お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.93, ケーキショップ
パティスリーシュクル  の場合
インタビュー
パティスリーシュクル
オーナー・大川奈美さん(33歳)

オープン1年で、たちまち地元の人気店に。
予想を上回る順調な経営を維持
PROFILE
おおかわなみ/1973年、静岡県生まれ。短大の食物栄養科を卒業後、伊豆高原のカフェに就職。その後、結婚を機に上京。代官山のワッフル専門店に転職。ここで店長として、立ち上げから運営まで、ショップ経営の様々なノウハウを学ぶ。2005年9月、現在の店をオープンさせる。
開業のノウハウ
 
 住宅街のバス通りに面したケーキショップ「シュクル」。厨房でお菓子づくりの仕込みをしているオーナーの大川さんが、窓越しから通りを歩く子供連れの若い親子に手を振る。その親子もまた、大川さんに手を振り返す。常連客らしい。
 店のショーケースの上には、「1周年おめでとう」というメッセージとともに、お花がたくさん飾られていた。すべて、常連客から贈られたものだとか。地元の人々に愛されている店ということがうかがえる。
 大川さんは、昔からパティシエを目指していたわけではない。就職したカフェで偶然、厨房を担当し「お菓子づくりの楽しさに目覚めてしまった」ことがきっかけだった。以来、スイーツショップでの仕事を続けた。やがて、お菓子づくりだけではなく、店長として経営やショップの立ち上げにもかかわるようになった。いつか自分の店を持ちたい、という夢を大川さんが抱くのは、ごく自然の流れだった。
 シュクルは2005年9月にオープンしたのだが、実はその半年前に、実家のある伊豆にUターンするという話が持ち上がった。でも、それは大川さんにとっては不本意なことだった。
 「夢をあきらめたくない。物件探しだけでもしたい。それで思うような物件が見つからなかったら伊豆に戻ろう。そう自分で決めて、インターネットで物件探しをしたところ、一番最初にヒットしたのがこの物件でした」
 最寄り駅からはバス便の住宅街。地元の“おなじみさん”に利用してもらえる「街のケーキ屋さん」を目指していた大川さんにとって、それは、イメージどおりの物件だった。元飲食店だったために、設備の基礎工事をしなくてもいい。さらに、物件を仲介する不動産会社も物件のオーナーも、この街にケーキショップができることを大歓迎してくれた。
 「これは運命かもしれないと思い、ここで夢をかなえることにしたのです」
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こだわりは、低価格とからだに安全な素材

 シュクルで常時販売されているのは、10〜13種類のケーキと、10数種類の焼き菓子。ケーキの価格は180〜380円で、このエリアでは低価格の設定だ。また、国産小麦粉や防カビ材不使用の果物やオーガニック食材など、価格だけでなく素材選びにもこだわっている。
 「子供が安心して食べられるお菓子を、気軽に買える値段で提供したい。これが私の一番こだわっているポイントです」
 こんな大川さんのこだわりや思いは、地元の人々に伝わり、受け入れられている。そのことは、オープン当初から予想以上に順調な経営を維持していること、そして、顧客はほとんど近隣の常連ということが証明している。
 オープン時、大川さんはお菓子を持って近隣に引越しのあいさつ回りをしたのだとか。「こんなことしてもらったのは初めて」と喜んでくれた近所の人たちは、オープン時からの常連になっている。
 このエリアには、数年前からマンションや住宅が相次いで建設されている。新しい人の流れが生まれ始めたその時期に、シュクルはオープンした。また、近隣には競合店はもちろん、街の顔となるようなケーキ店がほとんどない。タイミングと環境が、大川さんに味方したというのも、順調な経営の要因だろう。しかし、それだけでは、地元に愛される店にはなれない。味、価格、接客、そしてオーナーの人柄……。地元密着型の店を目指すなら、店づくりにはどれも不可欠の要素だ。

“おなじみさん”を大事に。感動のサービスを生む秘密

 常連客へは名前で接客。でき上がりのタイミングに顧客が居合わせていたら、味見をしてもらうことも。また、「何時に取りに行くからそれまでに用意してほしい」というオーダーが入ったら、できるだけその時間に焼きたてを用意する。乳幼児がいて外出できない家には配達をする。ささやかなことだが、顧客にとってはうれしいサービスだ。大川さんは、これらのことをサービスするという意識でしているのではない。「おなじみさんを大事にしたい」という純粋な気持ちや細やかな心遣いが、結果的に顧客を感動させ喜ばせている。
 大川さんはよく、顧客から電話や手紙をもらうのだとか。
 「『この前買ったあのケーキおいしかったよ』って電話をいただいたり、子供さんから『お姉さんいつもおいしいケーキありがとう』と書かれたかわいいメッセージカードをいただいたり。それが本当にうれしいんです。だってどんなにおいしくても、わざわざお店に感想の電話をくれたり、手紙を書くなんて普通しないじゃないですか。ずっとこの仕事を続けていくこと。それがこれからの目標です」

■オープンまでの経緯
 
2005年6月 物件探しを開始
2005年7月 物件の契約をする
2005年8月 工事着工
2005年9月 10日オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都目黒区目黒4-14-5
第2目黒コーポビアネーズ106
広さ・席数
7坪 4席
最寄り駅
JR目黒駅、東急東横線祐天寺駅
平均客単価
1200円
電話
03-3710-7850
http://www.p-sucre.com/
売り上げ
非公開
営業時間
10:00〜19:00
仕入れ
売り上げの35〜40%
定休日
水曜、第1・第3木曜
経費
40万円/月(家賃、光熱費、人件費)

開業のノウハウ