お寺でエステティック。
心身ともに癒やされますよ
音楽一家に生まれた吉田さんは、幼少の頃からピアノにいそしみ、音楽大学に進学するが、卒業後は別の道へ。
「今まで音楽しか知らずに育った私だったので、ほかの世界も見てみたいと、結婚の道を選びました。専業主婦になって、家事や子育てに励んでいました」
ところが、そんな幸せな日々を送る吉田さんを、ある出来事が変えた。
「32歳の時に甲状腺がんが見つかったんです。その時に自分の生き方を見つめ直し、何となく毎日を過ごすのではなく、目的を持って生きていこうと」
近所の子供たちにピアノを教える音楽教室を開校するが、素質ある生徒を見つけても、上達する頃には「受験だから」と、教室を去っていってしまう。
「何のために教えているのかと、少しむなしくなってしまって。もっと別なことをしたいと考えるようになったんです。その時、以前から興味を持っていたエステをしたいと考えました」
すぐに知人からエステ店を紹介してもらい、修業させてもらう代わりに無給で仕事に励んだ。しかし、アシスタント業務ばかりで、技術やノウハウも教えてもらえず毎日が過ぎていく。
「これではいつまでたっても覚えられない。化粧品メーカーのエステ研修を知り、そちらに通いました」
ひとつの化粧品メーカーの研修を皮切りに、ほかのメーカーの研修も受講し、着実に経験を積んだ。
「エステは未経験分野でしたが、指先を使うということがピアノにも共通していて、習得は早かったです。経験を積み自信も持てたので独立をしたいという思いが強くなって……。自分が目指していたのは、究極の癒やし空間でお客さまをゆっくりお迎えすること。そのスタイルを実現するためにも、自分でサロンを開きたかったのです」
開業資金を安くしたいと吉田さんが目をつけたのが、実家のお寺。広い敷地に使っていない離れがあり、そこをサロンスペースにしようと思いついた。
そうして2000年9月に、エステティックサロン「ティラ」を開業。当初は、低価格に設定し多くの人に施術していた。しかし、人数をこなすには気力にも体力にも限界があった。
「私の手技を気に入って来てくれるので、ほかにスタッフを入れても問題は解消しない。不安もありましたが、内容を充実させて一人にかける時間を長くし、その分値上げをしました。1日1人を原則として最大2人まで。お客さまが施術前後にもゆっくり過ごせるようにしました。私が目指していたエステサロンの姿に近づけたのです」
サロン名も「ソワンエステ ティラ」に変え、再スタート。儲けも大切だったが、個人サロンだからこそ実現できるスタイルで営業している。
「事業の拡大は考えていません。自分を慕ってきてくれるお客さまに、これから先もずっと、安定したサービスを提供できたらいいなと思っています。人生はお金だけでなく、やりがいこそ大切。これからも楽しく続けます!」