お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.100, 居酒屋
海鮮居酒屋 本丸  の場合
インタビュー
海鮮居酒屋 本丸
オーナー・長谷島 晃さん(39歳)

恵比寿につくった昔スタイルの居酒屋。
中高年男性にウケ、一気に繁盛店に!
PROFILE
はせじまあきら/1967年、東京都生まれ。大学卒業後、外資系通信会社に就職。光ファイバーやケーブルコネクターの販路開拓の営業部門に所属。5年前から飲食店経営に興味を持ち始める。親戚が経営する飲食店の撤退を機に、飲食店の開業を決意。2006年1月、現在の店をオープンさせる。昼間は企業の営業部長として、夜は店舗経営者として、忙しくも充実した日々を過ごす。
開業のノウハウ
 
 外資系IT企業に勤務する会社員が恵比寿で飲食店を営んでいるとなれば、さぞかし国際色あふれるおしゃれな店だろうと想像してしまう。ところが、長谷島さんがつくったのは、本人いわく「どこにでもあるようなベタな居酒屋」だった。
 カウンターには大皿料理が並び、テーブル席のほかに座敷もある。壁にはメニューの短冊が張られ、日本酒や焼酎の一升瓶が鎮座。確かに「どこにでもある、昔ながらの居酒屋」だ。いや、おしゃれな飲食店がひしめく恵比寿という街にあっては、むしろ新鮮にさえ感じるかもしれない。これこそ、長谷島さんが考え抜いたコンセプトであり、開業後まもなく繁盛店になった勝因でもある。
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“行きつけの店”になりたい!会社に勤めながら、夜は居酒屋経営


 果物屋を営む実家で育った長谷島さんは、幼少の頃から会社員に憧れ、企業で働く道を選択した。しかし「自分の中の“商売人のDNA”が目覚めた」という長谷島さんは、次第に飲食店経営への興味を持ち始める。同じころ、うなぎ店を営む親戚が1年後に撤退するとの情報を得る。場所は恵比寿。一から店舗を構えるとなれば、相当な資金がかかる人気の街だ。でも、今なら恵比寿に出店できるかもしれない。早速、長谷島さんはその物件を合法的に譲り受ける方法を探り、親戚が撤退した後、別の業態で店舗経営する権利を得たのである。
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 しばらくは、会社に勤めながら運営していこうと決意した長谷島さんが最初にしたのは、右腕となる店長を見つけること。
 「二足のわらじでやっていくには、信頼できるパートナーが不可欠だと考えたんです」
 真っ先に声をかけたのは、35年来の親友だった。その親友は、ふたつ返事で店長になることを引き受けてくれた。開店までの猶予期間は約1年。その間、長谷島さんは店長とともに、業態やコンセプトを考え、絞り込んでいくことができた。
 「店長といろいろな店を巡り、どんな形態の店にするかを考えました」
 店長の実家は魚屋。新鮮な魚介の仕入れルートはすでにある。しかし、長谷島さんにも店長にも調理技術はない。それなら新鮮な魚介をメインに、素材の味を存分に楽しんでもらえる居酒屋にしよう。業態が決まった。
 次に、誰をターゲットにどんな居酒屋にするか。街をリサーチした結果、周りには企業がいくつかあり、店の前を会社帰りの男性がたくさん歩いていくことがわかった。周辺には、おしゃれな店はあっても、会社員男性、とくに中高年の人たちが気軽に立ち寄れる店がないことにも気づく。
 「男性なら、行きつけのひとつやふたつ持っていたいのではと思うんです。でも、恵比寿にはなさそう。それなら、自分の手で、40代〜50代の男性たちが好んで通いたくなるような店をつくってはどうかと考えたのです」
 長谷島さんにとって、男性が求める“行きつけの店”の定義は3つ。安くておいしい店。店の人といい関係がつくれる店。親しい同僚や友人を連れていける店。この定義をコンセプトにして、海鮮居酒屋本丸は、昨年1月にオープンした。

温かい雰囲気と家庭料理で心通わせお客の8割が再び店を訪れる

 旬の素材や鮮度にはこだわるものの、刺し身に焼きさば、天ぷらや肉じゃがなど、80種類あるメニューの大半は、居酒屋の定番である家庭料理。値段は380円から1500円。
 スタッフは、お客の顔と名前、酒や料理の好みを覚え、心地いい距離感でもてなしてくれる。
 夕方5時半の開店とともに、勤めを終えた会社員たちが続々と訪れる。「今日は後輩連れてきたよ」と、長谷島さんや店長に話しかけるお客たち。「今から行きたいんだけど」と座席の空き状況を確認する電話も、長谷島さんの携帯電話に直接かかってくる。そんなアットホームな雰囲気に心地よさを感じたお客のほとんどがリピーターとなり、今では8割が常連という。恵比寿で働く会社員にとっての、まさに“行きつけの店”となったのだ。
 経営もオープン時から順調で、現在の月商は開業前の予想を上回る500万円を推移。
 「順調な理由をあえて言うなら、ありそうでなかった、でもずっと求められていた“昔ながらの居酒屋”を、この恵比寿につくることができたということでしょうか。かっこつけないでやろう。その代わり心に訴える商売をしよう。そんな店づくりをしてきたことが受け入れられているとしたら、すごくうれしいことですね」
 こう語る長谷島さんは、すでに2店舗目を視野に入れている。

■オープンまでの経緯
 
2005年1月 飲食店の開業を決意。前オーナーと保証金返済の交渉や、友人に店長になってもらう交渉をする。その後、店長と飲食店巡りをし、コンセプトの構築を開始
2005年8月 正式に物件を取得できることが 決まる
2005年12月 前店舗が閉店すると同時に、 内装工事を開始
2006年1月15日 オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都渋谷区恵比寿1-4-1
平均客単価
昼(ランチ)780円 夜4500円
最寄り駅
東京メトロ、JR恵比寿駅
平均来客数
昼100人/1日 夜55人/1日
電話
03-5421-0303
平均月商
500万円/月
営業時間
11:30〜14:00、17:30〜24:00
経費
210万円/月(家賃、光熱費、人件費)
定休日
日・祝日
仕入れ
売り上げの35%
広さ・席数
30坪/37席

開業のノウハウ