自分の部屋のようにくつろげる
居心地のいいカフェをつくりました
住宅街にあるカフェ「Room-1022」は、知らずに通ると見逃してしまいそうなほど。でも、店内に一歩足を踏み入れると、オーナーのこだわりが随所に散りばめられた、素敵な店ということが一目でわかる。
オーナーの斎藤千鶴さんは、福岡にある服飾の専門学校を卒業後、「東京に出たい!」という一心で上京。婦人服などの販売員をしていたが、自分の時間が多く取れる派遣社員に転向。百貨店で婦人靴の販売員をしていた。
「でも、自分に接客業は向いていないと思っていて、いつも職場に居心地の悪さを感じていたんです」
すべてのお客に受け入れられなければならないというプレッシャーが、いつしかストレスとなっていた。
「30歳を前にして、満足していない仕事を今後も続けるのはイヤでした。やりたいことや夢のストックはたくさんあって、自分が納得できることがしたかったのです。私はモノをつくることが好き。中でも、そこにある材料と自分の持っている情報を組み合わせて、新しい料理を生み出すことが特に大好きなんです。その表現の場をつくろうと、飲食店開業を決めました」
彼女が目指すのは、「自分が居心地のいい店」。カフェを選んだのは、自分の持っている情報、外から得る情報、技術などを生かして、その時々に合わせた変化ができることが、この仕事に向いていると思ったから。
自宅のある東京・吉祥寺近辺で物件探しを始めたがなかなか見つからず、挫折しかけた時、住宅街の中に小さな空き物件を見つけた。
「天井が高いのが気持ちよくて、自分にとって居心地のいい場所というコンセプトどおりの店になると確信できたんです。最低限の内装は業者に任せ、ペンキ塗りやタイル貼り、カウンターづくりは、友人や妹たちとやりました。なるべく自分が持っていたものなどを使って、出費を抑えるとともに、手づくり感を演出したんです」
こうして2002年4月、「Room-1022」をオープン。開業当初は妹が手伝ってくれたものの、現在まで一人で店を切り盛りしている。
「最初から自分でやれることだけをやろうと思ってました。そのほうが自由にできるし、ラクですからね。その代わり、結果はすべて自分にはね返ってきて厳しい面もありますが、自分が選んだやり方ですから頑張れるんです」
店には、近所のSOHOワーカーなどがリピーターとして訪ずれている。
斎藤さんは最近、今の自分はみんなに支えられていると感じることが多いという。足繁く通ってくれるお客や、「万が一の時にはいつでも駆けつけるよ」と言ってくれる知人がいることが、彼女を勇気づけているのだ。
「店を始めて、人のやさしさに触れる機会が増えたことがうれしいですね。今後は、この店を情報発信や表現の場として、多くの人に利用してもらい、素敵な出会いの場にしたいです!」