「アナタは3年後、どんな自分になっていたいですか？」

そう聞かれて、すぐ答えられる人は少ないだろう。未来の夢（ビジョン）を描き、それに向かってドリームマップ（夢への地図）をつくることを推奨しているのが、（株）エ・ム・ズの秋田さん。

短大を卒業後、大手保険会社に就職。

「最初は契約が取れず、焦りながら仕事をしていました。ある日、口コミで紹介を受けたことがきっかけで次々と受注。1年目でトップセールスとなり、年収1000万円を稼ぎました」

しかし、3年後の23歳で結婚を決意するとあっさり退社。翌年出産して、憧れの専業主婦生活を送っていた。

「でも、26歳になって30歳の自分を想像した時、社会と接点のない自分に不安を覚えました。働きたいと思いパートの面接に行きましたが、すべて断られて。その時初めて、私には手に職が何もないことを実感しました」

イベント用品レンタル会社の仕事を始めるも時給720円。以前の仕事や給与とのギャップに納得がいかない。もっと時給のいい仕事に就きたいと考えた秋田さんは、PC（パソコン）インストラクターの仕事を知る。講習に参加すると、自分と同じ主婦がイキイキと講師を務めていた。そこでPCインストラクターになることを即断。

「でも、派遣会社の面接ではスキルがなくて落とされてしまったんです。その後半年間は一生懸命に勉強をして、ついにPCインストラクター資格を取得。講師として働き始めました」

フリーのPCインストラクターとなり、充実した日々を送っていた秋田さんに、大学が運営するオープンカレッジの中のパソコン講座請負依頼が入る。その仕事ぶりを見て、大学から「法人化してくれればカリキュラム作成の仕事を発注したい」との提案が。

「この時初めて会社をつくるってどういうこと？　社長になるって何？　と考えました。今までそんなこと考えたこともありませんでしたが、そのひと言で起業を意識し始めたんです。大きな仕事を受注できる見込みもあるし、こんな絶好のチャンスはない！　と思い、有限会社設立を決意しました」

2000年8月、（有）エムズコンピュータを名古屋市で開業。インストラクター仲間たちにも協力を仰ぎ、30人の講師も確保できた。そして1年目ですでに売上高6000万円を達成。2年目には、売上高1億2000万円となり、講師は70名にも増えた。

「3年目に、気持ちに変化が起こり始めました。燃え尽き症候群なのでしょうか。『これが本当にやりたい仕事？』と自分に問いかける毎日。その頃、PCが急速に浸透しパソコン教室は減少。会社の売り上げも１億円を切り、先行きがとても心配になりました。今後はハードを操作する時代ではなく、コミュニケーションを大切にしたソフトの時代がくると思ったんです」

以前から興味のあったコーチングの道を本気で考え始めた。人は目標設定して行動すれば、想像以上の力を発揮し、飛躍する。「目標を見失っている人たちの力になりたい」という強い思いが、彼女をコーチングの道へと動かした。1年間会社をスタッフに任せ、秋田さんはコーチングの勉強をするために会社を離れることを決めたのだ。

1年後、会社設立から4年目に、有限会社エムズコンピュータは、業態転換を図り（株）エ・ム・ズへと社名変更と改組を行った。コーチングを事業の中核に据え、PCインストラクターのうち、コーチングに興味のあるスタッフ30名を集め、新たにスタート。

秋田さんは、まずコーチングに関する書籍を出版して、それを足がかりにセミナーの仕事を開拓。PC関連の仕事をほとんど断ち切ったため、もう後戻りはできない。事実、4、5年目の売り上げは前年比約20％ダウンした。

「内心とても不安になりましたが、将来を考えると今が頑張りどころ。一層新規の仕事に励みました。その後、徐々にセミナーの仕事が増え始め、コーチング会社としてのエ・ム・ズの知名度も上がってくれたのです。今は、『3年後なりたい自分になれるドリームマップ』のつくり方セミナーを中心に展開。3年後に目標をおいて、そうなるためには今から何をしなければならないのか、考えてもらうんです」

このセミナーが好評で名古屋のみならず、全国を駆け回る。2006年8月には、念願の東京オフィスもオープンし、名古屋と東京を行き来する日々。特に、同年代の女性に共感してもらい、彼女たちが輝ける社会を目指す。今、彼女がもうひとつ提唱しているのが、子供の夢を応援する社会を創ること。

「今後は、企業研修も積極的に手がけて、女性の意識改革や女性活用の必要性を説いていきたい。それと、これは営利活動ではありませんが、子供の夢を応援する活動を行っていきたいんです。輝いている人が世の中に満ちあふれていれば、日本の未来ももっともっと明るいですからね！」