CASE59CRE(企業不動産)マネージャー

企業価値向上の視点から、不動産の効率的な活用をアドバイス

近年、企業においても「不動産活用」が重要な課題になってきた。2006年3月期より固定資産に対する減損会計が強制適用された影響を受けて、企業が保有するビルや店舗、工場、社宅・寮などのあり方に関心が高まっている。必要な不動産を経営資源として位置づけ、「買うか、借りるか」「売るか、貸すか」など効率的な活用を企業価値向上の視点からアドバイスするのが飯田さんだ。

「CRE(Corporate Real Estate:企業不動産)マネジメント は、会計基準や監査制度の改変など企業を取り巻く制度の急速な変化に伴い、将来的にどんな企業も無視することができない問題になると思います。法人の不動産に関することなら何でも相談できるプロとして頼られる存在になりたいですね」



2006年6月に独立した飯田さんは、企業に特化した不動産会社「I&Aプロパティー」を設立した。現在は首都圏を中心にオフィス、工場・倉庫、独身寮・社宅といった物件の仲介業務をはじめ、建物・倉庫リファイン(用途変更)などの資産活用、アジアREIT(※1)を中心とした海外不動産投資斡旋といったコンサルティング業務を手がけている。

独立前は中堅デベロッパーに勤め、不動産ファンドへの投資・取得・売却業務、プロパティマネジメント(資産管理業務)などを担当してきた。会社員時代は一度も契約が取れなかったクライアントに独立後も営業を続け、初めて契約が取れた時、会社視点ではなく顧客視点で仕事ができるプロワーカーの利点を感じたという。

「会社では自社の利益やメリットが少ない物件は扱わないなど制限される中で営業していましたが、今はどんな物件でも扱える自由さがあります。ただし、不動産業界では同じ物件情報を何社もの競合が扱っていますから、必ず付加価値をつけて提供することを営業上工夫しています。いまだに管理会社から来る物件情報はFAXなので、図面をスキャンし顧客ごとに必要な情報をまとめた概要書とともにPDF化してメールで送信しています」

例えば独身寮や社宅物件を探しているクライアントには、沿線情報が重要なため路線ごとに物件情報を整理して提供する。時には、担当者が社内稟議を通しやすくするための提案書をまとめて提供することもあるという。

「50室の独身寮を決定する際に、物件を一度も見ずに『飯田さんが見てくれたのなら大丈夫』と契約いただいたこともありました。お客さまから信頼を得たことを実感できる声が、何よりも仕事のモチベーションにつながりますね」

独立して3年目、取引先を初年度の5倍にまで増やした。5年先、10年先には5名程度で150億円規模の不動産取引が行える組織をつくることを目標に置き、積極的に活動中だ。

 
※1 香港、シンガポール、中国を中心としたアジア諸国の市場で取引されているREIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)



PROFILE

飯田 武徳さん(30歳)

1978年、千葉県生まれ。創価大学を卒業後、アメリカへ語学留学。その後香港に渡り、北京語の習得と並行して証券会社に勤務し中堅企業の海外資産運用コンサルティングを経験。2001年に帰国し、税理士事務所でアルバイトをしながら米国公認会計士の資格を取得。中堅不動産デベロッパーでの勤務を経て、2006年 6月に独立する。

取材・文●岩見浩二 撮影●松本朋之
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会

[ 2008.05.23 ]

営業ツールの写真

オフィス、寮・社宅、工場、倉庫、物流施設など扱う物件は様々。物件撮影のためにデジタルカメラは必需品

POLICY

「顧客満足につながっているか」を重視するように。会社員時代よりも担当者とのかかわり方が深くなっている。

HOLIDAY

会社員時代よりもかなり減った。企業不動産を扱うため季節で繁忙期があり、4・6・8月は比較的休みを取れる。

MONEY

独立2年目までは退職時年収とほぼ同程度。取引先が急増した今期(3年目)は会社員時代の年収を上回る見込み。

SATISFACTION

担当者の喜ぶ声を聞けることが自分の喜びになっている。仕事のリピートは、評価の表れとして素直にうれしく思う。