NPO法人ソーシャルコンシェルジュ/東京都港区
1969年、北海道生まれ。政府観光局や出版社勤務、欧米ファッションブランドの広報などを経て、2007年に社会問題の解決に取り組む団体を支援するNPO法人ソーシャルコンシェルジュを設立。翌2008年、チベット系民族が生産するヤクの毛を原料としたニットブランド「SHOKAY」の日本代表に就任したのを機に、ソーシャルビジネスを展開するダブルツリー株式会社を設立。NPOと株式会社の協働により、他者や社会、そして環境に配慮したライフスタイルを提案している。
子供の頃から「社会とのかかわり」を強く意識していた林民子が、勤務していた欧米ファッションブランド輸入会社の広報を辞め、NPO法人ソーシャルコンシェルジュを設立したのは2007年。社会問題の解決に取り組むNPOなどが、継続的に事業運営していけるためのコンサルティングやPR活動が目的だった。翌年には、チベット系民族の貧困解決や伝統的な暮らしを守るために生まれたニットブランド「SHOKAY(ショーケイ)」の事業を日本でスタート。同時にダブルツリー株式会社を設立した。現在は、NPOと株式会社の両輪で、社会貢献事業、関連ビジネスを展開している。
彼女が実行するプロジェクトは、例えば障がい者がつくる授産製品とデザイナーなどのクリエイターとのコラボだったり、パーマカルチャー(農業を軸とした持続可能なライフスタイル)を体験するイベントだったり、その活動はとても多彩である。「社会に新しい価値観をもたらすもの、そして“グッドアクション”だと思えるものは広く取り入れ、走り続けてきた7年間。あっという間でした」。そう振り返る林の究極の目標は、「自然や弱者に配慮するのが、ごく当たり前になる社会」の実現だ。
10代の頃から社会派の映画やドキュメンタリーなどに興味津々で。そして、認知症のおばあちゃんの付き添いだとか、いろんなボランティアをしてきたのですが、私にはごく自然に、社会問題に目が向く素地があったようです。
ソーシャルコンシェルジュを立ち上げたのは、ひとことで言えば「世の中にそういうものがなかった」から。ファッションブランドの広報をしている頃、例えば、新作発表会のプレス向けのお土産に授産製品を入れて、さりげなくPRするような活動をしていたんですよ。周りの人たちも理解や興味を示してくれたのですが、ファッション業界と障がい者施設、またそれを支援するNPOなどを、きちんとつなげる存在がなかった。だったら、自分でやろうと。
はい。ただ現在は、活動が広がって、パーマカルチャーに関するワークショップの企画・運営や、社会貢献活動に関する情報発信などがメインになっています。パーマカルチャー関連では、これまで土壌の専門家に技術指導をしていただいて、八ヶ岳の麓で持続可能な農業をベースにした生活の体験講座を、月1回のペースで行ってきました。今年からは、そうした生活を実践している人のところに出かけるスタディツアーを行いたいと考えています。
必要に迫られたという側面が大きいですね。「SHOKAY」というのは、チベット系民族がヤクという動物から手作業ですき取った毛を原料にしたニットブランドですが、この優れた製品群を日本で市場展開するためには、会社が必要だったのです。これは現在、チベット系民族支援にとどまらず、東日本大震災の被災地で、SHOKAYのものづくりをサポートしてもらうプロジェクトにもつながっています。被災地に住む女性を対象に、編み物のワークショップを開催する「SHOKAY for TOHOKU」というもの。被災地の女性たちに集まってもらい、一緒に編み物をすることで心を癒していただく。同時に、収入源の限られるチベット系民族の支援にもなるという取り組みです。
両方ともエシカルな、つまり人の営みや環境に配慮できる社会の実現を目指すというミッションは同じ。“車の両輪”だと考えています。ダブルツリーでは、エシカルなファッション製品などを扱うセレクトショップ「DGBH(Do Good,Be Happy!)」を運営していますが、ここで得た収益をNPOの活動資金として循環させていくという考え方です。
そうした仕組みを構築したいという意識は、当初からありました。私たちのように「楽しく社会貢献を」というNPOは、助成金や寄付に頼るのは難しいんですね。一方で、資金を集めることに労力がかかりすぎて、活動が立ち行かなくなったNPOも見てきました。両輪をうまく機能させることで、自分たちの活動が持続できるという新たなモデルを、社会に提案できればと思っています。
当面、実現させたいと思っている夢は、八ヶ岳で培ったノウハウを生かして、私の故郷である北海道に「エコビレッジ」をつくること。ただ、世の中に新しい価値を提供できるもの、よりよい未来につながるもの、というのがコンセプトなので、何でもありなんですよ(笑)。そうした視点に立つプロジェクトを一つでも多く花開かせていきたいですね。
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