がん告知で人生をリセット。
広告関連会社を起業して奮闘中
「がんを患ったことで、人生が一変しました。今をしっかり生きなければと思い、仕事にも今まで以上に打ち込むようになりました」
有限会社ネーマック代表取締役・熊谷めぐみさんは、35歳の時にがんの告知を受ける。その大きな経験が、彼女の生き方を変えたという。
東京に憧れ、都内の4年制大学に進学。卒業後は、名古屋にある食品メーカーにUターン就職し、マーケティングの仕事を任されていた。24歳で結婚し、その後広告代理店に入社。マーケティング部で女性向け商品のプランナーとして仕事を順調にこなしていた。しかし、熊谷さんは心の中で何か満ち足りないものを感じ始める。
「社内での評価は上がるものの、本当に実力が備わっているか不安でした」
そんな時に彼女の身に思いがけないことが起こる。がんと告知されたのだ。幸い早期発見のため完治するが、その心には大きな変化が起こっていた。
「それまで学校も仕事もかっこ良さだけで選んでいたんです。でもいつ死ぬかわからないと実感し、本当にやりたいことは何かを考え、今後はもっと仕事に注力しようと決意したんです」
熊谷さんは、さらに精力的に仕事に打ち込んだ。しかし2年後、新たながんが見つかってしまう。
「もっといろいろなことに取り組まなければと、以前より焦りました。復帰後はさらに仕事の精度を上げ、胸を張って自分の実績と言えるような仕事を心がけたんです。おかげで指名が増え、お客さまからの信頼も厚くなりました」
積極的に仕事に取り組む中で、熊谷さんは仕事のあり方を考えるようになっていた。会社で上司の顔色をうかがいながら業務を進めるのではなく、自分の思うように仕事がしたい。独立という言葉が初めて彼女の胸をかすめた。 「独立して本当にやれるのか、不安はありました。でも、今を大切に生きると決めた私は、以前より勇気を出すことができたんです」
2005年5月、(有)ネーマックを設立。前職で培ったスキルを生かして、女性向け商品やサービスの広告プランニングを中心に請け負った。以前の仕事で信頼を得ていた顧客から、新規案件を獲得。起業当初は、自分と在宅で業務アシスタントをしてくれる友人の2人だったが、1年後、新たに女性1人が加わった。
「それまでは1人で営業から制作まで担当していましたが、2人でクライアントを新規開拓するなど、個人事業でなく会社として仕事をするメリットを出せました。現在は『名古屋の女性マーケティング』に強い会社として同業他社との差別化を図り、小さいながらも強い会社づくりを目指しています」
今では大手航空会社の女性向けイベントや食器メーカーのプランニングなど、取引先も多岐にわたっている。
「一度の人生だから精いっぱい悔いなく生きたいですね。今後、社員も増やして事業の拡大も目指したいです」