国で行っているので、そのたびに私に関する情報がインターネット上に蓄積されていく。しかし、これほどまでに急激にヒット数が伸びたことはかつてなかった。理由は、本が活字を扱う媒体であるからだということがほどなくしてわかった。本は活字を扱っているので、もともとその情報があらゆるところに流れやすい。例えば本を1冊書くだけで、著者のプロフィールなど様々な情報がいろいろなところに掲載されやすくなる。ネット上の書籍販売サイトはもちろん、図書館の新刊本のコーナーまで、驚くほどのスピードで情報が流れ出す。
そして数週間が過ぎると、今度は本を読んだ人からの感想も増えてくる。
「最近読んだ本の中で、とても面白かった本をご紹介します。ビジネスパーソンは必見です!」
「久しぶりにオススメ本を紹介します。今回は高校野球とは直接関係ありませんが、球児や指導者の方にもぜひ読んでもらいたい一冊です」
私の本を読んだ方からのこういった投稿が、インターネット上で次々に見られるようになっていった。これらの情報は私にとってとても参考になった。どこが面白かったのか、どこが役に立ったのかを、実に正直に具体的に書いてくれているからだ。
ここで大切なことは、本は大多数の人に自分の思いを伝えるツールであると同時に、大多数の人から大量のフィードバックを受けることができるツールでもあるということだ。それが通常では手に入らないような速度で、自分から外部に、そして外部から自分に戻るサイクルが生まれる。これが自己成長をもたらしてくれるのだ。
アクティブラーニングの基礎理論に、「自分の思いをアウトプットすれば、他者のフィードバックによって、自己成長は促進される」という考え方がある。今回、本の出版を通じて、このことを身をもって体験することができた。本を出せば、急激に自己成長の速度は加速していくのだ。
ブログで行動パターンが変わった!
さて、そこで皆さんにもお勧めしたいのが、「自分の思いを文にして周囲から評価を受ける」という行為だ。本を出すことをひとつの目標にすればいいのだが、ちょっと敷居が高いという方向けにお勧めの手軽な方法がある。
今、インターネットで利用者が急増している「ブログ」というサービスをご存じだろうか? これを「自分を成長させるためのツール」として利用するのだ。「ブログ」サービスをよくご存じない方のために、簡単に仕組みを紹介しよう。ブログは今までのホームページに比べ、自分の書いた文章や写真データなどを簡単に公開できるツールだ。驚くほど簡単である。これまでのホームページだと、多少、ホームページ作成上のスキルやノウハウがなければならなかったが、ブログを使うと、誰でも簡単に自分の思いを「世界」に伝えることができる。インターネットは文字どおり、世界とあなたをつなげる窓口だ。ブログに書き込んだあなたの思いは、理論的には世界中から「フィードバック」を受けることを可能にしてくれるのだ。
ブログを利用した簡単な自己成長の例を取り上げてみよう。私が教鞭をとっている大学院で、どうしてもやる気が起きず自分の研究が進められないという学生がいた。「真面目にやれ!」と叱責するのは簡単だが、誰でもそういう時はある。宿題を忘れた。教師に怒られた。やる気が失せた。すると次にやるべきこともつい、おっくうになってしまう。そんな小さな失敗が積もりに積もって、クラスに参加することも嫌になっていったという次第だ。
どんどん落ち込んでいく学生を見かねて、この負の連鎖を断ち切るためにブログに自分の行動を投稿し、公開することを勧めた。情報をアップしたら、その旨をゼミ生のMLで報告する。そしてゼミ生に、できるだけ彼のブログにコメントを書き込むよう協力を要請した。こんな単純なことが、彼の行動パターンを翌日から劇的に変えてしまうことになった。
彼はゼミが終了したその日のうちにブログを公開することにした。帰宅後すぐに、ブログを作成し、ゼミ生にメールで告知した。「ブログ開設おめでとう!」というフィードバックメールが彼のもとに次々と届いた。彼は喜んだ。そして、「明日はこういった行動をする」と、そのブログ上で宣言した。さらなるフィードバックコメントが彼にもとに届いた。彼は翌日、宣言どおりの行動を取った。そこからは面白いように、彼の行動が変わっていった。「ゼミの研究のために、ある会社を訪問する」とブログで宣言したのだ。ゼミ生からコメントが入った。彼はそれらのフィードバックを読んでまたまたやる気を出した。朝の3時に「今日は、会社訪問の日です。ちょっと緊張して、目が覚めてしまいました。でも皆さんの期待にこたえるために頑張ります!」といった投稿が見られた。早朝からやる気満々だった。彼はその日、3D表示対応の眼鏡型ディスプレイを開発した会社を訪問した。その会社での訪問リポートは実に興味深いものだった。そのリポートはゼミ全体にとっても大いに参考になるものであった。宿題すらできなかった学生が、数日間でどんどん前向きに変わっていくのを見るのは驚きですらあった。
今晩、ブログを公開しよう!
ここで重要なことをお伝えしておく。ブログが世界的にはやっている理由は、情報を簡単に公開できるツールであるという以外に、ブログがインターネット上の「アウトプット&フィードバック促進装置」であるというところにポイントがある。「思いをアウトプットしやすく、かつフィードバックしやすくした」。そこにこそ、ブログ流行のポイントがある。
人間は基本的に、周囲の人々が自分に対してどう考えているのかに強い興味を持っている。アクティブラーニングで「発力」という技術がある。自分の言動に、他者からのフィードバックを受けることで強いエネルギー(=やる気)を発生させるというものだ。ブログはインターネット上でこれを可能にした。フィードバックをもらいやすくするという単純な仕組みが、自宅にいながらにして、「自己成長」を可能にするのだ。
今日の自分に満足できないあなたへ! ブログをつくろう。立ち直ったゼミ生のように、今晩、すぐに自分のブログを立ち上げて、友達、同僚、上司や部下に、ブログ公開の告知を行うのだ。そこにどんなことでもいい、今、自分が興味を持っていることを「アウトプット」してみる。起業家になることがあなたの夢であるのなら、そのことをアウトプットしてみよう。そして、できるだけ多くのフィードバックをもらえるように、具体的な体験や、読む人にとっても有効だと思える情報もアウトプットしてみよう。それらのアウトプットにフィードバックがどんどんされる流れができれば、あなたの生活は劇的に変わっていくに違いない。
今晩、ブログを始めよう!
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アクティブラーニングスクール代表
羽根拓也 |
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日本で塾・予備校の講師を務めた後、1991年渡米。ペンシルバニア大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカで高い評価を受け、94年、ハーバード大学より優秀指導教授賞(Certificate
of Distinction in Teaching)を受賞。日米10年以上にわたる教育活動の集大成として、97年、東京・神田に「アクティブラーニングスクール」開校。これまで日本になかった「学ぶ力」を指導育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。新世代教育の旗手として教育機関、政府関係機関、有名企業などより指導依頼がたえない。
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