一般社団法人日本健康食育協会/東京都新宿区
1973年、千葉県生まれ。共立女子大学食物学科卒業。2007年、栄養士の専門会社である「食ライフデザイン」を設立、2012年まで代表取締役を務める。現在は「日本健康食育協会」代表理事、「食アスリート協会」副代表理事に就く。また、定食屋チェーン大戸屋の食育プロジェクトのリーダーを務め、国内外で年間300回を超えるセミナーを主宰している。専門家養成、食と健康の事業コンサルティング、講演・執筆など、その活動は幅広い。
大学の管理栄養士コースを卒業後、食品スーパーに就職。以降、フィットネススクール、美容エステ企業、サプリメントメーカーと渡り歩き、「食と健康」にかかわる様々な経験を積んできた柏原幸代。そのすべてを糧とし、2007年に食ライフデザインを設立。栄養士の起業が珍しい中、柏原は、食と健康に関するセミナーや従業員の健康管理を目的とした企業向けコンサルなどの事業を展開し、時代のニーズを取り込んだ。その後、日本健康食育協会を新設、健康教育に特化し、さらなる社会貢献に臨んでいる。
活動の柱である「健康食育マスター講座」は、食と健康教育の専門家養成を目的とするが、理論だけでなく“ストレスのない幸せな食の考え方”に重きを置く。2万人超のカウンセリング経験を凝縮した本講座は、「やせたければ食べるな」といった食の常識を覆す。だが、単に奇をてらった新説でないことは、日本生涯学習協議会(所管内閣府)の厳しい認定基準をクリアした事実が証明している。食に対する「正しい知識」を広めることで、人々の健康で幸せな暮らしを手助けしたい――その起点には、拒食症で命さえ危ぶまれたある少女との出会いがあった。
いいえ、全く(笑)。食べることは大好きでしたけど、食物学科を受験したのには、取り立てて深い意味はなかったんですよ。就活の時も同じで、食というよりは健康にかかわる仕事をしたいと漠然と思っていただけ。でも自分がイメージしている仕事がなかったので、一つの領域に固執せず、社会に出てからはいろいろな分野を経験してみたいと考えていました。
節目節目で周囲の人が助けてくれて、結果的にいろんな経験ができた、というのが実際のところです。自ら「次はあれにチャレンジしよう」と転職したことって、考えてみたら一度もない(笑)。
美容エステの会社では、25歳の時に取締役にしていただいて、ウェルネス事業部というのをつくったんですよ。「食と健康に関するコンサル承ります」という看板を掲げて。そうしたら、糖尿病の人向けのメニューを考えるお弁当屋さんとか、健康志向のラーメンを出したいという食堂とか、予想外のオファーがけっこう来た。で、気づいたんです。世の中には「食と健康」に対する根強いニーズがある。にもかかわらず、それにこたえられる人がいないことに。当時、そんなスタンスで仕事をする栄養士は少なかったんです。
ある時、「食べるのが怖い」という拒食症の中学生の女子を紹介されました。「どうして食べなきゃいけないの?」という彼女の疑問に誰も答えられず、病院に行っても薬を渡されるだけ。摂食障害など勉強したことがない私でしたが、どうしたら救いになるかと、自問自答を繰り返しまして。「あなたの体は食べ物でできているのよ」「人間は、太るために食べるんじゃないでしょう」と語り続けることで、結果的には、拒食症を克服させることができました。
彼女の父親が事業家で、この時私に「独立したら」と声をかけてくれたのです。戸惑う私に「起業できない理由は?」と聞くので、「貯蓄ゼロ、会社のつくり方も経営も知りません」と正直に……。すると、資本金を出資してくれたばかりでなく、「経営は私が教えるから。娘を救ってくれた能力と情熱があれば大丈夫」と、背中を押してくれたのです。ありえないような幸運ですよね。
健康ブームといわれて久しいですが、依然として「どうしたら健康になれるのか」に答えを出せる人は少ないし、残念ながら間違ったやり方も横行しています。一例を挙げれば、2008年に鳴り物入りで導入された「メタボ健診」。始まって以降の5年間の数値改善率って、10%に満たないくらいだったんですよ。対して、私がコンサルした企業では、約80%の改善率を達成した例もあります。一番いけないのは、メタボの人に 「カロリー制限」をかけること。人は一時期我慢できても、どこかでドカ食いしてしまう。そもそも「食べてはいけない」というストレスが、肥満原因になっていることも多いのです。
今、最も必要とされているのは、正しい知識に基づいた「心と体が変わる食」の提案です。制約ばかりではなく、食が本来持つ力や楽しさを私は伝えていきたい。そのためにも、食と健康教育のエキスパートを多く養成し、発する声を大きくしていきたいのです。
食べることは、生きること――。かつて、拒食症の女の子と向き合う中で気づかされたこの本質を広め、人々の健康で豊かな人生に寄与する。それが、幸運の先にたどり着いた私の夢です。
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