さいの・みわこ/愛知県出身。グラフィックデザインの専門学校を卒業後、エプロンなどの企画デザイン会社に就職。その後、福岡県で服飾の勉強をしながら金融会社で営業職を経験し、上京。チャペルでアテンドなどの仕事を経て起業した。
「チャペルに舞い降りた天使」をコンセプトに製作した真っ白な車いす。ここまで白色に徹した車いすは他社になく、目にした人は思わず「キレイ」とため息をもらすという
チャペルでカップルのアテンドをしていた頃、車いすユーザーによく目がいったのは、時々、車いすを利用している軽度の精神障害のある弟を持つことが影響しているかもしれません。デザインの勉強をしたり、自分の結婚式でウェディングドレスを自作したりした経験などから、当初はウェディングドレスのオーダーショップを開業しようと考えていたんです。
結婚式は土・日曜日に開催されることが多いですが、いつものようにチャペル内で業務をこなしていると、参列者の中に車いすをご利用になるご高齢や障害のある方を見かけることが多かったんです。しかも、何か違和感があった。せっかくキレイにドレスアップされているのに、車いすが普段と変わらないものでは、現実に引き戻されてしまうじゃないかと。とっても残念な気持ちになったんですね。そこで、国内外の車いすメーカーを調べてみたのですが、私が思い描くようなフェミニンな車いすは見つからなくって……。「ないなら、私がつくってみよう!」。そう思ったのが、始まりでした。
車いすはお客さまのニーズに合わせてカスタマイズも可能。花嫁だけでなく、高齢や障害のある参列者のドレスアップのメニューのひとつとして導入を式場に勧めている
ウェディングドレスのオーダーショップを開業するつもりで、その準備として「女性起業塾」にも通っていたんですが、この車いすのことを話したら、共感してくれる人がとても多かったんですね。弟のこともありましたし、障害のある人や病気を患う人など、どんな事情があったとしても、結婚式を夢見る気持ちはみんな一緒じゃないですか。アテンドの経験を生かすこともできますし、バリアフリー・ウェディングをサポートする事業に使命感を感じるようになってきたんです。
まずは、デザイン画を描いて、車いすをオリジナルでつくってくれる工房に、熱意を伝えてサンプル製作を依頼。工房の社長は「チャペルに舞い降りた天使のように」と、ひじ掛けの部分に羽のようなデザインを施す提案までしてくれました。そして、サンプルとして完成した真っ白な車いすを持って臨んだ「女性起業塾」のプレゼンで、念願のMVPを獲得。そこで自信をつけて起業、法人化しました。
真っ白な車いすは結婚式場などに販売・レンタルし、一方、結婚式の当日のバリアフリーサービスの手配のサポートやオーダードレスの製作も請け負うつもりで、結婚式場やホテルなどに営業活動を行っています。「バリアフリー・ウェディング」という概念を知ってもらうところから行っているわけですから、思うように事が運ばないのは当然です。まだ実際に式場には導入されていないのですが、私には金融会社の営業職として鍛えた経験がありますので、へこたれませんよ。
まだまだこの事業の認知を広めていく時期だと思っていますが、記念日の思い出を写真で残すフォトウェディングなども増えていますので、式場に限らず、写真館などにも真っ白な車いすの導入を提案していきたいと思っています。花嫁のみならず参列者の方も、ドレスアップするように、フォーマルな車いすを提供するサービスがあったら素敵じゃないですか! 真っ白な車いすのブランド名は「Felicita(フェリチタ)」。イタリア語で「幸せ」を意味します。誰もが当たり前に、大切な日をより素敵に迎えられるよう、たくさんの女性を幸せにしていきたいと思っています。
もともと「ウェディングドレスのオーダーショップを開きたい」という夢がありました。でも、チャペルでアテンドをしていた時、車いすユーザーのご高齢のお客さまが多いことに気づき、ドレスに合った素敵なウェディング仕様の車いすを提供できたら、と考えるように。女性起業塾でそのビジネスモデルを発表したところ、非常に共感を得られたこともあり、使命感を得てこの事業で起業することを決意しました。
230万円です。車いすのサンプル製作費で20万円、契約書作成で弁護士に依頼した費用が12万円、WebやDMなどの制作費で20万円。残りは運転資金です。
230万円全額、これまでの貯蓄です。
元夫がグラフィックデザインの事務所を立ち上げたりもしていたので、家族には独立に対して免疫があったんでしょうね。なので、家族からは特に反対されることもありませんでした。友人たちも「すごい! きっとうまくいくよ」と応援してくれましたね。
今も不安でいっぱいですよ(笑)。まだ当該事業の認知を広げている時期だと考えているので、キャッシュフローが心配ですが、とにかく継続あるのみと思っています。
起業支援総合ポータルサイト「ドリームゲート」と、やはり「女性起業塾」ですね。塾では講座の内容もさることながら、同じ志を持った女性の仲間ができたことが心強かったです。今でも月に1度の頻度で報告会と称して集まってますね。
知り合いのコンサルタントふたりです。私が考えているバラバラのピースをまとめてもらっているというか、事業の仕組みなどについてよく相談しますね。
やはり、資金繰りです。社会起業家として講演してほしいと声をかけられることが増えてきたので、そういったセミナー活動で収入を得ている状況です。講演は私自身の事業のプロモーションや、ソーシャルビジネスという概念の啓蒙もかねて、できる限りお引き受けするようにしています。
起業はある意味、仕事とプライベートとを分けない生き方だと思うのですが、それが予想外に楽というか、自分に合っていると感じたことです。好きなことを仕事にしているからかもしれません。
やりたいこと、目指していることを、とにかく口に出して人に伝えることが、まず第一の行動。それが大事です。また、いきなり大きなことをせず、小さく始めて、段階的に大きくしていけばリスクも最小限で済みます。だから何事もテスト的に行っていくことをお勧めしたいです。起業準備はいくら転んでも大丈夫なので、何度も転びながらしっかり準備してくださいね。
独立した先輩の体験エピソード&独立支援情報