起業を選ぶ女性たち ENTRE WOMAN

(有)ボタニカルプラネット  代表取締役
上野 雅子 さん(42歳)
守随 智子 さん(42歳)

(有)ボタニカルプラネットは、女性2人で起業した会社。共同経営をすることは難しいといわれるが、成功させるポイントは?と尋ねると、

「お互いを尊重して、相手のことを信頼するのが鉄則ですね」

という答えが返ってきた。円満経営の秘密はそんなところにありそうだ。

経営者のひとり、上野さんは大学卒業後、日系航空会社で客室乗務員として7年半勤務。仕事は楽しかったが、年齢を重ねるごとに、体力の限界や将来への不安でストレスを感じていた。

「癒やしを求めてアロマセラピーに興味を持ちました。会社を辞めてオーストラリアに渡り、日本にはまだなかったアロマに関する勉強を重ねました」

一方の守随さんは、芸術大学を卒業後、スペースデザインの勉強をするために、イギリス、アメリカに留学。帰国後、家具メーカーのインテリアデザイン担当となり、家具づくりやインテリア設計の仕事に携わった。

「今度はもっといろいろな仕事にトライしたいと思い始め、独立を決意しました。フリーランスとなって、店舗設計や内装など、デザイン全般や設計までも手がけられるようになりました」

そんな2人が出会ったのは、名古屋市内で開催されたある異業種交流会。

「上野さんが勤務していた会社で扱うアロマグッズを、私が設計した店舗に取り入れたりしていたんです。そのうち、自分もアロマにとても興味を持つようになりました」

と、守随さん。

アロマがきっかけとなって親交を深め、同世代の2人が打ち解けるのは早かった。お互いの顧客を紹介し合い、それぞれの仕事につなげていく。今まで一人では手が回らなかったことも、2人なら効率的に回すことができた。

「一緒に会社設立をすれば2倍速で伸びる、と思ったんです。2人が納得して勧められるアロマ関連の商品を、取り扱おうと決めました」(上野さん)

アロマグッズだけでなく、客室乗務員時代に上野さんが海外で出合った雑貨などの販売・卸を行う企業を目指し、起業準備に入った。

1999年8月、ボタニカルプラネットを設立。まずは、オリジナル商品の開発・輸入を行い、合い間をぬって2人で営業開始! 北海道から沖縄まで、ホテルや土産店、観光施設、美術館などを回り、商品の提案を行った。

「今まで営業経験などなく、彼女がいなかったら、どうにもなりませんでしたね。でも2人だからこそ、頑張れたと思います」(守随さん)

ある美術館では、オリジナルグッズの企画のほか、ショップコーディネートまで任せてもらえることに。守随さんの今までの経験を、大いに役立てるチャンスだった。ほかにも、展示会や百貨店の催事に参加して、輸入雑貨の販売にも注力した。

「最初はアロマが主流でしたが、海外からまだ輸入されていない、オリジナリティの高い雑貨も扱うようにして、差別化を図りました。商品は、主にヨーロッパなどから輸入しています」

HPのトップ画面は、おしゃれなアクセサリーが並べられ、目を引くつくり。楽天にも出店しており、商品は今や2000点を超える充実ぶり。

そんな彼女たちの仕事スタイルには、特徴があった。名古屋と東京にオフィスを設立。デザインやWeb管理を行う守随さんが、名古屋事務所を統括。営業を担当する上野さんは、企業数の多い東京を拠点に活動を行い、営業部門の責任者でもある。商品仕入れは2人で相談しながら行う。

「私は、彼女のデザインに関する感性を信頼していますから、ネットショップの運営は、安心して任せています。その分、人前に出ることに躊躇しない私は、商品を売り込むため企業や店に営業する。それに卸販売はラクーンの小売店専用仕入れサイトなども利用しています。お互い自分の能力が発揮できる仕事を担当することで、効率が上がりますよね。それに、今月はネットショップの売り上げがいいから、営業も負けないよう頑張らなきゃ、とか、いい意味で刺激し合えるのもいいですよね」(上野さん)

ついお互いの仕事には口を挟みたくなるもの。でも、そこは相手を信頼する心が大切のようだ。とはいえ、時には衝突することもあるのでは?

「たまにはありますが、距離があるので少し冷却期間を置けば、すぐに戻ります(笑)。普段から、言いたいことはしっかりと伝えることが大切だと思いますね。それより、同じ目標に向かって走っている2人なので、お互いの仕事を見ていて、ぶれないように軌道修正を行うことができるのがいいですね。共同経営はメリットのほうが大きいと思いますよ」(守随さん)

そんな2人に、これから起業を目指す女性たちへのアドバイスを聞いた。

「今はネット時代。情報も集めやすくなり、社会も追い風です」(守随さん)

「女性の社会進出も顕著になり、挑戦しやすい世の中になったと思います。経験やノウハウがなくて躊躇するより、まずはやってみること。道は必ず開けるのですから!」(上野さん)

取材・文
浅子 百合(クレッシェント)
撮影
鈴木 慶子
PERSONAL DATA
開業資金
開業資金の1000万円は、全額名古屋市の創業者支援融資を利用した
技術の修得
Webをはじめデザインに関することは守随さんの経験を生かし、営業やアロマ関連は上野さんの経験を生かす
労働時間・休日
日曜日はなるべく休むようにしている。1日平均11〜12時間は勤務している
収入
社員を増やしたり、商品を充実するなどの会社投資に回した分前職より減ったが、売り上げも伸びていて、今後に期待
会社概要
所在地 :名古屋市中区(東京支社は東京都世田谷区)
設立年月 :1999年8月
資本金 :1000万円
売上高 :1億円(2006年5月期)