先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


永友 一朗さんの写真

中立性を重視したホームページ
コンサルタント

ホームページコンサルタント永友事務所/神奈川県藤沢市
永友 一朗さん(37歳)

ながとも・いちろう/神奈川県出身。大学卒業後、ブライダル会社で海外ウェディングのサポートを行った後、中小企業を支援する財団に転職し、ホームページ制作やWeb活用などのコンサルティングを8年間経験。根っからのサポート好き。

独立準備のがんばりどころ

資格を取得したら独立するつもりで、勉強に励むものの……

セミナー全景

神奈川県商工会青年部に所属するメンバーを生徒に、Web活用に関する講義。二代目、三代目経営者が多く、IT活用には皆、真剣な様子で取り組んでいる

まず、家族の時間をもっとつくりたいということが先にあったのですが、独立のもうひとつの理由に、会社勤務ではできないことを実現したいという思いがありました。勤務していた中小企業を支援する財団では、中小企業経営者向けのセミナー講師やアドバイスなどを行いながらも、神奈川県内の中小企業を紹介するWebサイトの運営者という立場から抜けられないもどかしさがあったんです。経営とITツールは非常に密接なもので、テクニック的な表面上の改善だけで済むものではないと常々思っていました。一社ずつもっと時間をかけて向き合いたい、そんな気持ちが心の中に渦巻いていたんです。

そこで、何か区切りを付けて独立しようと、中小企業診断士の資格取得のための勉強をスタート。資格が取れたら独立すると家族にも宣言しました。ところが、一発で受かると算段していた試験に失敗しちゃって(苦笑)。でももう、家族は私の独立に賛同してくれていましたし、資格のあるなしにかかわらず、中小企業診断士としての勉強は非常に役立ちましたから。試験勉強で培った知識を生かして独立しようと決意しました。

中立性を強みに、競合調査やこれまでの経験から料金体系を決定

永友さん寄り

終始、穏やかでやさしい口調の永友さんだが、重要部分は繰り返し強い口調で解説。「ネットにも、おもてなし(接客)がある」の言葉に、生徒一同、ペンを走らせる

自分がホームページコンサルタントとして活動を始めるうえで決めたのは、お客さまから直接ホームページの制作を請け負わないということでした。この業界のコンサルタントは、Web制作を行う人か、Webの専門知識にはそう強くない経営コンサルタントかのどちらかが多いんです。しかも純粋にコンサルティングだけで報酬を得るのではなく、ホームページの制作までを請け負うことで報酬を得るという方法を取るパターンがほとんど。経営とWebは直結していると私は常々思っていましたが、Web制作者がアドバイスを行うと、制作の都合に寄ったアドバイスをどうしてもしがちです。だったら、制作は一切請け負わないという中立的な立場に立って、純粋に経営に直結したITツールに関する「相談・助言」だけで勝負したいと。それが他社との差別化になると考えました。

その後、競合となりそうなコンサルタントのサイトなどをチェックしたり、お世話になっていた商工団体の経営指導員の方にも人気コンサルタントについてヒアリングし、料金体系などを調査。やはり著名なコンサルタントは相談料もそれ相応。しかし、私が勤務先で出会う経営者の方のほとんどが「ホームページには1円も出したくない」と考える人が大半です。その間を埋める料金体系を考えるのにずいぶん苦労しましたが、対面コンサルティングと通信コンサルティングの2パターンを用意し、通信コンサルでは著名コンサルタントの5分の1の金額に。この金額は勤務時代のコンサルティング料と同じ値段でした。正直、キツいと思ったのですが、中小企業の経営者がWeb改善にかけられる予算はそうないことは重々知っていましたから。薄利でも長くお付き合いできる関係を築いていこうと。

中小企業経営者を支援する自治体などの機関に登録してアピール

独立準備でもうひとつ行った大事なことが、中小企業支援機関などのアドバイザー登録です。クライアントとなる中小企業の経営者にアピールするには、中小企業を応援する自治体などの支援機関を活用するのが一番だと。こういった機関は、登録する様々な分野のコンサルタントや税理士などの士業など民間の専門家を、希望する中小企業に派遣する制度を持っていました。そういった機関に6つほど登録。実際、それらの機関からセミナー講師やコンサルティングの依頼をいただくのが、現在、私の営業のひとつのスタイルとなっています。

独立してまだ日が浅いですが、「経営を良くするWeb活用」のアドバイス・ニーズはとっても強く感じていますね。不思議なものですが、大企業の経営者でも、IT業界で成功している経営者でも、自社のホームページの話になると、チンプンカンプンになってしまう方が多いんです。ホームページってバーチャルな世界ですが、接客がとっても大事。ITに強い経営者でも、じゃあ、接客に強いかといったら、そうでもない。ここがキモなのではないかと思っています。経営者が発信したいメッセージをホームページというフィルターで劣化させることなく、届けたい人にしっかり届ける。その通訳をできるのが自分の役目だと思っていますので、一生現場主義! そうやって、一コンサルタントとしての活動を続けながら、家庭との両立を大事にしていきたいと考えています。

取材・文 / 石田 恵海 撮影 / 岡本 寛

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    「家族のための時間をつくる」というのが先にありました。子持ちの共働き夫婦の私たちにとって「保育園の送迎」はけっこう大きな課題でしたし、夫婦お互いのワークライフバランスが不安定だと感じていたんです。なので、家族中心のワークスタイルが実現しやすい独立の道を選んで、家族との時間を確保したいというのが先決で、「フリーのコンサルタントになる」という職種は後から付いてきたようなところがありますね。

  • 開業資金は?

    150万円です。パソコンやPC周辺機器で30万円、専門書などの書籍類で20万円ほど使っています。残りの100万円は運転資金です。

  • 開業資金はどう集めた?

    すべて勤務時代の貯蓄です。私が独立することに妻は大賛成でしたが、無借金経営が約束でしたので。

  • 周囲の反応は?

    独立は、夫婦で決めた「家族のあり方」ですから、妻はもちろん大賛成! 両親も賛成してくれましたが、孫のことが心配そうでしたので、何度も説明を重ねました。職場の反応は「安定した道を捨てて、このご時世に何を考えているのか!?」といった感じでしたが、もちろんそれも心配していただいているからの反応。最後は「頑張れ!」と送り出してくれました。

  • 不安だったことは?

    クライアントが見つかるかどうか。これですね。本当に私の「相談・助言」というサービスに対価を払っていただけるのか不安は尽きませんでしたよ。ただ、中立的な立場でWeb活用のコンサルティングをする人はほとんど見当たらなかったので、自分がやらなければ誰もやらないだろう、という妙な使命感みたいなものが強かったですね。

  • 役立った情報源は?

    起業家などが集まるSNS「NICe」で情報収集していました。そのSNSで知った中小企業支援機関が行っていた「アドバイザー募集」という告知から「HP運営改善の専門家」として登録。その相談業務からクライアントと出会うというスタイルを見つけることができ、数社の機関に登録しました。また、先に独立した起業家の先輩たちの日記も非常に支えになりました。最近は忙しくてなかなか「NICe」で自分から情報発信できていませんが、日記をチェックしてメッセージを書き込むことは時々しています。

  • 相談相手は?

    独立すること自体の相談は妻、コンサルタント業については独立前からお付き合いのあった商工団体の経営指導員の方によく相談していました。競合となるコンサルタントについての話や、商工団体に専門家として登録して、中小企業などにコンサルティングを行う「エキスパートバンク制度」の実態を率直に聞きました。その信頼する方から「永友さんなら間違いなくいいコンサルになるよ」と言っていただき、心の支えになりましたね。

  • 独立して一番困ったことは?

    やはりお金の問題ですね。無借金経営だとはいえ、運転資金が見る見る減っていきましたから。交通費や通信費はバカになりませんね。勤務時代は会社が払ってくれていましたから気にもなりませんでしたが、交通費や通信費は日々出ていく現金の経費ですからね。想像以上に大きなインパクトを持つことを実感しました。大きな声では言えたものではないですが、独立3カ月目の月商がなんと5000円だったんです。お小遣いではなく、月商ですよ! この時期が一番つらく、食事もノドを通らず、体重も減ってしまいました。軌道に乗ってきたのは独立半年後でしょうか。それまでは、クライアントに励まされたり、尊敬する先輩経営者に相談したりで、何とか切り抜けた感じでした。

  • 独立して一番良かったことは?

    何よりも家族全員の精神的なゆとりを確保できたことです。正直言って、世帯収入は減少しました。その代わり、とは言いませんが、家族4人が心の安定を得られたのは、本当に素晴らしいこと。保育園の送迎は自分の担当ですが、おかげさまで子どもとの大切な時間を有意義に過ごすことができていると感じています。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    「何でも屋」にならないことが大切だと思います。自分の強みや立ち位置をきちんと把握して、アピールしていくことが他社との差別化や優位性になります。また、哲学的な話になりますが、人生は自分の一生であると同時に「次の世代に希望をつなぐリレー」でもあると私は思っています。次代に何を残したいか。子どもたちにどんな社会を残したいか。その“想い”が経営の基盤と心の支えになると、私は信じています。ですから、「自分の興味・関心事や強み」と「世の中のハッピー」が結び付いているイメージを絶えず持つことが良い経営、良い社会、次代への希望につなげるためにも大事だと思います。

開業
2009年6月

開業資金
150万円

従業員数
1人

年間売上高
非公開

アクセス
http://web-adviser.seesaa.net/


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