THE INNOVATION 志こそが人を熱くする

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企業経営の思考と手法で、「優良NPO」を支援する

佐藤大吾さんの写真

日本に寄付文化をつくりだす。それがNPO育成のインフラになる

NPO法人チャリティ・プラットフォーム/東京都港区

代表理事
佐藤大吾さん(37歳)

1973年、大阪府生まれ。大阪大学法学部中退後、インターンシップの企画・運営会社「潟Cンターパーソナル」を設立。2001年、合併により売却するも、2003年に「潟qューマンデザインオーソリティ」で再独立。この間、98年には、議員事務所や官公庁のインターンシッププログラムを運営する「NPO 法人ドットジェイピー」を設立、営利企業になじまない分野でのNPO活動を開始する。その経験をもとに2007年、「チャリティ・プラットフォーム」を設立。NPOと寄付者、行政の懸け橋となるファンドレイザーとして、「日本における寄付文化の創造と定着」を目指す。

大学卒業式の1週間前に内定先企業に不祥事が発生。その翌日、自らの留年決定が発覚。そういうわけで(?)、中退して会社を設立。企業相手のインターンシップ事業は成功を収めるも、その後手がけた議員事務所へのインターンシップは、全くの不採算。しかし、周囲からは「意義のある事業。辞めないでほしい」との声が。佐藤が出した結論は、この事業を株式会社ではなく、NPO法人で継続することだった。

だが、日本のNPO活動について研究するにつれ、運営のための資金調達力が欧米に比して圧倒的に劣っていることに気付かされた。何しろ欧米には、キリスト教によって培われたチャリティー文化とボランティア精神が根付いている。唖然とするような大金をポンと寄付する大富豪も存在する。しかし「文化が違う」と言ってしまえばそれまで。佐藤はこの言葉を封印して、かの地のインフラやシステムを学びつつ、日本に寄付文化を創出しようと決意した。

まずは企業に寄付を依頼。結果は100社回って100戦100敗。101戦目に、彼は依頼の口上を変えた。「寄付してください」から「寄付を集めてくれませんか」へ――その効果は劇的だった。

「寄付を集める」のはOKと。

そうです。50社中42社が応じてくれました。そもそも寄付というのは、企業内で説得力のある位置付けが難しい出費。連敗中、よく言われました。「10万円の寄付より100万円の外注費のほうが出しやすい」と。でも、店舗に募金箱を置くといった活動なら、利益を損ねることもなく、企業としての評価もアップしますよね。

欧米では、寄付を集める人や団体を「ファンドレイザー」と呼び、専門職もいれば、企業や一般市民も普通にファンドレイザーになる。例えば、舞台俳優が終演直後に寄付を呼びかけると、感激さめやらぬ観客が行列をなして募金する。募金箱も、街中いたるところにある。それは日本でも実現可能な文化であり、システムですよね。成熟度が20年ほど違うだけで。

ただ、寄付する側も難しいですね。寄付先の選び方とか。

以前、ある会社の社長に「社会貢献したいが、どこに寄付すべきかがわからない。NPOには『会社四季報』も『帝国データバンク』もないから」と言われたことがあります。実は、欧米にはNPOの格付け団体があるんですよ。僕らもファンドレイザーとして、それをやろうと。日本には今、NPO、財団法人、社団法人などを合わせて約6万5000の団体があります。その中からアクティブな活動をしている6000団体をまず選出。さらに各都道府県を回って、その団体の代表者に会って話を聞き、絞り込みました。その基準で最も重要なのはディスクロージャー、財務情報をwebで公開していること。こうして厳選した団体を、うちのHPで公開しています。

そこなら寄付しても大丈夫?

決めるのはあくまで寄付者ですが。これは言うなればNPOの優良銘柄のリストなんです。それを公表して市場から投資ならぬ寄付を呼び込み、資金循環を起こしたい。とてもいい活動をしているのに、自前のささやかな収益と補助金のほかは気合だけ、というのではNPOは成長できません。だから我々が、資金調達のツール提供や活用方法のアドバイスなどで支援する。ベンチャー企業と、証券会社やVCのような関係です。

でも、それではNPOと営利企業の境界が曖昧になりませんか。

NPOの運営と株式会社の経営は、9割方同じものですよ。僕自身、今も使っている脳ミソは株式会社を経営していた頃と同じ。NPOだって、自分たちを売り込まないと。例えば「100円で途上国の子供たちにワクチン1本」って、わかりやすいアピールですよね。それが日本のNPOは生真面目すぎて、「いや、為替レートによるから」なんてためらってしまう。算出基準さえきちんと示せば、あとは概算でイメージを伝えることが重要。欧米の団体なんて、活動報告でも寄付者に対して「その寄付がどうインパクトを与えるのか」だったり、“右肩上がり感”を出す表現にこだわります(笑)。もちろんそこには、「自分たちの活動で、行政が負担する社会的コストがこれだけ抑えられた」といった合理的説得力もあるわけです。

日本にそういう文化を根付かせるには、ほかに何が必要ですか。

まず、寄付の決済方法を増やすこと。日本ではクレジットカードや携帯電話は原則使えませんから。そして寄付者に対する優遇措置。税制面でも社会的評価の面でもです。いいことをしているのに、来るのは税務署とやっかみだけ、というのはね(笑)。あと、読者の皆さんには、月々の支出予算に「寄付」という項目を加えることをお勧めします。少額でいいので寄付予算というものをつくってみる。すると街を歩いていても、どんなNPOがあるかなと探す気持ちが芽生えて、楽しくなりますよ(笑)。

撮影/刑部友康 構成/内田丘子

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