一般社団法人からふる/埼玉県川口市
1970年、山形県生まれ。短大卒業後、福祉施設で保育士として4年間勤務。98年に結婚し、2000年、長女を出産。脳性まひと診断された娘とのかかわりで、再び福祉の道へ。2007年、任意団体「からふる」を設立。「アトリエからふる」「キッチンからふる」「からふるセミナー」などの開催を通じて、障がいのある子供と、その家族の支援活動に力を注ぐ。現在、メンバーは川口市内の23家族。2012年、一般社団法人に移行。http://color-fuls.com/
障がいのある子供たちの通園施設で保育士をしていた吉澤泉が、結婚後に長女を出産したのは2000年のこと。1歳半の健診で、娘が脳性まひと診断され、かつて勤めていた施設に通わせることになったのは、思いもかけない巡り合わせだった。同じ境遇にある母親たちのサークルに参加するうち、やがてそれが子供たちの「お絵かきの会」となり、2007年には任意団体「からふる」が誕生。障がいを持つ子供たちの未来を支援する活動は、地道ながら、導かれるように成長してきた。
子供たちの才能に着目し、生涯にわたって糧を得ることのできる“職”へと高め、「自活できる幸せ」を見いだせるようサポートする。それが、掲げる理念だ。当該者だけでなく、サポーターや障がい者の環境に関心を持つ人たちとともに、様々な交流の場を提案・運営している。みんなでお絵かきを楽しみながら、際立った作品を商業ベースに乗せていく「アトリエからふる」、料理教室「キッチンからふる」、家族を支援する「ステップアップルーム」などが主な活動内容だ。今年、法人化を果たし、障がい者のいる住宅に特化した「からふるリフォーム工房」を開始。新たなステージに入った。
それを聞かれると困るんですけど(笑)、何となく場当たり的にそうなったというのが、正直なところなんですよ。当初、障がい児のママさんたちとお茶会的に集まっていたのですが、話をしていても、子供の障がいの差が、そのまま親の差になるというか……「お宅は外出できるからいいわよね」なんて話に終始してしまう。何か違うなぁと思い始めた頃、異業種交流会を運営する知人から、「内輪ばかりに目を向けず、外から人を呼んで話をしてもらったら」とアドバイスを受けたのです。それで、定期的にセミナーを実施したんですね。起業家など自分の力で生きている人たちの話を聞いていると、刺激を受けるというか、視野が広がってきて、「子供たちを引き込んで何かやってみようか」という話になったのです。それが、「アトリエからふる」です。
月に1回、市の施設を借りてアート教室を開きます。純粋な感性でかかれた絵って、すごく独創的なんですよ。それらの中から、これはと思う作品を選び、グラフィックデザイナーの力を借りて、絵をプリントしたTシャツを販売したり、データベース化して、企業の広告や商品パッケージに採用してもらえるよう提案したり。採用となれば、もちろん「作者」にも報酬が支払われます。このアトリエはとても自由な空間で、障がいを持たないきょうだいも一緒にお絵かきを楽しんでいますし、みんなしてフロアを走り回っています。障がい児のいる家族って、そろって出かけられる場所が少ないので、親御さんにも好評です。 実は、こういった任意での交流活動と、団体として収益を挙げるという事業活動との切り分けには、悩みました。でも、まずはNPO的なマインドで場をつくり、そこから商品になるものをすくい上げていけばいいと考えたら、すっきりした。気づいたのはつい最近ですけど(笑)。
企業とやりとりするうえでも、法人格は持っていたほうがいいですから。「ちゃんと稼ぐ」ということを、私たち自身が意識するためにも有効だったと思っています。「この子が大人になって、自活していけるだろうか」。障がいのある子供を持つ親なら、誰もが考えることです。親が死んでも、どこかに自分の居場所を見つけて、にこにこ笑っていられる人生の道筋をつけてあげたい。その実現のために、事業収益にはこだわるべきだと考えています。
子供たちに「仕事」を意識させるためには、継続的な発注が必要です。ある事業パートナーが、16歳の女の子による手書き名刺の販売をしてくれているのですが、書の独自性が評判を呼んで、クチコミでの注文が増えています。これだと繰り返し仕事ができて、お給料も得られる。ただ残念ながら、こうしたケースはまだ希少で、どうしたら事例を増やせるのか、試行錯誤を重ねているところです。 今年は、収益率の高いリフォーム事業を始めました。障がい者のいる住まいを対象にしたリフォームって実態的に少ないんですよ。例えば水回りだけでいっても、頻繁にトイレを詰まらせるとか、水道を流しっぱなしにするとか、困りごとはあるのに、個別に解決してくれる適切な業者がいない。一方、子供がパニックになっているところを他人に見せたくないという家族の心理的な問題もあります。私たちのメンバーである施工スタッフなら、環境改善のノウハウもあるし、障がいに対する理解もある。必ず、お役に立てるはずだと。いつも手探りですが、一歩一歩、確実に進んでいきたいですね。
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