先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


山崎 令二郎さんの写真

プロの生演奏をお届けする
音楽家派遣サービス

株式会社アールキューブ/東京都渋谷区
山崎 令二郎さん(25歳)

やまざき・れいじろう/東京都出身。高校卒業後、ニュージーランドにラグビー留学し、現地クラブチームに所属。2年後に帰国。ニュージーランドでスポーツ器具の販売を行う起業家と提携し、国内営業を開始。2006年、音楽家派遣ビジネスを発想して独立。

独立準備のがんばりどころ

海外留学で出会った起業家とのビジネスで好成績。それでビジネスの面白さを知る

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左は営業担当の小林晋平さん。山崎さんの高校の後輩でもある。中央の女性は企画とオペレーションを兼務している秋保有里さん。最初はフルート演奏家として面接に来たのだそう

プロ、アマ問わず、様々な楽器の演奏家、音楽の専門家をパーティ会場などに派遣する事業を行っています。そもそもの始まりは、ちょっとした成り行き。というのも何ですが、正直、きちんとしたかたちで就職したこともない自分が、ある種の勢いに任せてスタートしてしまったという感じなんです。通っていた都立高校は全員が大学に進学するような学校で、僕ももちろん大学への進学は検討しました。でも部活ではまったラグビーをもっと本気で極めてみたい。それで、ラグビーの本場、ニュージーランドのクラブチームに留学することになるんですよ。

2年ほど滞在して、日本に戻ったのが21歳の時。帰国する際に、現地で知り合ったニュージーランド人の起業家から、「東京に戻るなら、ぜひ日本国内での営業をやってほしい」と頼まれました。それが、スポーツ用品やトレーニング機器の輸入販売の仕事です。ビジネスのイロハも知らない僕でしたが、始めてみるとスポーツジムや学校などから大口の契約が取れて、「ビジネスって、こんなに面白いんだ」と実感。ところが、急にその会社が日本市場から撤退することになったのです。でも、ビジネスの楽しさ、営業して契約できた時の興奮、それに、ゼロから何かを始めることの醍醐味が忘れられなくて、「よし、自分で何かをやってやろう!」と。

音楽家の活躍の場がない。だったら演奏を聴きたい人にプロの技を届ける仕組みを

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ニーズが最も多いのは、ウエディング。クラシックなら、ピアノやバイオリンのソロ、アンサンブル、ミニオーケストラ。ジャズバンドの派遣も引き受けている(写真協力/アールキューブ)

では、「ビジネスモデルはどうするか?」と考えたのですが、「ちょっと待て、それよりも資金は?」と(笑)。ということで、まずはアルバイトをして貯蓄しながら準備を進めることに。仲間が集まって飲み会をしている時のこと。当時、弟が音大の声楽科の学生で、僕も子どもの頃にバイオリンを習っていたので、「日本で音楽家を目指そうとしても、それだけで生活できる人は少ない」という話になったのです。さらに、「だったらプロの音楽家が活躍できる新しい場を創出すればいい。いろんなパーティで生演奏を聴きたいというニーズは多いんじゃないの?」と話が盛り上がっていきました。そこで「そうだ、プロの音楽家を派遣する事業だ!」と。翌日には法人登記の準備を始めていました。

きっかけは、そんなひらめきと、かなり性急な勢いではありましたが、登録してくれる音楽家はすぐに集まるだろうと予測できていたんです。弟の音大の同級生や先輩・後輩、それに僕が卒業した高校はブラスバンドが全国大会にも出場するくらいのレベルでしたので。みんなにちょっと声をかければ、仲間が仲間を呼んでくれるのではないかと。実際、「そういうことなら、ぜひ登録したい」という人が続々と現れました。そして、すぐに派遣先になりそうなホテルなどへの営業を開始しました。

かかってくる営業電話から、営業での適切な話し方を研究

まず電話での営業を開始しましたが、毎回がドキドキ、本当に緊張しましたね。そこで、当社に訪問してくる担当営業や、かかってくる営業電話をお手本にしてみようと。法人登記したせいか、営業電話がよくかかってくるのですが、それをむげに断らず、勉強だと思って営業トークを研究することにしたんです。たとえば、やんわりと断ったらどう切り返してくるか、あるいは話をじっくり聞いてみると、どんな展開になるのか。営業先としては当初、ホテルやライブハウスなど、パーティの開催場所となるところを主体にしていました。それがだんだん軌道に乗ってくると、ウエディングのニーズが一番多いとわかってきたんです。

現在は、音楽家だけでなく作曲や編曲家、さらにCM音楽など、スタジオでのレコーディングスタッフの派遣も行っています。この仕事は、音楽関係者に活躍の場を提供すると共に、聴く人をホッとさせたり笑顔にしたり、提供する側、受ける側、双方に喜んでいただける仕事であると自負しています。今後は、パーティや結婚式の披露宴という特別な場だけでなく、一般企業の福利厚生やCSR(社会的責任)向上の一助として、様々な提案をしていくための企画を練り上げているところです。

取材・文 / 田村 康子 撮影 / 小林 佐孝

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    「よし、やってやるぞ!」という勢いです(笑)。起業やビジネスについて、ほとんど知らないゆえの勢いですが、起業前に携わった仕事で、「人に喜んでもらって、それによって利益が挙がる。ビジネスは素晴らしい」と実感していたことも事実です。さらには、僕たち男ばかり4人兄弟の子育てと仕事を両立していた母親、それに自営業を営む祖母を見て育ったことから、「自らの意思で仕事するのは面白いこと」という考え方が子どもの頃から知らず知らずのうちに備わっていたような気がします。

  • 開業資金は?

    開業直後は100万円。約10カ月後に、490万円プラスして、合計590万円です。

  • 開業資金はどう集めた?

    最初の100万円はアルバイトをして貯めました。490万円は、港区の「創業支援貸付制度」を利用しています。区が利子の1.8%を負担してくれて、本人の負担は0.4%という超魅力的な制度。現在のオフィスは渋谷区ですが、最初は港区にある実家の一室で始めたので、今も登記上の本店は港区です。

  • 周囲の反応は?

    父は、大企業に勤める会社員なので、「ビジネスの厳しさを何も知らないお前が起業するって何ごとだ」と大反対。そこを、母や祖母が、「まーまー、やらせてみましょうよ」と。そんな祖母は、大手保険会社で全国1位にもなったことのあるセールスレディーなんです。母も、祖母も、「そんなうちの子だから、やる時はやってくれるはず」と思ってくれたのでしょうか(笑)。

  • 不安だったことは?

    不安… 、そういえば不安なことは何も考えなかったですね。何しろ勢いだけはすごかったので。不安要素を考えるヒマがなかったのでしょう(笑)。

  • 役立った情報源は?

    当初は母親ですかね、いや、別にマザコンじゃないですよ(笑)。本当に恥ずかしいんですが、FAX一枚、メールひとつの文言が、「これでいいのだろうか、何か失礼な書き方をしていないか?」と、それくらいビジネス初心者だったんです。だから、そんなことを臆面もなく聞けるのは、気軽に話ができる母親くらいでした。そのうちに、起業家が集まる異業種交流会に参加するようになって、ベンチャー企業の経営者仲間ができました。それ以来、仲間たちから聞ける話のすべてが大事な情報源となりました。たとえば、モチベーションを下げないための思考法、税金に関する専門的な話、社員を雇う際の給与額などです。

  • 相談相手は?

    まず母親、そして祖母ですね。祖母は若いころから自営でいろいろなことをやっていました。今も83歳で印鑑の店を経営しています。あと最近は、IT企業を経営している2歳上の起業家の先輩。プライベートでも仲良くしてもらっていて、たわいもない相談も真剣に聞いてくれるんです。心強い味方ですね。

  • 独立して一番困ったことは?

    最初はスタート期の勢いに乗ってやり切ることができましたが、2年目には社員を雇って事務所物件を借りたこともあり、資金繰りがピンチになる月が。何とか切り抜けましたが、「これが資金繰りに行き詰まるってことか」と。怖かったですが、いい経験になったと思います。たとえばブライダルのオンシーズンは春と秋。月ごとの収益の平均値、増減の波を常に把握できるよう、きちんとデータを取るようにしました。

  • 独立して一番良かったことは?

    大学を出て就職していたとしたら、25歳で社会人2、3年目ですよね。そうすると、今自分に接してくれているような起業家や、様々な業種、様々な立場の先輩たちとは出会えていないと思います。若いこともあって、頑張っている姿を見せていれば、いろいろな人たちが応援してくれること。それが大きな喜びですね。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    ダーウィンの進化論じゃないですが、人間は、いろいろな環境への適応力があると思います。チャレンジを開始してしまえば、困難があっても立ち向かおうという気持ちが維持できることも実感しています。実際、ビジネスをほとんど知らないところから始めて、試行錯誤しながら大きな失敗をせずに3年近く継続することができましたからね。今考えてみると、何も知らないことも悪くはなかったなと思っています。知らないことだらけだからこそ、乾いたスポンジが水を吸うように、あれもこれもたくさんの知識、ノウハウをどんどん吸収することができました。「よし、やるぞ!」という意思が固まっているなら、ぜひチャレンジしてほしいです。

設立
2006年5月

資本金
1000万円

従業員数
3人

年間売上高
非公開

アクセス
http://www.r-cb.co.jp


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