お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた! |
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。 |
|
スパイスカフェ の場合 |
いつか独立する。大学生の頃からそう考えていた伊藤さんが、4年間の会社員経験を経て独立準備のためにしたこと、それは世界一周の旅だった。まずは世界を見たい。行くからにはテーマを決めて旅をしたい。食べることが好きだから、世界の人々が何を食べているのかを知る旅をしよう。こうして「食」をテーマにした伊藤さんの旅は、ニュージーランドから始まった。あらゆるツテを使い、料理を教えてくれる家庭にホームステイしながら、インド料理やトルコ料理など、世界の料理を学ぶ旅は3年間におよんだ。訪れた国は48カ国。この旅で伊藤さんが見つけた夢、それは、オーナーシェフとして料理店を経営することだった。
「この旅ではいつも、『あなたは何ができるの?』と聞かれました。海外では、何かできないと認めてもらえないということを痛感しました」 帰国後、30歳になっていた伊藤さんには、海外での経験を生かしてすぐに飲食店を開業するという選択肢もあったが、あえてそれをせずに、自分がイメージするオーナーシェフのいるイタリア料理店で修業を始めた。「料理のプロを目指したい。そのためにはきちんとした経験を積みたかった」というのがその理由。独立するならカレーの店がいいと業態を絞り込み、2年後、今度はインド料理店へ。3年間の世界一周の旅と4年間の料理修業。7年という時間をかけて、伊藤さんはどんな業界、どんな形態で何をするか、独立の具体的なイメージを固め、基礎をつくり、現在の店をオープンさせたことになる。世界中の料理を食べ学んだ経験、日本でしっかりと身につけた料理人としてのスキル。それらの確固たる土台の上につくられた伊藤さんの店が、繁盛しないわけがない。売り上げは着実に伸び続け、経営は予想以上に順調。現在は予約しないと入れないほどの人気店となった。もちろん、これほどまでに人気店になった理由は、ほかにもたくさんある。 |
|
築45年の木造アパートを7カ月間かけて改装。オンリーワン空間の誕生
繁盛店になった理由のひとつは、独自性の高い空間づくりにある。 木造アパートを改装してつくられた店は、最寄り駅から徒歩約15分の住宅街にある。しかも、伊藤さんの実家の横を通り抜けた奥にあるため、看板がなければ、こんなところに飲食店があるとは誰も想像しない場所。この場所で開業することを決めたものの、オープンするまで「こんな不便な場所に果たしてお客さんは来てくれるのか?」という不安を拭うことができなかったという。しかし、ここは実家の敷地内で、建物も実家のもの。家賃もなし。建物は、かつてアパートとして使われていた築45年の木造一軒家。単なる古い廃屋としか見ていなかったが、建築家の知り合いに建物の良さを気づかされた。さらに、建物の歴史を調べていくうちに「この建物の雰囲気を生かし、リフォームして店をつくろう」と思うようになった。「金はないけど時間はある」と、改装工事に費やした時間は7カ月。友人知人に協力してもらいながら、解体から床の張り替えまで、設備工事以外のすべてを自分で行った。そうしてつくり上げた店は、日本人のDNAをくすぐる、なんともなつかしく居心地のいい、だけど決して古くさくないすてきな空間に仕上がった。木枠の引き戸、そこから見える庭の緑、歴史を感じる梁や柱、下町に流れる静かな空気……。この店には「わざわざ行きたい」と思わせる雰囲気がある。 |
「最初に決めたことは絶対に崩さない」これが経営の信念
もうひとつの理由は、ゆるぎないコンセプトだ。この空間をゆっくり楽しんでもらいたいと、カレーは夜のみプリフィクススタイルのコースに限定。さらにカフェ機能も充実させた。デザートもパンも一品料理もすべて自家製にこだわった。人との交流、文化の発信機能を持ちたいと、レンタル料無料のギャラリースペースをつくった。毎年2月は1カ月間店を閉め、海外へ料理修業の旅に出る。帰国後はそこで学んだ新しい料理を顧客に提供している。これらはオープン当初、伊藤さんが決めたこと。そして「最初に自分で決めたことは絶対に崩さないこと」という信念を、伊藤さんは貫いている。 信念を持った経営、おいしい料理、そして独自性のある空間……。店舗経営に必要な要素が、この店にはすべてある。当初懸念していた立地条件の悪さなど問題にならないほどに、繁盛店となった理由はここにある。 「オープン当初は、この店が予約でいっぱいになるなんて想像もしていませんでした。ただ、僕は売り上げアップとか事業拡大ということは全く考えていないんです。ここに店を持ったことで、アーティストや街づくり活動をしている人など、新しい人脈がたくさんできました。これまで出会った人たちと一緒に、街づくりに貢献できるような何か面白いことをしたい。次の目標はこれです」 |
■オープンまでの経緯 | |||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||
|
|
|
|
|||||||
|
|
|
|
|||||||
|
|
|
|
|||||||
|
|
|
|
|||||||
|
|
|
|
|||||||