先輩たちの独立事例集

先輩たちの独立事例集


豪さんの写真

独自の食ジャンルを開拓する
恋レシピ研究家

フードクリエイティブファクトリー/東京都府中市
さん(22歳)

ごう/東京都出身。大学時代、自分らしく働きたいと、企業の内定を辞退し独立。恋人向けのレシピ「恋レシピ」や野菜でごはんを食べる「ベジごはん」など独自ジャンルを開拓。2008年1月に著書『彼女につくってもらいたい恋レシピ』も上梓している。

独立準備のがんばりどころ

突破口を開こうと、軽いフットワークで営業活動開始!

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若年層向けのレシピ本がないことに着眼。若者が料理をせざるを得ないのは恋愛のシーンだと考え、『彼女につくってもらいたい恋レシピ』(早川書房)を上梓

大学生時代に料理研究家になると決意してからまずしたことは、フードコーディネーター養成学校に通うことでした。でも、養成学校を卒業しても、仕事があるわけじゃないんですよね。講師に仕事をするにはどうしたらいいかと聞いたら「出版社などに自分の作品を持ち込むこと」と教えられ、何社か出版社に持ち込んでみました。が、ほとんど門前払い。今思えば、そりゃそうだと思います。誰に、どうアピールすればいいのかもわからないまま、出版社の受付係に作品を渡したりして、連絡をただ待つだけだったので(笑)。

ある時、実績や経験がないと、いくら出版社巡りをしてもダメなんじゃないかと思ったんです。そこで、あわよくばメニュー開発までできたらラッキーと思いつつ、「メニュー用の写真を撮らせてほしい」と地元の飲食店20軒近くを回ったのですが……ほぼ全滅。一軒、仲良くなったお店でどうにかメニューを撮らせてもらったのですが、ただ撮っただけ。もちろんそこからの発展は何もなし。周囲にフードコーディネートの仕事をしている知り合いもいなかったですし、そもそも最初に相談した学校の講師は、講師が本業。アドバイスされた出版社巡りが正しかったのかどうかも怪しいもの。そこで、作戦変更! 異業種交流会で自分を売り込むことにしたんです。

クライアントと資金提供者両方のニーズをかなえる企画を提案

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「地味な料理をスタイリッシュに変える」と評判のオリジナルレシピ。キッチンスタジオがないため、地元のカフェ「SUNNY TABLE」を活用させてもらうことも

マスコミ関係者などが多い異業種交流会への参加を重ねる中で、秋葉原系アイドルのマネジャー兼カメラマンをしている人と出会ったことが、ひとつのきっかけとなりました。アイデアを練って、アイドルがコスプレをして料理をするDVDを製作しようと、「萌えと料理の融合」を提案(笑)。「面白い!」となったのですが、先立つ資金がありません。そこで、さらに知恵を絞りました。アイドルの撮影会などに来場する素人カメラマンの男性陣はお金持ちが多いことに着目。アイドルの撮影ができることを条件に、DVD撮影に必要なスタジオ代などの費用を負担してもらおうということに。最終的にこのDVD製作は実現したものの、発売には至らずお蔵入り。でも、素人カメラマンの皆さんやアイドルマネジャー兼カメラマンの方のように、自分にない力を持っている人とタッグを組むこの作戦が後に実を結ぶことになるんですよ。

それがフリーペーパーでの仕事です。大手商業雑誌でフードコーディネートの仕事が難しいなら、フリーペーパーでいこうと。ソーシャルネットワーキング・サービス(SNS)で編集者などを探し、メールで提案営業を始めました。その中で、反応があったひとつが中国人留学生向けのフリーペーパー。そこで「誌上で日中料理交流会」ができないかという新企画を提案。ここでも「面白い!」となったのですが、資金がないので実現が難しいと。ならばと、先に言ったアイドルに出てもらい、プロのマネジャー兼カメラマンが自分のスタジオで撮影することで、費用を浮かせますと。おまけに、フリーペーパーの写真のクオリティも上がりますよと提案。その企画が実現しました。その後も「ただ仕事をください」ではなく、相手のビジネスの特性に合わせ、資金や場所などを提供してくれる人のニーズをかなえる企画を提案しながら、少しずつ仕事を増やしていきました。

ビジネスコンテストに出場し、仕事の幅を拡大

キッチンスタジオをつくりたいと考え、学生向けのビジネスプランコンテストにも出場しています。タレントのプロダクションならぬフードコーディネーターのプロダクションという企画で、エプロンをして大勢の前でプレゼンも行いましたよ。決勝までいきましたが、惜しくも入賞ならず……。でも、このコンテストで得たものは大きかったですね。主婦のネットワークを持つ女性起業家が審査員だったことで、そこからコラム執筆の依頼があったりと、仕事の幅が広がっていきました。

今でもトライ&エラーを繰り返しながら進んでいるので、どこからが準備でどこからが独立と言えばいいのかわかりません。経営者としてもまだまだです。でも、雇われることなく自分の力で進んでいける起業という生き方を選んで本当に良かったと思っています。料理研究家という仕事は、僕にとってまだまだ最初の第一歩。日本の食料自給率アップに貢献し、飢餓を世界からなくすことが最終的な目標です。僕ならではのジャンルをどんどん開拓して、ほかの料理研究家にはできない新しいアプローチで、食の大切さを伝えていきたいと思っています。

取材・文 / 石田 恵海 撮影 / 加納 拓也

ちょっと気になる10問10答

  • なぜ独立した?

    大学時代、実は会計士を目指して勉強していたんです。ところが、勉強、勉強……とインプットするばかりの毎日に爆発! 一度、自分が興味のある仕事は何なのか、紙に書き出すなどして、突き詰めて考えてみたんです。そしたら、日本の食料自給率アップに貢献する「食」の仕事に行き着いた。カフェの仕事はどうだろうと、会計士の勉強をやめ、飲食店でバイトを開始。ところが、一日中店にいるカフェはどうも違う。そんな時、ある有名な料理研究家を特集したテレビ番組を見て、「これだ!」と。自分オリジナルの言葉とレシピで、食の面白さや大切さを伝える料理研究家になろうと。フードコーディネーター養成学校に通った後、料理研究家として独立する決意をしたのです。実は、就職先も決まっていたのですが、決意した後、辞退してしまいました。

  • 開業資金は?

    独立時の費用は4万円くらいでしょうか。ほとんどが交通費などの活動資金です。フードコーディネーター養成学校の受講料、料理関連本、経営に関する書籍購入費を含めると60万円くらいです。

  • 開業資金はどう集めた?

    飲食店でアルバイトしていたので、その給料でまかないました。

  • 周囲の反応は?

    身内からは大バッシングでしたよ。外食系の経営コンサルティング会社に内定も決まってましたし、親戚には公務員など堅い職業の人が多いので。いまだに親からは「公務員になりなさい」と言われますよ(笑)。

  • 不安だったことは?

    なかったですね。もしも起業に失敗しても、命までは取られないですし、トライ&エラーの後に成功できればいいじゃないかと。生きてさえいれば何度も挑戦できるし、失敗も怖くなかったです。

  • 役立った情報源は?

    書籍や「mixi」や「CU」などのSNSです。書籍からは経営やマーケティングのノウハウを学び、SNSはクライアントを探す際に活用しました。

  • 相談相手は?

    異業種交流会で出会ったカメラマン兼アイドルのマネジャーですね。独立する際に必要となる税務署への開業届出の提出方法など、基礎的なノウハウも教えてもらいました。

  • 独立して一番困ったことは?

    資金調達は難しいですね。キッチンスタジオをつくりたいと考え金融機関に融資申請をしたのですが、門前払いでした。自己資金がないことや若さがネックだったんでしょう。今は知り合いのカフェのキッチンをお借りしてしのいでいますが、そろそろ自分のキッチンスタジオが欲しいなぁ。

  • 独立して一番良かったことは?

    自分がやりたいことだけに専念できること! ちなみに、ひとり経営なのでクライアントの急なオーダーにも対応しています。そのため休みはほとんど取れませんが、やりたいことだけやれているので毎日が楽しくて仕方ないです。

  • 独立を志す人へのメッセージ

    「自分はなぜそれをやりたいのか」という信念を持つことと、リスクをしっかり把握してチャレンジすること。ダメだと思ったら、すぐ撤退する潔さも必要だと思います。また、すべてすぐ実現しようとしないで、小さく始めてみることも重要じゃないでしょうか。小さなことならお金もかからないですし、アイデアでカバーできます。僕なんて学生のうちに起業したもんだから、資金なんてまるでなかった。だから、お金に代わるアイデアとフットワークでいろんなハードルを乗り越えてきました。お金がないならないなりにできることが絶対あるはず。資金がないとあきらめるのは、信念がないからだと思います。まず用意すべきは信念です。頑張ってください。

開業
2007年5月

開業資金
4万円

従業員数
1人

年間売上高
非公開

アクセス
http://www.comcome.net/


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